VUI/VUXデザイナーに求められる力|WD ONLINE

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音声コミュニケーションを学ぶ

VUI/VUXデザイナーに求められる力 これから音声の世界を盛り上げていくのはどんな人?

WD ONLINE限定連載「音声コミュニケーションを学ぶ」。5回目(最終回)は「VUI/VUXデザイナーに求められる力」について。実際にVUI/VUXデザイナーとして日々の仕事に取り組む、株式会社Voicyの京谷実穂さんが教えてくれます。

本連載のこれまでの記事では、音声の可能性や音声市場の状況についてお伝えしてきました。音声市場が拡大していく中では、音声体験をいかにデザインするかが重要です。そして、その体験を設計できるデザイナーが活躍する時代が来るでしょう。

では、音声体験を設計できるデザイナー、すなわちVUI/VUXデザイナーには、どのような能力が必要になるでしょうか。ここでは、3つのスキルを紹介していきます。
 

1. 体験を設計できる「UXデザイナー」としてのスキル

すでにUXデザイナーと呼ばれる人々の活躍領域は拡大しています。 アプリやWebなどのデジタルプロダクトが主流となり、「UI/UX」という表記が生まれてからは最終的にユーザーに届く形が「GUI」であることが多く、一般的にUXデザイナーというと、GUIにおける体験デザインをする人が連想されるでしょう。

ただ、もともとUXデザイナーのスキルセットは「ユーザー体験」の設計に特化するものであり、最終的なデザインのアウトプットはGUIに限らず、ユーザーのコンテキストに沿ったものとなるはずです。それは物理的なプロダクトであったり、空間であったり、無形のサービスだったりしても良いのです。

今後音声アシスタントが流通してくると、ユーザーとの接点として「音声」を選択することも増えてくるはずです。まずはその結論を受け入れ、UXデザイナーとしてのスキルを音声の分野にも応用していく姿勢が大切になります。

2. 話し言葉のセンス

GUIのデザインでは、ユーザーに適切な情報を意図した印象で届けるために、ライティングやトンマナに気を配ります。 VUIも同様です。GUIにおける「ライティング」がVUIの世界では「話し言葉」に置き代わり、「トンマナ」が「声の質」や「言葉のニュアンス」になります。

サービスを設計する際にはどんな印象でユーザーに伝えたいのか、そのサービスのキャラクターを設定しておくと良いかもしれません。そしてそのキャラクターをイメージした語尾やニュアンスでシナリオをつくっていきます。

発せられた言葉がユーザーに届くときにどんな印象を与えられるのか。意識しながら多くの音声に触れて、言葉のセンスを磨くことが大切です。

3. 気を利かせる力

音声で情報を届けることを考えると、その特性から「心地よさ」も重要になってきます。GUIと異なり、端的に伝えるだけではなく、心地よくやりとりできるコミュニケーション設計が求められるでしょう。 「気が利く人」になりきって、リアル空間でのコミュニケーションで気をつけるようなことを、VUIの設計にも取り入れる必要があります。

例えば、音声アシスタントのアプリ起動時。ユーザーからの発話に応じる時もただ情報を伝えるだけでなく、「おはようございます」といった起動の時間帯に応じた挨拶を入れる、などです。

VUIでは特に、情報設計だけではなく、音声アシスタントと人との信頼関係をデザインすることが大切です。そのため「気が利く」という力がとても活きてきますね。

 

以上のスキルを備えたVUI/VUXデザイナーが多く登場することで、音声の世界がさらに盛り上がっていくと非常に嬉しく思います! 本連載は今回で終了しますが、「音声コミュニケーション」の分野に引き続きご注目いただければ幸いです!


京谷 実穂さん
2008年筑波大学芸術専門学群卒業後、2017年まで富士通デザイン株式会社で自社モバイル製品のデザイン開発、デザイン思考による新規事業開発に従事。2017年株式会社Voicyに4人目のメンバーとして参画。プロダクトのUI/ UXデザインに加えて、音声体験のデザイン(VUI/VUX)を手がける。
株式会社Voicy
「音声×テクノロジーでワクワクする社会をつくる」をコーポレートビジョンに掲げ、1)ボイスメディア「Voicy」の開発運営を行うボイスメディア事業、2)音声による企業のコミュニケーション課題の解決を行う音声ソリューション事業、3)IoT時代の未来の社会を担う音声インフラ事業を展開。音声と技術で人と情報のあり方を変えて、人々の生活をより豊かにすることを目指している。https://corp.voicy.jp