2017.12.28
One's View コラム Web Designing 2018年2月号
【コラム】“ 私的UX 向上”と「あきこちゃん」活用術 今号のお題「UX」
さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。
今回のテーマは「UX」。書きながらいまも悩んでいます。コンビニエンスストアはUXの塊みたいなものなのですが、自分ひとりでどうにもできないことも多く、コラムでご紹介できるような事例もなかなか見つからず…悶々としております。
一つ言えるのは、過去のプロジェクトを振り返り「これは失敗したなー」という苦い思い出に共通しているのは、“自分ができること”からスタートしてしまったことかなと思っています。
最近、UXが優れていると言われるインターネット企業で、新規事業を担当されている方々とお仕事をご一緒する機会があります。そんなUX優秀企業のみなさんに共通していることを発見しました。それは、ユーザーにとって最高のUXをゴールに見据えつつ、そこからさらに疎外要因を排除していることです。たとえば、商談はイラストで情報をフラットに共有しながら進行します。参加者が理解できない要因をイラストという手段で排除してくれるのです。感銘を受けた私はUX優秀企業に習い、自分なりの“私的UX向上”を図ろうと心に決めました。仕事への取り組みを見直したのです。出た答えが「あきこちゃん」というキャラクターを活用することでした。
些細なことなんですが…先日、手帳を「Moleskine Pocket」に変えました。手帳は愛用していましたが、ビリッと破れるタイプにしてみたのです。というのも、ホワイトボードが近くにない時はメンバーへの情報共有を口頭で伝えていました。すると「こんなイメージではなかった問題」が勃発することがあり、資料の作りなおしなどメンバーの貴重な時間を割いてしまうこともしばしば。いまは手帳に絵を描いて確認しながら、ビリっと1枚破って渡すようにしています。そこで心がけているのが「あきこちゃんがしゃべっている絵」を入れることです。「あきこちゃん」は2010年に誕生したソーシャルメディア用のキャラクターで、ローソンの最新情報をマイペースにLINEやTwitterでつぶやいています。社内で検討しているサービスを「あきこちゃんだったらどう伝えるか?」として共有することで、「ユーザーがどう感じてくれるのか」について共通認識を持つことができるようになったのです。
もう一つは、店舗でのUX改善に「スーパーローソンクルー♪あきこちゃん」の目線で考えるようにしたことです。東京・品川に次世代店舗の実験ラボ(一般の方は利用できません)があります。そこではサイネージの「動くあきこちゃん」が接客をしているのですが、アルバイトさんが感じる負の部分を改善できる可能性がチラホラと垣間見えてくるのです。ITによるあきこちゃんの視点を持つことが、想像以上のUX改善のためのアイデアをもたらしてくれることに繋がってきました。
私的UX向上の末に行き着いた「あきこちゃん」活用。今後も、クルーさんとお客様とのやりとりをイメージしながら、UX改善に努めていきたいと思います。



- ナビゲーター:白井明子
- (株)ローソン デジタルプラットフォーム部シニアマネジャー。デジタルプラットフォームを用いた施策の構築と企画を担当。「Web人大賞」、日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー準大賞」受賞。ACC新事業検討委員会委員、法政大学イノベーションマネジメント研究センター客員研究員。http://www.lawson.co.jp/