2017.08.25
ECサイト業界研究 Web Designing 2017年10月号
必勝ポイント&クーポン術 集客にヒットするモール内での効果的な打ち出し方
ECサイトでのFacebookページの活用が目立ってきています。中には1度の投稿で5,000いいね!をもらったりしている場合もありますが、まだまだそこまで行かないことも多いでしょう。しかし、あなたのお客様がFacebookを活用しているならば、今回ご紹介するノウハウをご参考にしてぜひ実践してみてください。
モールのキャンペーンに便乗すべし
みなさんも実体験として感じていらっしゃるのではないかと思いますが、楽天の「SPU(スーパーポイントアッププログラム)いつでもポイント最大7倍」(01)やYahoo!ショッピングで行われている「プレミアム会員ならTポイント5倍」「ソフトバンクユーザーならいつでも10倍」など、まさしくポイント戦争が毎日のようにいろんなキャンペーンとして行われています。
楽天はスーパーセールやマラソンといったおなじみのセールの他にも「東北楽天ゴールデンイーグルスが勝つと2倍」や「ママ応援キャンペーン」などを行っていて、ほぼ毎日と言っていいほど何らかのイベントが開催されています。
Yahoo!ショッピングも「5の付く日」や「月末ウルトラセール」(02)などが行われています。これらのポイントキャンペーンは、最大30倍や35倍といった高倍率のポイントがばらまかれているため、この機会に購入しようと思うお客様が一気に押し寄せて、平時の売上が50万円のところ、40倍の2,000万円以上を1日で売り上げたECショップもあります。
このようにモール側の施策で売上があがる時に一緒にイベントを開催して、売上を作っていくのも重要になっています。特に期間限定ポイントは、顧客としては「ポイントがなくなってしまうなら」と思ってしまうので、ポイント消滅前の流通額は明らかに伸びがあります(03)。
もう一つ、最近人気があるのがクーポンです。今は購入への最後のひと押しになっているのは間違いありません。50円や100円くらいのクーポンから、777円や10%クーポンといったものもあり、お得感が満載になります。商品ページを見ているとカゴボタンの横あたりに表示されるため、ついついクーポンをゲットしてしまいます。ポイント履歴がマイページに表示されるのと同様、クーポンも獲得履歴が出てきて、使用期間が迫ってきていることをオススメされます。
ショップ側からすれば、このようなポイントやクーポンを使って購入していただくとモール側のランキングに掲載されますし、さらに検索にも掛かりやすくなりますので、2重3重の効果が出てきます。
もちろん、モール側の施策だけでアクセスが急増するので、ポイントを倍付けしたり、クーポンをバラ撒くことをまったくしなくても売上が上がることもありますが、先述のとおりポイントを倍付けすることで表示が変わったり、クーポンを出すことで検索上位に表示されることもある点は見逃せません。というのも、モール側の窓口を増やしていくことはそのまま自分のお店へのアクセスが増えることになるからです。モールでは競合との戦いも熾烈ですから、どのように攻めて売上を作るかをしっかり考えるべきです。
とは言っても、やみくもにポイントをつけたりクーポンをばらまいても費用に見合う効果が期待できるかどうかは保証できません。そこにも、戦略が必要です。では、実際にポイントやクーポンをどのように発行するとよいのでしょうか?

01 楽天市場SPU(スーパーポイントアッププログラム)いつでもポイント最大7倍
楽天市場のお買い物がいつでもポイント最大7倍になるプログラム。通常ポイントに加えて、楽天市場アプリ当月1回以上買い物をする、楽天モバイルを利用するなど条件により倍率が加算され、あわせて7倍にもなります

02 Yahoo!ショッピングの月末ウルトラセール
7月25日~7月30日に開催されていたYahoo!ショッピングの月末ウルトラセール。人気商品のセールやポイントキャンペーンでさらにポイントUPしています。時間限定のお得なクーポンセールも実施ということで爆発的な売上を記録しました

楽天のサイトに行くと、トップページからさまざまなポイントキャンペーンのバナーがすぐに目に飛び込みます。初めてのお買い物、東北楽天ゴールデンイーグルスやヴィッセル神戸が勝った試合の後など、多種多様な条件でポイント倍付をしています。一方のYahoo!ショッピングでも、Tポイントやソフトバンクソマホからのログインなど、自社の強みを活かしたキャンペーンを展開しています
ポイント付与は「売上3倍の法則」で
まずは、ポイントを見てみましょう。楽天では、全商品ポイントを倍付けすることもできますし、商品ごとにポイントを付けることもできます。倍付けのポイントの2倍から最大20倍まで1倍ずつ設定が可能です。
一方、Yahoo!ショッピングでは、商品ごとに2倍~15倍までポイント倍付けしたり、会員ごとにポイントを変えることができます。例えばダイヤモンド会員には15倍、シルバー会員には3倍といったような設定ができます。
楽天でもYahoo!ショッピングでも毎月のイベントカレンダーが用意されていますので(04)、自社のイベントとあわせて、どのようにポイントを付けていくのかを検討することもできます。
とはいえ最初のうちは、モール側のキャンペーンにあわせた日程でポイント倍付けすることをお勧めします。中途半端なポイント倍付けだとお客様が逃げてしまうこともありますし、10倍ポイントを連発すればもとに戻した時の反発があります。経験上では、「売上3倍の法則」がオススメです。つまり、キャンペーン時に売上を平時の3倍にするにはどうすればいいかを考えてその施策を実施するのです。3倍になればOKですし、ダメでしたらもう少しポイントを付けることを考えます。経費倒れにならないようにくれぐれも注意しましょう。


