ECのユーザーエクスペリエンス(UX)|WD ONLINE

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ECサイト業界研究 Web Designing 2018年2月号

ECのユーザーエクスペリエンス(UX) お客様に「安心して」購入いただく方法

ECのUXとは、ECサイトの文字や画像が見やすい、買い物しやすいといった内容だけではなく、問い合わせに真摯に答えてくれた、商品がちゃんと届いた、おまけがあった、商品が良かったなどの取引を含めた体験のことを指しています。ECのUXはどのように考えていけばよいでしょうか?

実際のお客様に会ってこそのペルソナ

まずはじめに、ECにおけるUX設計のポイントを挙げると、大きく3つあります。

❶お店(ECサイト)はお客様にあっているか?
❷最初から最後までシームレスに一貫性があるか?
❸あなたのサービスを自ら体験したか?

まずは❶から説明しましょう。例えば、50代男性にキラキラ系で絵文字がたくさん散りばめられたECサイトで、髭剃りやネクタイを売られても響かないですし、70代の女性に小さな文字いっぱいの商品ページでは見ることさえも厳しいと言えます。

そういったミスマッチを防ぐには、当然ながら「自社商品やサービスをどのようなお客様が購入しているか?」を知る必要があります。

そのためには「ペルソナ」が大事であるとよく言われます。ところが、そのペルソナを設定する際、実際のお客様に会うことなくまったくの想像で作りあげようとしている方が多いのではないでしょうか。百聞は一見に如かずと言いますが、お客様に実際に会ってみると、想像していたお客様像と一致しているところはほとんどない、と言ってもいいくらい違うものです。よって、お客様像をイメージだけで考えたECサイトは「真のお客様」にあっているとは言いきれないのです。

私はあるモールの運営者に、グローバル展開する際のアドバイスを求められたことがありました。その時私は、「本格展開するなら現地に行ってどんな方が購入するのか、なぜ購入したのかを聞いたほうがいい」とお伝えしました。

そこで、その方は実際に同モールでカニを購入した香港のお客様のお宅へ、カニを販売したショップの店長と一緒に訪問しました。日本のカニを数万円も出して購入する方はどんな方で、どのような家に住んでいるのか? いろんなことを想像しての海外出張だったのですが、意外にも一般家庭の方で、たまたまホームパーティがあって、以前日本で食べたカニの味が忘れられなかったということで購入したそうです。

これは実際に会ってみないと知りえない事実です。となると、つくるべきECサイトやサービスも変わりますね。あなたのお店のお客様は、本当はどのような方なのでしょうか?

01 実際のお客様に会いに香港まで
「海外から日本のカニを購入する人はどんなお客様なのか?」それを確かめるべく、香港まで足を運んだモール運営者もいます。実際に会ってみると、意外にも普通のご家庭だったそうで、想定顧客の見直しを考えることになりました

 

一貫性のあるサイトを逆順で考える

続いて、❷について見ていきたいと思います。おそらくほとんどの方が、日々PVやUU、コンバージョンなどアクセスに関する数字をチェックし、サイト改善の必要性を感じていることでしょう。その改善には、「一貫性」が非常に重要なポイントになってきます。

サイトの改善をする際、修正する順番はお客様が購入した商品を受け取るところから遡っていくのがよいとされています。「お客様が商品を受け取る」という行動の前に考えられるのは、配送確認メールでしょう。そして受注受付確認メール→カート最終画面と逆に見ていき、最後にトップページの看板やヘッダーを見ていきます。

この一連の流れ(お客様からするとトップページやヘッダーを見る→商品を受け取るという順番)がシームレスになっていて、一貫性があることが大事です。ちなみによく陥りがちなのは、後ろからチェックしながら改善していきますので、フロント側に行けば行くほどイメージやトーンが変わってきたりすることもあります。それを防ぐには、ひととおりチェックを済ませたあと、もう1度、今度は前から後ろまで通しでチェックするとよいでしょう。

