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いま、Web制作者に求められるものとは?(2) コロナショックとオンライン化する社会

私たちの生活に大きな影響を与えたコロナショック。ビジネスや働き方の変化に伴い、Webサイトに求められるものも変わってきています。Web制作会社の代表4人に、現状と今後をお聞きしました。その後編です。

中川直樹さん(写真:左上)
株式会社アンティー·ファクトリー 代表取締役。ADとしても活躍中。Web制作をメインに、映像、インタラクティブ、マーケティングまでワンストップで対応。 https://www.un-t.com/

志水哲也さん(写真:右上)
株式会社タービン·インタラクティブ 代表取締役。BtoBマーケティングを強力に支援する戦略型Web制作会社。名古屋·東京·宮古島に拠点があり、リモートワークも実績あり。 https://www.turbine.co.jp/

枌谷力さん(写真:左下)
株式会社ベイジ 代表。デザイナー。BtoBに特化したWeb制作会社として、直接クライアントと取引し戦略工程から参加することが多い。積極的な情報発信も注目されている。 https://baigie.me/

山口裕介さん(写真:右下)
株式会社リクト 代表取締役。福岡市にオフィスを構え、BtoCのスモールビジネスを中心に、プランニングからサイト制作、運用·改善までサポートする、地域密着型制作会社。https://www.lct.jp/

③Web制作会社のビジネス戦略

ネットがビジネスの基盤としてますます重要になる今後、Web制作会社が検討していきたい新しい仕事のあり方を聞きました。

 

WD:経済の停滞が心配される状況が続きますが、問い合わせの数や内容に変化はありましたか? またそれにどう対応していますか?

山口:5月の連休明けから相談の件数が増えていますね。うちはWebサイト制作後も長くお付き合いの続いている顧客が多いので、新規もありますが、既存の顧客からの相談が増えてきた印象です。

今回の中小企業向け特別貸付制度を活用して落ち込みをカバーする施策とか、新しい取り組みをしたいとか、今後の商流ごと考えたいなど、相談内容もこれまでに比べて複雑化している傾向です。ビジネスのどの部分でどうWebを活用するか、というところから話をしないとまとまらないイメージがあります。

中川:確かに、これまでは、ビジネスの「戦略」は企業が立て、我々は「戦術」の一つとしてWebの位置付けを考え「実行」する部分に携わっていたのですが、インターネットがビジネスのベースになる近年の流れが、この状況でより顕著になり、Web の専門家として戦略のところから入ってほしいと言われる案件が増えていると思います。

顧客コミュニケーション、販売手法、そもそも戦略の見直し、それを時間優先で一緒に考えたい、競合に遅れを取らないよう今すぐ手を打ちたいという切迫した状況が、前回ウェビナーをやった時以上に感じられるようになりました。

志水:そうですね、よりビジネスの現場に近いというか、Webを起点にした見込み客の獲得だったり、そこから営業につながる仕組みづくりといった観点での問い合わせはより加速していると感じています。

実は明日ウェビナーを開催するのですが、テーマはインサイドセールス。これがすごい人気です。

リモート勤務になって、従来の営業活動ができない状況では、WebサイトやMAを活用したコミュニケーションのデジタル化が急務になっているんですね。

ただ、これはコロナ以前から日本のBtoB企業の課題と言われていたことですよね。緊急性が高まったことで、ここから一気に動くと考えています。

WD:枌谷さんはどうですか?

枌谷:実はコロナの状況に関係なく、もともとWeb制作以外の柱をつくろうと昨年頃からずっと仕込みをしていたものがあって、それが今後の社会とも親和性が高そうなので、計画通り今年の後半から実施していく予定です。

WD:具体的にはどのような?

枌谷:数年前からやっていますが、まずは業務システムやSaaS のUX / UI デザイン領域です。コロナショックによって今後デジタル投資が加速すると考えられており、これまで以上に市場性があるビジネスだと思っています。

もう一つは、Web制作のパッケージ化ですね。例えばオウンドメディアやBtoBサイトをWordPressで作り込み、ロゴなどを変えてすぐに使える形にしたものですね。これに月額のオプションとして、コンサルサービスを提供することも考えられます。

あとは、オンラインサロンのような仕組みも考えています。そういう、予算に合わせてうちの得意な部分を切り取って使ってもらえるようなポートフォリオをつくりたいと思っています。

今までのWeb制作とは異なるビジネスモデルを、Web制作のスキルを転用して再構築することは、ちょうどやろうとしていたので、良いタイミングだと思い、加速させるつもりです。

志水:パッケージ化は私達も始めました。低価格にしようというアプローチではなく、求められているのがWebサイトそのものというより、それを含めたマーケティングからセールス全体の仕組みなので、そのインハウス化を効率的に進めて、ノウハウをお客様自身に獲得してもらうためのスターターパックのような位置づけです。

戦略策定から運用設計までは多くのコストと時間がかかり、私たちが対応できる案件数も限られてしまいます。

Webサイトや標準的なMAのセットアップをできる限りパッケージ化することで導入コストを小さくし、継続的な伴奏支援に予算を振り向けてもらう、いわゆるサブスクリプションモデルに近い形で提供しています。

