2022.01.12
クリティカルな課題解決力を磨く
予算がない、時間もない、知識もない! DXなどはるか遠く、Web活用の素地を耕すところから…が地方のWeb制作の現実です。こうした現状を打破するため、『Web制作・運用バイブル』企画が新たに始動しました。本コラムでは、監修を担当したアルテバレーノ(株)の解説で『バイブル』の内容をチラ見しながら、クライアントの事業に“本当に貢献するための”Webディレクションについて考えます
Illustration:高橋 美紀
『Web制作・運用バイブル』とは……
中小企業を中心とした発注者向けの、Web施策の開始・依頼前に知っておいてほしいことをまとめたWeb施策の解説本です。サイト制作のフローやSNS運用、数字目標の立て方など、現場のディレクターが苦慮する「あるある」問題を、図版中心に、細かく丁寧にかみ砕いて説明しました。お客様向けの説明用資料として、一冊あると便利です。
Web制作を仕事にすると、一度は「Webを活用した地方創生」を考えたことがある人も多いのではないでしょうか。地理的な制約から解放され、全国さらには全世界にはばたける可能性は、都市部よりも地方でこそ活かしたいWebの利点です。ところで、具体的にはどんな提案を考えていますか?
地方で活動していると、WebサイトやSNSが“ありさえすれば”業績がV字回復するという「幻想」が、事業者の中にあるように感じます(しかも「無料で簡単に」!)。しかし、十数年前ならいざ知らず、“ある”こととCVや業績向上には隔絶の飛躍があります。ゆえにわれわれは、制作技術やマーケティング理論について日夜、研鑽を積んでいるわけですよね。にもかかわらず、いざ提案となると、「SNSで集客」「ECで販路拡大」とか、つい言いがちではないでしょうか?
コロナ禍の影響で、2020年以降の相談は「ECサイトをつくりたい」が圧倒的でした。しかし、実際にECサイトの開設を勧めるのは、20件に1件程度です。というのも、「相談者はECを求めているわけではない」というケースがほとんどだからです。
猫も杓子も「ECで販路拡大」とする声も散見されますが、ECはサイトをつくるだけでなく、集客、商品開発、製造・発送体制等、クライアント自身の負担も大きいです。そこで果たして『バイブル』で取り上げた「町の定食屋」のような家族経営の事業者にとって、ECが救いの一手になるかというと、「無理」とクライアント自身が判断するケースが多いです。また、上図のように「EC」という言葉の裏にある本当の課題は「適切な売上の回復」であり、その課題解決のためには、ECである必要性も妥当性もないこともあります。
われわれ制作サイドも「Web万能主義」に陥らないよう注意しながら、クライアントの経営ビジョン(規模や事業目的)や地域経済のあり方を理解した上で、言外にある「真の問題解決」に直結する提案を行うことが重要です。