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ECサイト業界研究 Web Designing 2019年8月号

ECの動画 ライブコマース

「ライブコマース」は3年ほど前から話題になり、最近になって売上がかなりの勢いで伸びてきており、サービスも増えてきています。今回は、ライブコマースで売上を伸ばしてきているCandeeにお話をお聞きしました。

売り手も買い手も熱くなるEC手法

ライブ動画を配信し、視聴者はリアルタイムに質問やコメントをしながら商品を購入できる「ライブコマース」が盛り上がっています。この状況について(株)Candeeの上席執行役員の鍛治良紀さん(01)は、「ブランドよりもファンとのコミュニケーションを楽しんでいること。これが結果的に売上を伸ばしてきている」と言います。

今までは、インフルエンサーの女性がライブコマースで売上を上げてくると自分のブランドをつくりたくなり、それをさまざまな企業やサイトが取り上げて売上を立てるという流れが大きかったと思われます。しかし最近は、番組を通じたファンとの交流がとても楽しくなって、ファンに対してブランドを説明するよりも、ファンに対してよいと思っている商品をつくったり、買い付けすることでよりよいコミュニティが生まれてきています。

ある声優の方はコミュニティで24時間カートを開いて数百万円を売り上げ、あるインフルエンサーはInstagramで告知することで、ライブ中は1日1万人以上の視聴があってもちろん売上も伸びています。また、あるセレクトショップには熱いファンが多く、ライブコマースの早い時間に即完売してしまうとのことです。

ファンとの対話が多くなってくると、例えば「メンズもやってよ」という声に応えて新商品を販売したり、ブランド発表をInstagramで告知して「ライブコマースで新発表!」とすると、ファンから「おめでとう!」「とても気になる!」などたくさんの声が届き、インフルエンサー側もモチベーションが高まり、ファンをもっと大切にしたいと思ってきます。従来ならブランド発表はニュースとしてリリースしてマスコミに取り上げられることを狙うのですが、最初にファンへ伝えるという点が大きく違ってきています。

ブランドストーリーをゼロからつくり上げる「ゼロからの創世記」をファンと一緒に育て、立ち上げから新作発表を行い熱量高く、先行受注を行う方法はとても参考になります。

ライブコマースのよいところは「自分に似合うのか?」「サイズはどうか?」などといった疑問点、不明点をコメントして、その回答がすぐにしてもらえることです。ライブコマースはまさしく双方向で、熱量が高くなるECの手法といってよいでしょう。

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01_株式会社Candee
今回お話をうかがった(株)Candeeは動画・番組制作からPRまで一手に引き受けるデジタルマーケティング企業。動画マーケティング支援、LIVE & COMMERCE、VTuber専用ライブ配信コミュニティサービス「Colon:」の運営を手がけています。写真はお話をうかがった上席執行役員の鍛治良紀さん

 

動画ECの課題

Candeeには、このライブコマースを企業に無料で貸出すプラットフォームがあります。あるアパレルブランドでは自社の販売スタッフがたった1台のスマホでライブコマースを行っています。自社で商品登録し、自社のスタッフが説明して販売するという新しいスタイルです。無料かつスマホ1台だけで自社のスタッフが販売できるというのは凄いことですね!

このような業界の流れには、「ECでの動画活用」においての現状と、それに伴う課題があります。

❶「マスメディア露出×ヒット商品」という法則の実感がなくなってきた
❷流行りのインフルエンサー施策やってみたが効果が出ない
❸SNSから集計した効果測定が明確でない
❹本質的な費用対効果を計測できていない
❺ブランドから発信する情報をユーザーにうまく伝えられていない
❻費用対効果の側面から、動画プロモーションへの抵抗がある

動画制作には多少でも費用がかかることもあり、この6点の課題などでWeb動画施策をすぐに実施することに二の足を踏んでしまう企業側の心理はとてもわかります。

Candeeではこのような課題からライブコマースを通し「新しい信頼関係の構築と価値購入体験を提供する」をコンセプトに、「ライブ配信中にその場で簡単に販売ができる」「出演者と視聴者がコメント欄を通じてコミュニケーションできる参加型番組」「視聴者アンケートや抽選販売などリアルタイムで楽しめる参加型番組」を実現するサービス「Live Shop!」(02)を運営しています。

