【第3回】ゲーム機利用動向推移 | マイナビブックス

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ソーシャルゲームはゲーム産業をどう変えた?

【第3回】ゲーム機利用動向推移

2014.11.28 | ゲームエイジ総研

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第3章 ゲーム機利用動向推移

 

この章では、アクティブゲームユーザー数をはじめとした各種データを通じて、最近半年間のハード視点による各プラットフォームの動向を振り返りたい。

2012年上半期、伸長率トップは3DS、WiiとPS3は堅調に推移

 

【図1】はゲーム専用機および汎用機(非ゲーム専用機)の、3か月ごとの月間アクティブゲームユーザー数推移をまとめたものである。左側半分がゲーム専用機、右側が汎用機となっている。各ハードの3本の棒グラフは、それぞれ左から「2月(6か月前)」「5月(3か月前)」「8月(最新)」のデータ(月間アクティブゲームユーザー数)である。

一番ゲームユーザー規模が大きいのは[パソコン]だが、これにはソリティア、マインスイーパのようなプリインストールされたカジュアルゲームのユーザーも含まれているのでご注意いただきたい。ちなみに、グラフではゲーム専用機をプラットフォームごとに分解して表示しているが、ゲーム専用機ユーザー全体(対象月内に何らかのゲーム専用機を1度以上プレイしたユーザー)の8月のアクティブユーザー数は1,752万人となっており、パソコンのユーザー数を300万人以上大きく上回っている。

ゲーム専用機で最も勢いを感じるのは[ニンテンドー3DS(以下3DS)]である。実にこの半年間でアクティブユーザー数を100万人近く増やしている。まだ絶対数では先代機種の[ニンテンドーDS(以下DS)]を下回っているが、3DSがDSを上回る日もそう遠い将来ではないだろう。その[DS]はこの半年間でユーザー数が漸減している傾向が見られる。現状アクティブユーザー数が最も多い同じ任天堂の[Wii]は、次世代機のWiiUの発売を年末に控え新作リリースこそほとんどなくなったものの、この期間に発売されたのが『マリオパーティ9』や『ドラゴンクエストⅩ 目覚めし五つの種族オンライン』といずれもキラータイトルだったことが奏功し、まだまだ高いレベルでユーザー規模を維持している。WiiUの発売がこの状況にどのような影響をもたらすのか注目される。

一方のPlayStationフォーマットでは、[PlayStation 3(以下PS3)]が比較的堅調に推移している。この半年の間には、80万本を超えるヒットを記録した『ワンピース海賊無双』を筆頭に、コンスタントにヒットを記録するタイトルが登場し、PS3はプラットフォームとして成熟期を迎えているといえる。逆に大きな課題を抱えているのが[PS Vita(以下Vita)]。この半年間[PSP]が緩やかにユーザー規模を落としていく中、[Vita]の販売台数およびアクティブユーザー数が伸び悩んでいる。ようやく『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』や『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- f』など、ユーザー待望のキラータイトルも順次発売され始めているだけに、ゲームユーザーの目を再び[Vita]に向けさせるためには、この流れの中で何か大きな施策が望まれるところである。

フィーチャーフォンのゲームユーザーが急速にスマートフォンへ移行

 

次に汎用機(非ゲーム専用機)だが、こちらは冒頭に触れた[パソコン]のゲームユーザーが相変わらず最大規模を保っている。しかし、この半年はユーザー規模の減少が非常に目立っている。それに呼応するようにアクティブゲームユーザー数を伸ばしているのがスマートフォン、特にその中でも[Androidスマートフォン(以下Android)]である。半年前(2月)の時点では、まだ[iPhone(iPod touchを含む)]を下回っていたものの、8月現在では[iPhone]とほぼ同レベル(厳密に言えばiPhoneよりも約30万人多い)にまでユーザー規模を拡大している。[Android]と[iPhone]の合計では既に900万人を超えており、1,000万人を突破する日もそう遠くなさそうである。[フィーチャーフォン]も[パソコン]と同じようにゲームユーザーが急激に落ち込んでいる。このように、今やソーシャルゲームをはじめとする汎用機ゲームマーケットにおいても名実ともにスマートフォンが主役の座を獲得したといえ、パソコンあるいはフィーチャーフォンからスマートフォンへのユーザーシフトが鮮明になってきている。

ユーザー数ではスマートフォンが勝るが、市場規模はゲーム専用機の方が大きい

 


 

【図2】は、これら各ハードの「アクティブユーザー増減率」「月間推定売上高」「アクティブユーザー規模」を同一マップ上にプロットし、ハードごとの勢いをまとめたものである。「アクティブユーザー増減率」は現在(8月)と3か月前(5月)を比較したものにしている。

これを見ると、すべてのハードが大きく3つのグループに分けられる状況に気づく。
◇グループA・・・急成長の時期は過ぎたものの、ハードとしては活況を呈しており売上規模は極めて大きい
◇グループB・・・成長率は100%を超えているが、売上規模はまだそれほど大きくないもの
◇グループC・・・ユーザー規模・売上規模は大きいが、ハードとしては成熟期もしくは衰退期を迎えたもの

このように、[Android][iPhone]はゲームユーザー数では既に大きな規模にまで成長を遂げているが、売上規模の面では、まだまだゲーム専用機には遠く及んでいません。課金売上がメインの汎用機では、ゲーム専用機に比べ売上単価(ARPU:無料ユーザーも含むユーザーひとりあたりの売上高)がどうしても低くなるため、課金率の向上とARPPU(有料ユーザーひとりあたりの売上高)の強化が売上アップに直結するという構造を持っているのが特徴である。

【図1】【図2】を通してもう一つ気づくことは、多くのハードのユーザー規模が400~500万人程度のレンジに収まっている点である。ゲーム専用機市場が誕生して既に30年近くの歳月が経過したが、これまでは基本的にごく一部のプラットフォームが市場を牽引するという時代が続いてきた。その構造が今は完全に崩れ去り、同じような規模を持ったプラットフォームが市場にひしめき合っているという状況を迎えている。ゲームをするという目的において、今ほどユーザーの選択の幅が広がったことはかつてなかっただろう。この多様化の時代において、コンテンツの供給側(パブリッシャー)は、戦略的なプラットフォーム選択のために、ユーザーマインドをきめ細かくウォッチし続けることが以前にも増して重要になってきているといえるのではないだろうか。