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特集一覧 Web Designing 2019年4月号

具体例で学ぶCMSの選び方 「運用」や「保守」を意識した選択を

ここからは、具体的なシチュエーションを提示しながら、CMSの選び方や予算の目安について解説します。引き続き、CMSの導入案件を多数手がけている(株)アリウープの田島邦彦さんに話を聞きました。

具体例を手がかかりにCMS選びのコツをつかむ

私たちアリウープはマルチベンダーですので、CMSの導入が決まった案件には、クライアントの状況にあったCMSを、各種の要件や予算、品質を念頭に置きながら精査します。クライアントが抱える課題を最善な形で解消できるCMSを選定していくわけです。

選定の岐路の1つには、無償か商用かの選択があります。WordPress(以下WP)などオープンソースはライセンスが無償なので、コスト面の導入障壁が低い一方で、運用やセキュリティ、サポートなどの保守も含めると、トータルのハードルは低くはないことが見えてきます。導入や運用、保守と、それらに関わる人件費もCMS選びには欠かせません。社内でCMSに精通する人材がいるのか、社外パートナーを求めるならその分の予算確保が可能なのか。これらもCMS選びの判断基準です(01)。

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01 CMS選定の導き方
CMSの決め手は、課題への対応能力と、要件定義や予算、品質のハードルを越えていることです

実際は課題ごとに多種多様ですので、“こういう時にはこのCMS”といった断定的な言い方はできませんが、選定時の目安の1つとなるように、具体例を通じてCMS選定の判断方法を紹介します。厳密には社内だけでの判断か、外部に相談相手を求めるかでも変わりますが、大枠の考え方の参考になるでしょう。「今抱えている課題」を克服できるCMS選び、という視点で読んでください。

 

さまざまな人が触れる場合商用CMSが選択肢になりやすい

最初のケースとして、「規模が大きい企業/組織で、複数の部署が運用しながら、複数のWebサイトのページ作成をする場合」を考えます(02)。

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02 複数部門、複数サイトの統括に向くCMSの選び方
ここでは複数部門や複数サイトを統括し管理できるハブになれるCMSを選びたいところ。権限設定などを含めた管理機能に優れ、さまざまなユーザーを支える豊富な機能の搭載が基準になります

この場合、1つのCMSで複数サイトを効率的に管理できることが条件になります。さらに、生産性が高い状態に保てるように、ワークフローを細かく設定できることも求められるので、もともと備わっている機能が豊富な商用CMSのどれかが、最有力候補となります。

関わる部署が複数という点もネックです。関わる部署が増えるほど、部署ごとでの管理が問われます。各部署でCMSに関わる人数が複数いればいるほど、Webリテラシーのばらつきが出ることを勘案すれば、あまりリテラシーが高くない人たちでも迷わないUXを担保するべきでしょう。“いかにも”という複雑な管理画面だと、運用が滞る人たちが出ることがあるからです。細かな設計内容は、各部署へのヒアリングや希望機能の内容を参照するほかに、汲み上げてきた内容が本当に必要な内容なのかも判断しながら、取りまとめていくこととなります。

部署内の管理も細かく対応できるように、権限設定もきちんとしたいですし、もしレギュレーションとしてリモートワークにもGoサインを出すとなると、規模感と複雑な構成の管理に耐えられるCMSが望ましくなります。そうなると、オープンソースよりも管理機能が優れた商用CMSで、豊富な機能を搭載したパッケージを選ぶのが現実的です。さまざまな人が操作する可能性があるのなら、利便性を追求している機能がいかにデフォルトで搭載されているか、もCMS選びの基準になります。

このケースはさまざまな属性の人たちが触れる可能性が高いだけに、WPだと、管理画面のUIをカスタマイズしてもある程度の限界があり、そもそもフルカスタマイズを前提にした開発となるため、費用が膨らみそうです。かなり大量のページボリュームになることも予想され、あまりオススメはできません。

 

データベースのフル活用なら動的CMSの選択が可能

次に、「ユーザーごとでコンテンツを出し分けたい場合」を考えます。この課題に応えるには、アクセス履歴などユーザー情報を扱えるCMSが求められます(03)。03のような要望に対応するには、動的CMSが適しています。

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03 ユーザーごとでコンテンツを出し分けたい場合のCMS
各ユーザーの情報(アクセスログや属性などの情報)にあわせたコンテンツを表示する場合は、動的CMSが向いています。あとは使いたい機能の有無と予算が選定の手がかりになります

動的CMSとは、ユーザーのアクセスごとに各ユーザーにあわせたコンテンツの表示(=コンテンツの出し分け)ができるCMSのことです。さらに数多くのデータを扱うならば、セキュリティなど保守をきちんと組み込んでいる商用CMSの中から、必要とする機能が搭載されている(or 必要な機能をカスタマイズで搭載しやすい)、より適したCMSを見つけていきましょう。

動的CMSといえばWPもそうなります。WPの場合は、社内体制が整っていたり、社外パートナーと一緒に運用体制が組めるならば、選択肢の1つとなるでしょう。ただし、一定以上のアクセス数が見込まれるなら、もともとカスタマイズの必要があるケースですし、サーバ負荷への対応も含めて保守のコストも考えると、無理して選ぶべきではないでしょう。

そのほか、膨大な製品の検索に対応できるWebサイトをつくりたいという場合も、このケースと同様の判断で動的CMSを優先、となります。

静的CMSを選ぶと、どうなるでしょうか? 静的CMSは、静的ページ(HTMLファイル)を生成するCMSで、サーバ負荷が少ないという利点がありますが、データベースを背景にしたい今回の課題には向いていません。静的CMSで03に対応したいなら、導入したCMSとは別に、コンテンツを出し分けるための動的対応が求められるので、そのための開発費が生じてきます。実装中のCMSが静的で、同一CMSでの対応を求められるような事情でもなければ、このケースでは動的CMSの採用が無難です。