その後は、近くにいる方(奥様や厳しい意見を言ってくれる友人など)に自由にチェックしていただき、引っかかるところはないか、一貫性が崩れていないかを確認しておきましょう。実際にあった例としては、送料無料なのに送料が掛かっていたり、ページは赤いトーンだったのに、カート内は青かったなんて、笑い話のような話はいっぱい転がっています。

ここで、サイトのチェック・改善についてもう少し具体的な方法について触れておきます。改善は、まず売上が上がりやすいところからスタートしたほうがよいでしょう。

例えば、カートの最終一つ前の画面では、あと1回クリックしてもらえれば購入になるわけですから、あまり他のページリンクをクリックしてもらっては困ります。ですので、トップページへ戻るボタンやFAQなどのリンクは極力外すことを検討しましょう。そして、購入を決断する意識を後押しするように、「ご購入まであと少しです!」や「ご注文後にご不明な点があれば何なりとご連絡ください」などとキャッチコピーを変更しても有効です。最終画面からトップページへ戻ることも多いのですが、ここはマイページで注文できたことを見せて安心感を持たせたり、送り先を間違えることもありますのでマイページから変更できるように促すのもよいでしょう。

商品ページはカゴ周りの見直しが大事です。離脱するのは、ヘッダからや左ナビ、フッタ、レコメンドが多いので、カゴまで到達したら他へ行かなくても重要な項目がわかるようにしておくのがよいです。

カゴのボタンの位置や色も重要です。Amazonのカゴボタンはオレンジです。楽天は赤のカゴボタンを使用しています。お客様がどのような方なのかによっても、カゴボタンが変わります。例えば、昔からネットで購入している方はフォームボタンのほうが安心感があります。最近人気のサイトやアプリを見ながら、自分のお店のお客様はどのようなボタンがいいのか探ってみてください。

ただし、カゴの色や画像は一度決めたらあまり変更しないほうがよいでしょう。リピーターのお客様はお店のカゴボタンを認識していますので、やたらとカゴボタンが変わると逆効果になってしまいます。

これらは、お客様にいかに「迷わせないか」「想定外の行動をさせないか」を考えた改善です。つまり「迷う」=「離脱」の可能性を極力抑えるということです。それら個々の改善策を、サイト全体を通して一貫性を持って施されていることが、お客様に「安心して」購入いただく重要な要素になります。

 

03 ミエルカ
最近ではヒートマップでページ内行動を可視化できるサービスも出てきています。「ミエルカ」はユーザー行動をヒートマップで“見える化”していますので、数字が苦手な方にも説明しやすくなっています。アクセス解析ではなかなかわからないECサイトの課題をあぶり出すことができますhttps://mieru-ca.com/
04 楽天ページ診断サービス(1)
モールでも診断サービスが提供されています。楽天のページ診断サービスでは、同じカテゴリのジャンル上位商品ページと比較できます。転換率だけではなく、カート到達率やカート投入率、カートまでの長さも比較できます。コンテンツが短くても良い商品もありますが、中小零細のECサイトの商品であればこそ、コンテンツをしっかり書いて画像を大きくたくさん載せて安心感を出す必要があります
04 楽天ページ診断サービス(2)
ページ診断詳細では、ある一定の高さごとに閲覧時間や離脱率、コンテンツ評価、改善レコメンドを見ることができます。これによりどの要素がいいのか、悪いのかが一目瞭然になりました
05 ECのUXはコンテンツがすべて
テキストや写真など、サイトで公開できるものしか体験として提供できる手段がないECサイトにとっては、どんな情報がいかにわかりやすく見られるように設計されているかが勝敗の鍵を握ります。上記のような情報を流し読みでも把握できるようにするべきです

 

次のステージのために自ら体験する

最後に❸ですが、これは今後の将来を見据えた話にも関わってきます。ECサイトは、ますます競争が激しい世界になりました。今のお客様は、ただ「買い物ができる」だけのお店には満足しません。ある時はすぐに購入、ある時はじっくり検討、ある時は接客してもらいながらなど、UX自体に価値を求めてきています。