WD:Web制作の意味やあり方も変わりますね。

山口:中小企業では世間のオンライン化に追いついていないケースも多くて、例えばWebサイトからSNSへ人を流していく設計をしても、企業側がSNSを使う準備ができていなかったりします。Webサイトだけの話では終わらず、その周辺も含めたフォローが重要だと、すごく感じています。なので私達は、この時期にさらに絆を深めて、相談してもらえる関係性を強化しています。

 

④そのとき、Web制作者に求められる役割とは

生活・経済とWebとが一層複雑に結びついていくこれからの社会、Web制作者に何ができるか、何をすべきなのか、聞きました。

 

WD:この数カ月の変化を経て、Web制作者にはこれからどんなことが求められるでしょうか? また、クライアントにどんな提案をしていくべきでしょうか?

枌谷:ちょっと大局的な話になりますけど、Web制作の性質は90年代、2000年代、2010年代で大きく変わってきています。

90年代は黎明期で、未熟だけどもいろいろなものが誕生した時代、'00年代は表現と技術の選択肢が一気に増えて、Flashが出てきたり、いま当たり前に使っているCMSやアクセス解析みたいなものが出てきた時代。'10年代はスマートフォンとソーシャルとUXで、ユーザー中心であることを再認識させられた10年間という感じがするんですね。

そう考えたとき、2020年代も、10年を一括にできるような、何らかの軸となる価値観が生まれてくると思うので、それにうまく対応しながらサービスを提供していけるといいのかなと思っています。

例えば、'00年代にFlashに強かった人は、'10年代はWebサイトをぐりぐり動かすのではなくて、アプリのゲームをつくるとか、UIのマイクロアニメーションをつくるとか、そういうノウハウの応用の仕方ができました。

今までのノウハウを応用できる領域は必ずあるはずなので、それを見付けてうまくアレンジすることが必要かなと。過去に固執はしないし、変わることを恐れない、でも過去を否定しすぎない。そんなバランスでやっていけると良いかなと思いました。

WD:なるほど、ニュートラルな姿勢でいたほうが変化と試行錯誤を乗り越えていけそうですね。

志水:今回の事態に限りませんが、Webは絶えずできること、求められることが変化したり、分化してきた業界だと思います。こうでなくてはならない、という正解はないと思いますが、私は、お客様の成功を、我々の持てるノウハウや技術を使ってどう実現するか、というのが根本的な話だと思っています。

Webサイトを使って、データベースを使って、チャットボットを使って、ソーシャルを使って、そうした我々が仕事にしている領域のノウハウを駆使してお客様をどう成功させられるか。特にこのタイミングでは、皆さんが苦しい状態から立ち上がって、これまで通りビジネスができる状態をつくることが我々の仕事だと思うんです。

私たち自身が大変だと言っている場合ではなくて、お客さんが大変なんだから、なんとかして差し上げられるのは我々だ、という意気込みで臨んでほしいと、この業界のみなさんにお願いしたいと思います。

山口:私も、変化に対する柔軟な姿勢は必要だと思います。Webサイトのあり方、役割を考え直す良い機会なので、世の中の変化に対して、ビジネスモデルやキャッシュポイントをクライアントと一緒に考えていくことが必要ですね。

例えば、暮らしの変化や経済不安から生活必需品の線引きが変わっていくかもしれません。クライアントの商品の購入優先順位が下がったとしたら、訴求ポイントを見直す必要も出てきます。

BtoBをBtoCに転換したり、ノウハウを売っていくなど、いままでの経験も必要ですけど、単純な延長ではない部分があるので、常識を疑って柔軟に変化するビジネスを一緒につくる支援をしていきたいと思います。

WD:クライアントのビジネスをより深く理解して、事業に資する提案が必要になるということですね。

中川:いまの状況が収まっても、またぶり返して社会全体が外出自粛、リモートワーク状態に戻る可能性もあります。顧客コミュニケーション・販売・売上げに様々なチャネルから少ないステップで到達できるD2C 的な提案をすることは大切です。いま、まさに「O2OからOMOへ」が自分の中でキーワードになっていて、あらゆる顧客との接点をオンライン、オフライン問わず統合していくことを考える必要があると思っています。

同じく、ブランディングも非常に重要になると思います。家に篭る時間が長くなることで人々のWeb 滞在時間が延び、より多くの情報に触れ、厳しくなるであろう経済状況含め、きちんとした良いものを選ぶ必然性が出てきているので、顧客との信頼関係を築き強固にするブランディング施策も必要です。

最後に、みなさんのお話にも度々出ていたように、あらゆるビジネスでWeb がメインストリームになっているいま、我々はWebやマーケティングのスペシャリストとして、企業にとってのビジネスのあり方、Webの戦略的使い方、ノウハウをクライアントへ提供していくことが大切で、時には教育することも提案であり、我々にとってビジネスになる部分だと考えています。

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4月のウェビナーで語られた、働き方の現状、ビジネスのフルオンライン化やそれに伴う顧客獲得手段の変化。約1カ月を経て、対応手段や今後の取り組みがより具体的になりました

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