上が楽天のイベントカレンダーで、下がYahoo!ショッピングのイベントカレンダー。モール側のキャンペーン実施期間なども表示されるため、それに合わせて自店舗のポイントキャンペーン期間を考えることができます
クーポンは「使用率3%」を目標に
クーポン(05)には、大きく分けて「バラマキ型」と「サンクス型」があります。バラマキ型は言葉のとおり、モールのユーザーに対して無作為にクーポンをばら撒きます。ばら撒いても使われなければ経費になりませんので、できる限りばら撒いてしまうというのは作戦の1つです。といっても、1万枚撒いたので1万人来るかというと、そんなに甘くはありません。特に最初の頃はお店の認知がないとクーポンをなかなか使ってくれません。3%も使ってくれれば御の字でしょう。一番使われているお店で60%くらいです。まずは使用率3%を目標にして10%くらいまでいければよいでしょう。
一方、サンクス型のクーポンは、購入者に対して発行できるクーポンです。次回使える100円クーポン、200円クーポンあたりが人気があります。実はモールでリピートしてもらうのはかなり厳しく、ECショップ側も新規顧客獲得に走ることが多いため、せっかく購入してくれたお客様へのCRM(顧客満足度向上)施策はかなり乏しいと言っていいでしょう。しかし、新規顧客を獲得するコストとリピーターになってくれる顧客を維持するコストでは、新規顧客獲得の方が5倍掛かると言われます。インテリア関連ではリピート率は20%、ファッションやグルメ店舗では50%のリピート率になればかなり優秀な店舗と言えます。すぐにはここまで行きませんが、目標として考えておくとよいでしょう。



100円引きクーポンといった手軽なものから、半額・80%OFFといった強力なものまで幅広く施策が打てます。オープン記念には半額といったインパクトを狙い、定期的に覚えやすい条件で少額クーポンを使い顧客の気を向けるなど、新規顧客獲得とリピート獲得で使い分けることも考えましょう
ポイントやクーポンはタダではない
ポイントやクーポンは、いわばディスカウントロイヤリティと言えます。いわゆる値引きです。本来であれば、値引きをせずに商品を販売して、その使った体験で顧客とエンゲージ(つながり)を持つことが最高です。しかしながら、なかなかここまで行くのは難しいのが現実です。自分の商材を購入した顧客や顧客になるであろうユーザーがどのような経緯で商材を購入してくれるのかを研究する必要があります。
例えばスマートフォンを使う方に、PCのキャンペーンをやっても意味ありません。アプリで購入するのか、検索してくるのか、メルマガや広告からなのか、お客様の動向を自分でシミュレーションして、どこでポイントを見せるのか、どこでクーポンを発行するのがいいのかを確認しながら、さらに他店の動向もチェックして作戦を立てましょう。
また、ポイントやクーポンにも注意すべき点があります。先に述べたようにこれらは無償で実施できるものではありませんので、いくら新規顧客が取れるからとか売上が上がるからといって、やりすぎて結局赤字になってしまっては意味がありません。また、これらを何の経費に充てるか、会計処理も大事です。会社によって売上から引く場合もありますし、販売促進費の経費として計上することもあります。引当金処理を行うこともありますから、PL(損益計算書)に影響してきます。十分にシミュレーションして施策を行ってください。
クーポンの次~集客のカギは決済
ECにも多彩な決済方法が登場していることはこの特集でも掲載されているところですが、決済側のキャンペーンも激しくなってきていることも見逃せません。
電子決済が日本よりもはるかに浸透している中国を見てみると、例えばWeChatPayは決済会社にも関わらず、キャッシュバックキャンペーンや回答するだけで現金を獲得できるといったキャンペーンがかなり行われています。「微信(WeChat)」(06)の公式データによれば、2017年春節の大晦日1月27日のたった1日だけで、中国国内でやりとりされた微信のお年玉は142億件に上り、午前0時にはピークに達して、1秒あたりなんと76万件がやりとりされています。前年は80億8,000万件のやりとり件数でしたから、倍近いやりとりが行われたことになります。
これは、「運任せお年玉」の影響が大きいと考えられます。 これは、お年玉を出す金額と人数を設定して、一つひとつのお年玉の金額が自動的にランダムに配布されるものです。100円のお年玉をグループトークに投げれば、90円のお年玉をもらう人もいるし、1円をもらう人もいるのです。このようなグループトークで「運任せお年玉」の配り合いがが急増しています。このお年玉キャンペーンに参加することでWechat側の抽選会に参加できたりもします。これらのキャンペーンはWechat側が費用を出しているところが今までと違うところです。
ECは、簡単に言えばインターネット上で決済することです。今までは、お店側やモール側がポイントやクーポンを発行してお客様のロイヤリティを高めたりしていましたが、決済会社自体がキャンペーンを行うということは、決済会社自体がお客様の囲い込みを行い始めたことになります。実際に個人情報を打ち込まずにIDとパスだけで購入できるID決済は、自社サイトにそのID決済を設定することでその決済を使用しているユーザーを自分のお店に呼ぶことができます(07)。Amazonやドコモ、auなどのユーザーを取り込むのであればID決済を選択する手も十分に考えられます。つまり、決済を正しく選ぶことがユーザーを呼び込める手段になってきたのです。

中国で非常に勢いのあるチャットサービス「Wechat」。日本でいうLINEと同様のコミュニケーションツールで、中国では個人間送金機能の利用が非常に浸透していることもあり、「WeChatお年玉」のような施策が成功しています。今後、もっと日本でも電子決済の知識や利用が普及すれば、このような施策も現れるかもしれません

Paypalが発表した日本における2016年のID決済利用状況。ECの利用機会が格段にスマホへ移行している流れの中、決済をするのにクレジットカードなど個人情報を新たに入力する手間が省けるID決済はカゴ落ち抑制の面でも安心感の面でも今後確実に伸びてくると考えられます

- Text:川連一豊
- JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/