【コラム】デザイナーはプログラミングを学ぶべきか?|WD ONLINE

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Web Designing 2021年10月号

【コラム】デザイナーはプログラミングを学ぶべきか? 今号のお題 [プログラミング]

さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。

デザイナー界隈でしばしば湧き上がる話題として、デザイナーはコードを書くべきか? というものがあります。これに対して私の意見は、書けるなら書けたほうが絶対いいですが、苦手なら無理せずに他のことをがんばればいいんじゃないかなと思っています。コードを書けないからデザイナー人生おしまいだ、ということにはならないとは思いますが、多少理解できたり、書けた方がよりデザインの幅は広がるはずです。

実は先日、デンマークで「Design Matters」というデザインカンファレンスを開催したのですが(私も運営に携わっています)、大きなテーマのうちの一つがまさに「The Design Code(デザインとコード)」でした。その中でも面白かったのが「Generative Design(ジェネレーティブデザイン)」という考え方で、一言で言えば動的なデザインシステムを組んで、デザインを何通りも自動生成するというものです。

カンファレンスで遭遇したDesign Systems Internationalという会社では、「Mechanic」という自社開発のオープンソースフレームワークを使って各クライアントごとにブラウザベースのデザインツールをつくっているそうです。ブラウザ上のパラメーター操作だけで簡単にブランドアイデンティティに沿ったクリエイティブが何パターンもつくれ、任意の形式で吐き出すことができます。

デザインシステムは日本のデザイン業界でもとても話題性のあるトピックですが、どちらかと言えばデザインの一貫性を保ち、維持するためのルールやデザインガイドという側面が強いと思います。ジェネレーティブデザインはデザイナーじゃなくても高品質なブランドデザインが可能というのもそうなのですが、ただデザインルールを法律のように突きつけるのではなく、使い手にクリエイティビティを持たせられる点が素晴らしいと思いました。ルールを決めたデザイナーの想像をも越える発想のアウトプットもあり得るわけです。

Mechanicのもう一つ良い点は、アニメーションや動きのデザインが行えることです。ドキュメントのデザインシステムでアセットの動きなどを示すのはとても面倒ですが、ツールのパラメーターでデザイン可能にしておけば、つくり手は多くの制約を考えることなくより直感的にデザインに没頭できます。

Mechanicはコードとデザイン双方の知見を持ったチームがつくったデザインフレームワークです。デザイナーがコードを書ければ、より多くの人にデザインとクリエイティブの機会を渡せるという好事例とも言えます。

また、コードを学ぶと、コミュニケーションで役に立つ側面もあります。実は企画とデザインがメインの私も一時期コードの勉強をしていました。単純に知っておいて損は無いだろう、というシンプルな理由だったのですが、実際仕事でかじっておいてよかったなという場面がいくつかありました。

プランナーやディレクターとして、仕様を考えたり画面設計をする際に、プログラムやデータベースの構造がわかっていないと無茶な指示をしてしまう時があります。少しでもかじっていれば、たとえば怪しそうなところを察知してエンジニアさんに事前に相談しに行ったりすることができますし、トンチンカンな仕様も少しは減るかもしれません。

コードを学ぶというと、あまり楽しいイメージが湧かないかもしれませんが、たとえばデザイナーであればProcessingなどビジュアルアウトプットの側面が強い言語などはいじってて楽しいかもしれません。プログラミングやコードに苦手意識があるとしても、かじるくらいならそんなに怖くないので、楽しそうなものから徐々に取り組んでみてはいかがでしょうか。

Design Systems International社が開発した「Mechanic」は「デザインルールをデザインツールに変えよう」というコンセプトで、オープンソースのフレームワークを公開しています。デザイナーにも親しみやすい切り口でのコードアプローチかもしれません 
ナビゲーター:三瓶亮
株式会社フライング・ペンギンズにて新規事業開発とブランド/コンテンツ戦略を担当。
また、北欧のデザインカンファレンス「Design Matters Tokyo」も主宰。前職の株式会社メンバーズでは
「UX MILK」を立ち上げ、国内最大のUXデザインコミュニティへと育てる。ゲームとパンクロックが好き。
個人サイト: https://brainmosh.com Twitter @3mp

掲載号

Web Designing 2021年10月号

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業種問わず企業は、オンラインを前提にビジネスを成り立たせる方法に切磋琢磨しています。リアルの集客がままならない状況は依然としてある中、誰もが一度は考えるのが「オンラインイベント」ではないでしょうか。

しかし、ネット上を見ると、玉石混合ながらさまざまな企業が次々に開催しており、すでに「オンラインセミナー(ウェビナー)過多」状態です。ただ単に「オンラインセミナーやります」で立ち上げても埋もれてしまうのは火を見るより明らかです。

そんな飽和状態の中、せっかく頑張って立ち上げた自社オンラインセミナーを見つけて参加してもらい、ビジネスにつなげていくにはどうすればいいでしょうか。

また、いざオンラインセミナーを開催しようとしても、実作業としてどんなフローがあり、どんな手続きや準備が必要で、どこまで決めておかなければいけないのかわからない方、もしくは失敗した方は少なからずいらっしゃるでしょう。

そんな失敗や困りごとを、オンラインセミナーをうまくビジネスに活用している方々は実際どのように乗り越えていったのでしょうか。
その答えは、実務を担当した経験者が持っています!

そこで、「できるだけ予算はかけず」「準備~実施後の施策まで抜け漏れをなくし」「リード獲得やコンバージョン(売上)につなげるか」の時系列に沿って、実際にはどんな思いも寄らない問題が起きたか、そしてそれをどう解決したかなど、「経験者しか語れない」成功ノウハウをお伝えします。


ー<CONTENTS>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【企画編】 “参加したい”と思わせる中身と仕組みの考え方
テーマを決めるのが難しい…/続けていくうちにテーマがネタ切れ!/収支のバランスがとれてない…?/
誰に登壇してもらおうか/集中して見てもらえるか不安/そもそも参加してもらえるのだろうか/運用スタッフがまだまだ不慣れ

【環境構築編】 トラブルなく本番を迎えるために必要な事前準備
機材トラブルが心配…/チーム内で誰が何をやればいいの?/ケアレスミスが発生しそう/
人手が足りないけど大丈夫だろうか…/有償にしたけどクオリティに不安/会場をどこにしよう…

【集客編】 申し込んでもらう・視聴してもらうひと工夫
事前申し込みの要否に迷った!/告知のタイミングが難しい…/集客のためのハウスリストがない!/
申し込んでくれても当日の参加率が低い/フラインからの移行にどう対応する?/競争激化でリーチが伸びにくい…etc.

【配信編】 トラブル防止対策と満足度向上計画
本番中に予期せぬトラブル…/リハーサルはやっておくべき?/一方通行になっている気がする…/
編集を入れないと見てもらえない…/質問が殺到して回答漏れが発生!/コメントはどうやって受け付ける?…etc.

【アフターフォロー編】 開催した後、成果につなげるために
アーカイブでいいや」が多いけど…/イベントの成功って何だろう?/交流の場がなく名刺交換できない…/懇親会ができない穴をどう埋めよう/参加者はアプローチを求めているのか


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