2019.11.18
音声コンテンツ市場の今とこれから
企業から顧客への音声を介したコミュニケーションを学んでいくWeb限定連載「音声コミュニケーションを学ぶ」。初回は、(株)Voicy代表・緒方 憲太郎さんに「音声コンテンツ市場の今とこれから」をお話しいただきます。
Voicy代表の緒方です。徐々に注目を集めている音声コンテンツですが、まず「市場は今どういう状況なの?」「本当に日本で盛り上がるの?」ということをお伝えしたいと思います。
市場の現状と可能性
総務省が出している『令和元年版情報通信白書』によると、2017年の日本における音声コンテンツ市場の規模は約7,500億円で、うち音楽が約5,400億円、ラジオが約2,000億円で、ネットオリジナルは約82億円でした。
いわゆる“ネット発”のコンテンツである「ネットオリジナル」は音声市場の1%強を占めるに過ぎませんが、これでも5年前の約2.5倍に成長しています。多くの人は「たったそれだけの市場」と見ると思いますが、僕は今後過去に例のないコンテンツ不足が起こるような、ものすごく可能性のある市場に見えています。
世の中の変化がどんどん激しくなり、忙しくなり、処理すべき情報があふれる中で、「ながら視聴」のニーズがどんどん高まっています。「メイクをしながら天気やニュースを確認する」「料理をしながら、育児のコツをインプットする」「通勤しながら、モチベーションを上げる」…こうしたニーズに対して、音声を介したコミュニケーションは最適なのです。
音楽もラジオも消費者の「耳」を押さえている点は共通しており、すでに、その市場がそれぞれ5,400億、2,000億の規模があるならば、ネットオリジナルの市場も数十倍に伸びる余地があるといえます。
市場における2つの変化
音声コンテンツ市場の今までの潮流を「1.0」「2.0」「3.0」と表した場合、1.0はラジオ、2.0はPodcastやオーディオブックが中心だったといえます。そして、現在は3.0の時代に入っていると考えており、2.0までと3.0の違いは大きく以下の2つです。
1. スマホからIoTヘ
2.0の市場は、スマートフォンを媒介としたコンテンツとして発達しました。3.0では、スマートスピーカー等の登場により、スマートフォンがなくともコンテンツへのアクセスが可能です。今後もIoT化によって、「スマートフォン依存度の低減」が進むでしょう。
スマートフォンは手と目を拘束しますが、IoT機器は手と目をフリーにします。そのため、消費者はより自然な日常の動作の中で音声コンテンツを視聴できます。結果、「ながら視聴」に最適化した消費スタイルを提供できるようになりました。
2. コンテンツ主体から発信者主体へ
2.0までの市場は、コンテンツが主体でした。ラジオ番組やPodcast、オーディオブックは配信する情報にこそ価値があります。一方、3.0では「誰が媒介するか」が面白みをつくり出します。
YouTuberと呼ばれる個人がそれぞれの魅力を表現している動画の分野では、その変化が先に起きていたといえるでしょう。従来のメディアであるテレビやラジオから、YouTubeに広告費をかけるケースが増えてきたのも面白い傾向だと思います。
これまで素人と言われていた人たちがパワーを持ち、同じモノを広告するにせよ「誰が媒介するか」で広告価値が大きく変わる時代です。今後、同様のことが、声に乗る感情の情報を介した音声市場でも起こると予想できます。
日本に先行する海外の動き
海外では、前述した「3.0」の拡がりが見えつつあります。アメリカと中国における状況を少しご紹介しましょう。
アメリカでは、Podcastが非常に伸び、10年ほど前まで人口の9%ほどだった利用者が、最新データでは24%まで伸びているといいます。配信を簡素化するアプリも登場して市場を席巻しました。スマートフォンだけでなくスマートスピーカーなどでも聴ける音楽配信サービス・Spotifyも勢いがあります。
中国では、音声配信サービスを運営するXimalayaという2017年設立のスタートアップ企業が評価額4,000億円とされるなど、ユニコーンになっています。
日本でも、質の高いコンテンツが集まることで「3.0」の消費文化がさらに形成され、結果として個人も企業も集まる巨大な市場ができてくるでしょう。我々Voicyもその市場を牽引するリーディングカンパニーを目指しています。ぜひ、みなさんも音声コンテンツ市場の今後に注目してみてください。
本連載では、マーケティングに活かす音声コミュニケーション、VUI/VUXデザインといったテーマを今後取り上げていく予定です。次回の公開予定は2020/1/20(月)。お楽しみに!