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特別企画 [PR] Web Designing 2022年8月号

利用シーンで変わる情報の届け方 「点から線」で考えよう 情報発信の基本はターゲットごとの3W+1H

インターネット環境やデバイスの発展により私たちが接する情報量は日々増加している。その結果、発信側の都合で情報発信をしても受け取る側が欲するタイミングでなければ受け入れられず、広告費や発信手段を増やしても、明確な設計図がなければ具体的な行動喚起はおろか認知もされない。現代の情報発信は、内容や手段だけでなく、発信タイミングや受け手側の行動プロセスまで考慮する必要がある。そこで、企業にまつわるコミュニケーションの新しい形を考える「新生コミュニケーションデザイン策定委員会」は、情報発信の基本を見つめ直すことにした。そこで浮かび上がってきたのは、「点から線」というキーワードだ。

 

さまざまな状態や感情の人々に情報を届ける方法とは

企業が情報発信する際、自社や商品・サービスの「認知拡大」を目的とするケースは少なくない。しかし、人は認知するだけでは行動しない。情報発信をきっかけに行動変容を促すには何が必要になるのか。まず大事なのは人の行動プロセスの理解だ。人は情報を受け取ると、❶注目、❷興味・関心、❸欲求、❹記憶、❺行動というプロセスで購買心理が動いていく。❶を「認知段階」、❷~❹を「感情段階」、❺を「行動段階」と呼ぶが、各シーンで人が抱く感情も、取る行動も、行う手段も変わってくるため、発信者側もシーンが変わるごとにアプローチ方法を変えるべきであり、シーンごとに最適な設計図を用意しておくことが必要となる。マーケティングやコンテンツグロースのスペシャリストである筒見憲介氏は次のように解説する。

「人の行動には必ず何かしらの目的が存在します。自分なりに情報を消化し、共感できるかを判断した上で、もともと持っている自らの目的に沿うか否かを考えて行動に移しているのです。つまり、人の行動に『たまたま』は存在しません。情報発信側も、なぜそれを届けるのか、届けてどうしたいのか、施策の実行前に目的や意義を定義する必要があります」

図1 シーンが変われば感情も行動も変わる
同じ情報でも、受け取る側(ユーザー)の状態や状況により受け取り方が変わる。受け取り方が変われば感情の抱き方もさまざまで、それを受けてとる行動も当然変わってくる。

 

1つのシーンだけ(点)ではなく、複数シーン(線)で考える

シーンを意識した情報の届け方を考える上で、わかりやすい例となるのが取扱説明書だ。製品を購入すると多くの人が紙、あるいはWebを通じて取扱説明書に目を通すだろう。製品を使う機会が増え、使用方法を覚えていくに従って徐々に取扱説明書に目を通す機会は減っていくが、だからと言って捨てる人はあまりいないはずだ。万が一製品の不調や故障が起こったり、事故発生時など、いざという時すぐに見られる状態を確保しておかないと、製品によっては人命に関わることもあるからだ。

また、こうした緊急時にはインターネット回線やデバイスに不具合が生じている可能性も考慮し、Webだけでなく紙でも閲覧できるようにしておくことも一考の余地がある。

このように情報発信する際には、1つのシーンだけでなく複数のシーンで受け手が情報に触れること、そして情報に触れるシーンやタイミングによってその手段や目的が異なることを予め想定しておかなくてはならない。つまり、情報設計のあり方は「点ではなく線」で考えるとよい。

図2
シーンによって提供すべき内容も手段も変わるので、目的を意識した上で手段を選ぶことが大切。「これからはデジタルの時代だ!」と、闇雲に紙を辞めるのではなく、目的到達手段として最適なものを考えて選ぶべき

 

3W+1Hで目的を明確にする

複数のシーンに対応できる形で情報発信していくには、

WHY : なぜやるのか

WHO : 誰に届けるのか

WHAT : 何を届けるべきか

HOW : どんな手段で届けるべきか

という「3W+1H」の考えを持ち、相手目線に立って客観的に物事を見ることが重要となる。ここで注意が必要なのは、「HOW」は最後に決めるということだ。筒見氏は語る。