Live Shop!ではブランドをつくりたいインフルエンサーが参加し、実際にいくつかのブランドが生まれたのですが、まさに今、出演者と視聴者がコメント欄やいいね!代わりのハートを通じてコミュニケーションできるところが盛り上がっています。とはいっても薦めてくれる商品やサービスがマッチしてなければ話になりません。紹介してくれる「人」と商品との関係性が大事だといえます。つまり今は、1対nの関係から1対1が大事になってきます。

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02_Live Shop!
ライブ配信中に商品を購入できるライブコマースサービス「Live Shop!」。アプリ版とブラウザ版が用意されています。発信者は、今までのような自撮りではなく、専用スタジオでプロのスタッフがカメラワークやスイッチングなどを担当し、個人では難しいハイクオリティな番組を配信できるのが特徴です

 

発信者と相性の良い商品とは

例えば、図03でみると有名なタレントがオリジナル商品を販売すると成功する確率が高いのですが、インフルエンサーがいきなりオリジナル商品を販売してもなかなか売上をつくることはできません。

インフルエンサーが最初に売上をつくることができるのは既存商品からで、インフルエンサーとして育ってくると買い付け商品が売れるようになり、さらにファンが付いてくるようになるとオリジナルのブランドや商品が売れることになります。要するにインフルエンサーがノウハウを身につけることや、育成に力を入れる企業が必要になっています。このことは、主従関係なのか、応援関係なのかが大事であり、お互いの承認欲求が満たされるかどうかになってきます。

売れているインフルエンサーはファンをどこから集客してくるかが大切です。アイテムによりますが、活動しているフィールドやファンがどこで活動しているかによります。例えば、AKB48や乃木坂46などのファン向けでしたらTwitterがよいですし、かわいいアパレルやアクセサリーといったファッション関係でしたらInstagramがよいということになります。ここでフォロワーをどのくらい掴み、エンゲージメントを得るかが重要となります。

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03_成功する組み合わせ
左が発信する人で、右が取り扱う商品を指します。タレントなど世間に名が通っている人だと発信力が強く、商品自体に認知が低いオリジナル商品などは訴求できます。また、買い付け商品ならインフルエンサー、既存商品ならショップスタッフと相性がいいです

 

ライブはコミュニケーション

TVCMやTV番組をつくっていた私としては、どうしても映像のつくり手としてのクリエイティブさを追い求めてしまいます。しかし、ライブ動画というのは、映像のクリエイティブやメッセージ性よりもコミュニケーションがとても大事であるということがわかります。例えば、「スマホは電話ではなくコミュニケーションツール」と言われるように、今までの「動画」のイメージではなく、ライブ動画はコミュニケーションのツールといえます。

成長するインフルエンサーは買い付けしてきて、モノとの関係性もできてくると目利きができるようになり、得意性が出てきます。こうなるとインフルエンサーのモチベーションも高くなってきて、ファンとの交流でコミュニティができて売上もつくることができてきます。ライブで上がってくるコメントとその回答がまさしくブランドをつくっていると感じます。

コミュニティではファンとの対話が多くなってきますが、うまく回っているコミュニティはインフルエンサーに対して「尊敬」があり、大切な友達や家族と話をしている感じを受けます。誹謗中傷するファンがいるのではなく、大事な人に自分が良いなと思っている商品やサービスを贈っているイメージです。

 

まずはやってみる!