 

コストをかけず即公開希望なら、オープンソース系CMSが◎

身近に感じられる例として、「あまりコストをかけずに、スピーディにWebサイト公開したい場合」についても考えておきます。この場合は、WPをはじめとしたオープンソース系CMSが最有力となります。

WPを選択する強みは、ライセンスが無償で初期コストを抑制しやすいことや、国内だけでも非常に数多く普及しているCMSですので、制作できるデジタルプロダクションが数多く存在することです。

例えば、全体を統括するメーカーのWebサイトとは別に、メーカーの最新商品を単独でWebサイト展開したい場合、WPならコストやスケジュールが読みやすいです。初期段階で100ページ以下のボリューム、かつサテライトページの位置づけであれば、開発スピードが計算しやすいWPがもっとも無難ですし、足りない機能は状況にあわせてその都度カスタマイズするといいでしょう。対応できる制作会社も多いでしょう。

オープンソースだと、商用CMSと違ってセキュリティやサポートの心配が尽きませんが、WPだと社外パートナーを探しやすいですし、社内に精通したエキスパートがいて、大きな規模感でなければ、自前運用を前提にした構築も現実的です。むしろ、CMS選びに迷って公開タイミングが遅れてしまえば、機会損失にもなりかねません(04)。

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04 低予算、進行(納品)優先案件に向くCMSの条件
十分な予算がなく、特急対応が求められる場合、ライセンスが無償で取り組みやすいオープンソース系CMSが有力な選択肢になります

別提案の可能性としては、同じオープンソースでDrupal(ドルーパル)を勧める場合があります。WPより初期実装の時点で使いやすく、カスタマイズしやすいメリットがあるからです。ただし、開発できるWebプロダクションが限られるため、開発費がかさみやすくなります。また、WPよりスペックが豊富な分、シンプルな構造のWebサイトとなるほど、オーバースペックになります。その場合はDrupalは不向きでしょう。

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掲載号

Web Designing 2019年4月号

Web Designing 2019年4月号

2019年2月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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Webビジネスの成否に直結する!

CMS 2.0
新時代の常識

顧客との接点やエンゲージメントを高めるために必須のWebサイト。
その基盤となるCMSを、予算や自社都合だけで選んでいませんか?


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今や企業サイトの6割以上がCMS(コンテンツ管理システム)を導入していると言われています。
専門知識がなくてもサイトの更新や管理ができるのが特長のCMSですが、
これをただの「サイト運用ツール」だと思っているなら、
それは大きな機会損失を招いている可能性があります。

顧客へ認知やエンゲージを高めるために必須であるWebサイト、
そのコンテンツを有効に活用するための基盤となるCMSは、
今後のWebビジネスの勝敗を左右する大事なポイントなのです。
さらに、今あるサイト運用上のさまざまな課題も、
CMSを理解することで解消されるのです!


また、現在CMSと呼ばれるものは3,000以上存在しています。
中には業界や用途に特化したものもさまざまです。
そんなCMS、予算や担当部署の都合だけで簡単に選んでいませんか?

では、CMSをビジネスの基盤とし、武器として120%活用するためにはどんなことを考え、
どんな準備や選考基準が必要でしょうか。
そして、限られたリソースや少ないコストで成果を出すにはどうすればいいのでしょうか。



Web Designing 4月号(2月18日発売)では、
新規Webビジネスを立ち上げる際、どんなCMSを選べばいいか、今やりたいことを実現させるために
CMSを乗り換えるならどうすればいいか、既存のCMSをもっと活かすにはどうすればいいかなど、
もはやWebビジネスに欠かすことができないCMSの
これからの活かし方や課題の解決方法をさまざまなシチュエーションに立って解説します。


【対象読者&課題】
■とりあえず無料のCMSにしてみたものの、実際の運用にさまざまな課題が出てきた
■現在自社に導入されているCMSでは、やりたい新規Webビジネスが思うように実現できそうにない
■運用の使い勝手がいいCMSが知りたい
■予算は少ないが、企業サイトだけに素人が適当に作るのは抵抗がある
■CMS構築及びWebサイト制作、そしてその後の運用まで信頼できるパートナーを見つけたい
■「自社で簡単に作れる」という触れ込みを鵜呑みにした結果、現場が混乱&疲弊している


【予定内容】
●CMSこそがWebビジネスの勝敗を左右する

●CHAPTER1 CMSを“知る”
  01_CMSの定義や仕組みを知る
機能の違いやトレンド
02_WordPressが選ばれる理由と利用時の注意点
機能性、開発力で課題を解決
03_CMS導入がもたらすビジネスメリット
投稿の質と働き方を向上

●CHAPTER2 CMSを“選ぶ”
   01_ビジネス最適化につながるCMS選びのための準備
決め手は、選ぶ前の準備作業
02_具体例で学ぶCMSの選び方
「運用」や「保守」を意識した選択

【 CMSとセキュリティ 】 Web制作のプロが教える~CMSとセキュリティ“9つ”の金言
【 編集部が厳選! 】企業サイト・メディアで安心して使える商用CMS 17選!
【 Column 】 管理画面を変えたUXデザイン
【 Column 】 Webサイトのセキュリティのために~知っておきたいハッカーのこと

●CHAPTER3 CMSを“運用/活用する”
01_中長期的に考えるCMSの運用と体制づくり 
持ち腐れにしない、積極的な活用を!
02_これからの新常識は「CMSマーケティング」だ! 
まだWebサイトの更新にしか使ってないの?

【 CaseStudy 】 CMSで実現したリード獲得と新たな営業フロー/「Hint Clip」 共同印刷

ほか

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