「『流行っているから』『乗り遅れないため』と、手段から入る企業は決して少なくありません。ですが、そうしたケースに限って目的が曖昧なことが多いのです。そのため、情報発信をはじめ何らかの施策に取り組む際には、『なぜ自分たちはそれをやるのか』を考えましょう。目的が明確であれば折に触れて振り返ることもできます」

このように情報発信の筋道を立てるには、組織の中での議論が必要となる。そのため新生コミュニケーションデザイン策定委員会の黒田聡氏は「組織的に動いていくためにも、インナーコミュニケーションが大事になるだろう」とも指摘した。

図3
図02にもあるように、届けたい相手のシーンによって適切な手段を選択するためには、「どういう意図を持って誰にどんな情報を届けるのか」を明確にする必要がある。それをもって導き出せる手段を検討しよう

 

「点から線」コミュニケーションの実践アプローチ

シーンにあった情報提供のために、「点から線」の視点での設計が求められる。では、その上でより実践的なアプローチには何が必要となるのか。ポイントは、ターゲットセグメントの定義と、セグメントごとに「3W+1H」を当てはめていくことだ。

図4
上図のようにセグメントを可視化することで関係各署との共通認識を持ちやすくなり、各層へのアプローチを通じて起こしたい変化や、そのためにすべきことや手段の検討がスムーズに行えるようになる。

ターゲットセグメントの定義

具体的な施策検討の前に行うべきはターゲットセグメントの定義だ。図04はアドビの安西敬介氏の提案により作成したターゲットセグメントの定義モデルだが、左側の最も円が小さい層はコア層で、既に情報発信側と強固な関係性を築けていて然るべき関係性。ただし、企業内の部署横断のプロジェクトなどの場合、まずは目的や意思疎通の徹底(インナーコミュニケーション)が必要になる。  右側にいくに従って母数が増えるので円が広くなっていくが、そうなるほど情報発信側との関係性は薄く、ロイヤルティも低い層となっていく。情報発信の目的によっても異なるが、ビジネスで言えば「顕在顧客」と呼ばれる2番目の層や、「見込み顧客」や「潜在顧客」と呼ばれる3番目の層がメインのターゲットセグメントとして設定されることが多い。

セグメントごとに3W+1Hを考える

セグメントの定義と可視化ができると、自分たちがアプローチすべき対象が明確になる。ターゲットが明らかになれば、組織内での共通認識を持ちやすくなるし、誰に対して(WHO)、どのような変化を起こしたいのか(WHY)、そのために何をすべきで(WHAT)、どのような手段を用いるといいのか(HOW)といったことの検討がスムーズに進んでいくだろう(さらに具体的にするために、「どういった行動をとってもらいたいか(ACTION)」も考えるとよりよい)。 狙うセグメントは必ずしも一つに絞る必要はない。図01のように同じ人物でも心理段階によってセグメントが変化する題材もあるからだ。なので、各セグメントに対して「3W+1H」を当てはめながら整理をしていくと、まさに「点から線」の情報設計が可能になっていく。

進行中&新規具体的施策はどこに当てはまるか検証する

セグメント定義と各セグメントに対する「3W+1H」(+ACTION)の整理ができたら具体的な方向性が見えてくるので、打つべき施策の立案・実施も行っていける。この時、前ページのように各セグメントの3W+1Hを図示化しておくといいだろう。誰に対して、何を、どのように行っていくかがすぐに理解できる状態にしておくと、施策を展開していくうちに迷いが生じた時や、新しい施策を考案する時に、その施策はどこに当てはまるか、なぜ行うのか、誰に向けてのものなのかといったことがすぐに理解できる。施策によっては複数のセグメントに効果があるかもしれないという発見にもつながり、情報発信側の意思統一とスムーズな作業の実現はもちろん、ユーザーへのアプローチの精度を高めることにもつながるだろう。

 

 

企画協力:一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会

掲載号

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Chapter02 AWSを導入・運用する
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●クラウド初学者のためのAWS学習ガイド

【制作視点で考えるAWS】
●開発の前線から見るAWSの影響と今後