ライブコマースはまずやってみることが大事であり、さらに回数を重ねてノウハウを取得していくことが必要だということです。ライブコマースで使った動画をブランドサイト側で流用してみると、最初は滞在時間が5秒程度だったのが、30秒、1分と伸びていくことがすでにわかっています。このことは動画をつくることからコミュニケーション動画が必要になっているといえます。また、滞在時間が伸びるとコンバージョンが高くなりますので、このノウハウを使って成功体験が多くなっているブランドやアパレル企業がすでに出てきています。

このようなことから、いろいろ社内のガバナンスもあるとは思いますが、まずはやってみるのが大事です。Candeeではプラットフォームを無料で貸出していますので、商品登録やスマホ1台での撮影、自社販売スタッフで販売するのであればほぼ費用なしでライブコマースができます(04)。負担がほぼないなら、やらない手はないですよね。

ライブ配信をリアルでやって、コメントが届き、それに応える、そしてファンが増えていく、さらにその動画を2次利用していく。鍛治さん曰く、実は熱量の高い時の売上も多いが、アーカイブされた後も売上が上がるそうです。ECの動画活用は明らかに違うステータスになってきたと感じます。

今後、DtoC(Direct to Consumer)が流行り、小売店など中間業者を介さず直接ブランドやメーカーが販売するスタイルが増えていくと思われます。多様性が今後進んでいきますから、どこかのブランド1強が根こそぎ持っていくというより、たくさんのブランドが立ち上がってきて、ファンもいろんなコミュニティに参加し、売れる商品にも多様性が生まれるでしょう。

動画を有効活用できるECソリューションとして、ライブコマースは今後ますます使用されると考えられます。JECCICAでもInstagramで活躍しているインフルエンサーとJECCICAライブと称してライブ動画を配信したのですが、ライブ中のコミュニケーションがとても楽しくて今のテレビとは違う経験が得られました。登壇してくれたインフルエンサーのファンになってしまったといっても過言ではありません。これからさらにノウハウがたまり、ライブで販売することが普通になってきそうです。私はライブコマースのよさとECのテクノロジーがうまく調和するとよいなと考えています。

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04_多種類の企業が集まるプラットフォーム
Live Shop!は無料のプラットフォームで、アパレル企業やメーカー、小売業まで誰でもライブ番組を持つことができます。顧客は1つのブランドに集まるよりも、さまざまなコミュニティに参加し、商品に触れる機会が増えると考えられます

 

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Text:川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/

掲載号

Web Designing 2019年8月号

Web Designing 2019年8月号

2019年6月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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「つくるだけ」では役に立たない!

Web動画を課題解決につなげる
必勝方程式

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数年前より、Webマーケティング界隈では動画を使った施策が主流となってきました。
主要SNSプラットフォームも軒並み動画への動きを活発化させ、
インスタグラムストーリーやFacebook LIVE、TikTokなどさまざまなサービスが登場しており、
「動画は当たり前」という状況はますます加速しています。

これまでは「動画をつくる」ということに関してお金と時間、人手がかかり大きな障壁となっていましたが、
今ではスマホ1つで撮影でき、動画制作が手軽にできるツールも揃ってきました。
これで動画を使ってWebビジネスができる!…ちょっと待った!大事なことを忘れていませんか?

その動画、どう使ったらビジネスの課題解決に役立ちますか?
「動画をつくる」だけでは儲かりません。
それを本来の自分たちのビジネスの目的や課題(集客、商品売り上げUPなど)に結びつけて初めて意味があります。

せっかくつくった動画をどのプラットフォームに公開したらいいか、
動画を視聴した人にどんなアプローチをすれば購入まで誘えるか、
動画視聴者の動向をどんな数字を見て、どのように判断すればいいか…。

本特集では、せっかくつくった動画を120%ビジネスの結果に結びつけるために必要な考え方、
すべきことなどを系統立てて整理しました。

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集客や販売促進といった「外向け」の動画活用から、採用、研修、インナーブランディングといった「内向け」の
動画の効果的な活用法まで網羅!
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【本号を読むメリット】
・動画を使った効果的な取り組みや戦略の立て方がわかる
・「動画をつくる」「動画を活用する」「動画を運用する」それぞれの目的で効果的な知見を得られる
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【こんな方にオススメ】
■動画を作成したけどイマイチ期待する結果が出ていない企業Web担当者
■動最近話題の動画系サービスをマネタイズにつなげたい企業担当者
■動画作成は得意だけど、それを効果的に活用する施策提案までできるようになりたい制作会社
■動画施策を提案したいけど、決裁者に費用対効果がうまく説明できない担当者

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