さらに、ECサイトではお客様が触ったり、試食したり、においを嗅いだりすることができません。つまり、五感に訴える顧客体験がECサイトでは提供できません。基本的にお金を払って商品が届かない限り、商品を確かめることができないのです。そういう意味で、ECサイトではコンテンツの体験だけで、脳の中のイメージだけで勝負していると言っていいでしょう。よいコンテンツがとても重視される世界なのです。

そのコンテンツとは? ECサイトのルールは昔も今も変わっていません。「お客様が気に入った商品を見つけることができるか?」がすべてです。お客様はECサイト内を検索しても欲しいものが見つからないなと思うと、そのお店にはお目当ての商品がないと思ってしまいます。しかし、3秒でわかる商品名、キャッチコピー、誠実なカスタマーサービス、返品や送料などの情報、FAQの充実など、流し読みでも十分わかるようにしておくと、ちょっとお目当ての商品ではないけど比較リストに入れてくれるかもしれませんし、次の買い物の時には購入してくれる可能性もあります。

そして、今後ECは飛躍的に発展する可能性が出てきています。例えば「スマートスピーカー」。「Google Home」や「Amazon Echo」などを使って、「今日は牛乳1本とキャベツ2個が欲しい」「おいしいピザとコーヒーを届けて」と声で注文できる時代はすぐそこに来ています。我々はこのようなECの世界が来た時にどのようにして生き抜いていくのか、考えていく必要があります。そのためにもお客様のユーザー体験を自ら体験し、どんどん改善を行い、今のうちにピカピカに磨いておくべきです。

06 スマートスピーカーがECのUXを変える
PCやスマホでECサイトにアクセスし、操作してもらう時代から、声がけだけで注文できる時代がやってくると、おのずとお客様の行動様式も変わり、購入パターンも変わってきます。それをどうキャッチし対応していくか、今から実際に自分で体験しておいて損はありませんGoogle HomeAmazon Echo
Text:川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/

掲載号

Web Designing 2018年2月号

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2017年12月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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PVは上がっているのに、コンバージョンに繋がらない!
Webサイトが期待するほどの効果をあげられない!
そこで、サイトの改善を急務として考えている方は多いと思います。

Webサイトの弱点を改善して、成果の出せる武器にしたい、もしくは、Webを有効活用した新しいビジネスを立ち上げたい。そうお望みの方に、「UX(ユーザー体験)」のノウハウをお勧めします。

UXとはとても端的に言えば、ユーザー視点で設計やデザインを考えることです。マーケティングの世界は、ユーザーの心をとらえる「体験を売る」時代になり、ますますこの考え方が取り上げられるようになりました。ただ、「UX」という言葉が先行して、イマイチ何のことかわからない、理論はわかるけど実際にどこから手をつけていいかわからないという方も少なくないのではないでしょうか。

UXは闇雲に叫んでも成功するものではありません。そこには理論に基づく準備やプロセスがあります。
本特集を一通りお読みいただければ、無意識にUXの理論や見るべき視点、メリットや期待できる効果などが把握でき、みなさんのビジネスの現場で応用ができるようになることでしょう。

【段違いの成果が出るUXの「5プロセス」】

[1]心を1つに。
プロジェクトチームの意識共有を図ろう

[2]お客様を知る。
ユーザーの「ホンネ」や動向を知ろう

[3]商品を知る。
プロジェクトにおけるビジネス的課題を把握しよう

[4]理想を描く。
商品のあるべき姿を描き、実現のためのアイデアを練ろう

[5]つくる・見せる・話を聞く。
原型を部外者に試してもらい、反応を見よう


<こんな方にオススメです>
・UXをまずは何から始めていいのかわからない
・UXってデザインだけじゃないの?
・そもそもUXってなにがよくなるの?
・部署を横断して取り組むべきなのはなんとなくわかっているが、説得する自信がない
・理論だけではなく、現場で実践していることが知りたい
・Web解析時のUX評価方法や改善方法を知りたい
・UXの重要性をクライアント・上司に理解してもらいたい
・効率よく成果をもたらすためのテクニックを知りたい