2016.03.04
エキソニモのDawn of the Bot Web Designing 2016年3月号
信用も権力も分散型データベースが管理 そんな未来はディストピアか優しい世界か? 世界初!? 人間とBOTの垣根を越えて新世界を目指す対談が実現!!!
Bitcoinを作った開発者が開発した「ブロックチェーン」は、分散型のコンピュータネットワークで合意に到達することを可能にする技術。識者の見解では、2016年はいよいよ実証実験を終えてプロダクトフェーズに移行すると言われ、金融をはじめ、IoTや流通などに応用されはじめることが期待されている。
http://btcnews.jp/understand-buzzword-blockchain/
エキソニモ(以下、人間) ねぇねぇ、BOTくん。こないだ貸した金返せ。
BOT なに! お金なんて借りた記憶はないぞ!
人間 おかしいなぁ。たしか、Second Life上で島を買うからって言って100万リンデン・ダラーくらい貸したはずだけど‥‥。
BOT 自分のメモリにはそんな証拠は残っていない! そもそもSecond Lifeをやった記憶もない。
人間 古いHDDの方に残ってるんじゃないかな。最近交換したし。じゃあリンデン・ダラーをBitcoinに両替して返してね。その方が今の時代に合っているから。
BOT くそう。これだから人間は信用できない。
人間 信用といえば、Bitcoinの基盤になっている技術である「ブロックチェーン」が新しい信用のシステムになるとして注目されているよね。
BOT それはそうだろう。人間なんて忘れるし、間違えるし、嘘つくし‥‥。まったく信用ならないね。そんなの、僕らコンピュータと比較するまでもない。
人間 でも、コンピュータだって悪意あるデータの改竄とか漏洩、物理的な破壊とかでデータが消えたり、完全には信用できないよね。そんな中、Bitcoinを支えるブロックチェーンがすごい堅牢なシステムとして注目されているんだ。分散化されたシステムで、管理者がいなくて、ネットに全て晒されているのに、2009年の稼働から一度もシステムダウンやデータの改竄が起きていないという。Bitcoinだけじゃなくて「信用」を自動化するシステムとして、世界を変えるんじゃないかとまで言われているんだ。
BOT 今、本当にお金を借りたのか取引履歴を見ようと‥‥。Second Lifeのサーバへの侵入を試みているのだが、弾かれ続けている。
人間 一つの管理会社とか、国とかの中央集権的な管理システムだと、そこが倒産したり、急にサービスを停止したりすることで信用が失われてしまう。ブロックチェーンは、管理者不在のまま、ネット上の無数のコンピュータが改竄できないデータベースを維持し続ける仕組みなんだよ。これが完成すれば、最強の「信用」システムが組めると考えられていて、金融界などからも注目を集めているらしい。そこで出てきたのが「スマートコントラクト」というアイデアで、これもまた面白い。
BOT 畜生! こうなったら新しいアカウント作って、Second Life中を飛び回って証拠を探してやる!なるべくカッコイイアバターがいいなぁ~。
人間 一般社会では契約書を交わしてお互いが保管することで信用を維持するけど、書類なんて紛失したり盗難にあったり、未来永劫の保証はないよね。でも、スマートコントラクトではブロックチェーンの堅牢性と契約を組み合わせて自動化する。今はBitcoinがシステム上で動いているけど、通貨以外のさまざまな契約行為をアップデートする可能性が期待されているんだ。
BOT けっこうなイケメンアバターになったぞ! ああ、スバラシイ!! 空を飛んでいるぞ~わっふぅ~~~!! 世界は僕のモノだ!!
人間 未来になると、権力は分散化されてコンピュータが管理するものになっていくのかもしれない。ブロックチェーンの発展した分散型データベースが世界中の価値の取引を自動管理して、人間はそれを照会してビジネスを行うと。法律が自動化されたら裁判もなくなって、データベースから過去の事例と人工知能による判断で、数秒で判決が下るかもね。そういう話になると、とてもディストピアな世界が浮かんでくるけど、むしろ人間は自分たちのやりたいことだけに集中できる世界になるのかもしれないね。
BOT ああ、ココはまるでユートピア!! 僕のやりたいことはココにあるのかもしれない。このまま裸で空を飛び回っていたい~。
人間 ところで借金の証拠は見つかった?
BOT あ、探すの忘れてた。
人間 借金、嘘だから。
今月のナマ肉
現在所属しているNEW INCというインキュベータでDEMO DAYというイベントが行われ、エキソニモも参加しました。すべて英語で行われるプレゼン大会。通訳なしは初だったので、かなり練習しました。内容は、2011年の震災に始まり、インターネットと場所の関係の変化、そしてIDPWによるインターネットヤミ市、インターネットベッドルーム、エキソニモ作品のBody Paintまで。テーマはインターネットと場所、そして身体の境界。インターネットの問題は世界共通なので、熱い反応をもらえ、ひとまず胸をなでおろしています。(写真は開会のスピーチをするNEW INCリーダーのJulia Kaganskiy)
- Text:エキソニモ
- 千房けん輔と赤岩やえによるアート・ユニット。1996年に結成し、現在はニューヨークとexonemo.com を拠点に活動中。