2016.06.24
データのミカタ Web Designing 2016年8月号
LINEが独占する大学生のコミュニケーション データアナリスト萩原雅之氏による統計コラム
東京・八王子にキャンパスを持つ東京工科大学では、新入生のガイダンス時にSNSやアプリなどコミュニケーションツールの利用状況についてのアンケートを行い、結果を毎年発表している。工科大学といっても、メディアやデザインの学部もあり女性比率は35%にのぼる。
特定大学の新入生が対象の調査に何か意味があるのかと思われるかもしれないが、この調査の回収率は100%だ。継続的に一つの集団の実態をデータとして正確に切り取っていることに価値があり、変化の方向性や速さを知るのに適している。ネットアンケートのサンプル調査にみられるバイアスとも無縁だ。
5月に発表された調査結果では、今年の新入生にも大きな変化が見られた。スマートフォンの所有率は100%に近づき、特にiPhone所有率は昨年から5ポイント上昇、男子60%、女子は73%にのぼったという。SNS利用率ではLINEがほぼ全員(98%)に普及し、Instagramもこの1年で15%から29%に倍増、女子では52%に達している。
友人とのやりとりでもっともよく利用する連絡方法を尋ねた質問では、LINEの独占化が明確となる。2年前75%、昨年86%、今年は93%を占めている。親しい友人のみならず、クラスやサークルの連絡ツールとして使わざるをえない状況になっているのだろう。かつて大学生にとって当たり前だった連絡ツールとしての「携帯電話のキャリアメール」は消滅寸前である。
もう一つの驚きは、Facebookの利用者は2割程度にとどまり、ほとんど増えていない。メッセンジャーに至ってはわずか4%という結果だ。前回のコラムでメッセージングアプリが情報検索やEC機能も取り込む動きをとりあげた。こうした大学生の実態を見る限り、日本ではやはりLINEがデファクトになる可能性は高い。
- Text:萩原雅之
- トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/