2019.02.26
CMSの見直しでWeb品質と業務・組織を改善せよ! Webを支える影の立役者その重要性、正しく理解できていますか?
HTMLやCSSがわからずとも、Webサイトの構築や運用、管理ができるシステムである「CMS」。読者の多くも、ブログやオウンドメディアの、さらにはWebサイトの更新や管理にCMSを活用していることでしょう。実はこのCMS選びが企業のWeb全体の品質を大きく左右すると話すのが、ミツエーリンクスの榛葉裕幸さんです。榛葉さんはCMSを適切に選択することができれば、ユーザーから見た時のWebの品質を大きく向上させるだけでなく、企業が抱えるWebにまつわる深い問題を解決することができると言うのです。そこで、ここからはなぜCMSを見直す必要があるのか、というその理由と、見直しの際に生じると予想される障壁についてとその越え方、そして正しいCMSの選び方に至るまでを榛葉さんにじっくりと解説してもらうことにしました。本特集の導入編として、まずはそのお話にじっくりと耳を傾けてみることにしましょう!
Illustration: 高橋美紀
[1]CMSをテキトーに選ぶと大変なことになる?
CMSは企業が業務として組織的にWebを活用するためのITシステムなのですが、なぜか業務システムという意識が低いことが多いのです。そうしたCMSに対する認識をあらため、きちんと向きあうことが大切です。
目指すは“CMS意識高い系”
この1、2年のことでしょうか。お客様と接する際に強く感じることがあるんです。それはWeb施策がうまくいってる企業は決まって「CMSに対する意識が高い」ということなんです。SNSにオウンドメディア、さらには広告、SEOと、手がけるべきことが多数ある中で、バックステージ的な存在と言えるCMSにも気を配っている企業は、きちんとした目を持っていると言えるからです。
「えっ、そんなにCMSって大事なの?」…そんな風に感じる方も多いかもしれませんが、もちろん大事です。CMSを適当に選んだり、ろくにメンテナンスをせずに放っておいたりすると、お客様に適したサービスや情報を提供する機会を失ってしまったり、深刻なセキュリティ問題を引き起こしたりと、Web全体の品質に関わる、大きな問題を引き起こしかねません。情報漏洩の原因を探ってみたら、メンテナンスを怠っていたCMSだった、といったケースもあるのです。
しかし、CMSはその裏舞台、バックステージ的な性質もあって、深く考えることなく選ばれたり、自社のマーケティングの目的や規模と合致しないまま、見直されることなく放置されたりといったケースが多いというのが現状なのです。
ここからは、そんなCMSに目を向け、課題を見つけ出し、手を入れるためのノウハウを紹介していきたいと思います。
[2]今のCMSは自社にマッチしている? まずはその評価をしてみよう
CMSで高い人気を誇っているWordPress。「タダで利用できるから」「他も利用しているから」と安易に選択されるケースも少なくないようですが、ライセンス以外で気づいていないコストが発生していることもあります。まずは運用保守を含めたライフサイクルコスト全体で評価することが大切です。
“タダだからWordPress”ですか?
「CMS」とひとくちに言っても、その種類は実にさまざまです。ライセンス形態でいえば、無償で利用可能なオープンソースのものから、ライセンス費だけで数千万もかかるような商用製品を利用しているところもあります。また、ECパッケージのように使用目的のはっきりとした、専門性の高い製品がCMSと呼称されることもあります。そうしたさまざまなCMSの中で、もっとも大きなシェアを誇るのが皆さんもよくご存知の「WordPress」です。「タダで使うこともできる」からか、現状では世界のおよそ6割のCMSがWordPressだというデータもあるくらいです(右グラフ)。
最近はだいぶ減ってきたように思いますが、中には「他の会社も使っているから」「コストが抑えられるから」といった理由で、深く考えることもなく、WordPressを選んでいる企業も、まだまだあるようです。実は、そうした選択の仕方が、大きな問題を生むことがあるのです。
勘違いをしないでいただきたいのですが、WordPressが悪いと言っているのではありません。使いどころや使い方を間違えなければ、優れたCMSです。ただし、素のままのコミュニティ版を利用する場合、アクセス数やコンテンツ数が多いサイトで使用すると反応速度が遅くなったり、頻繁に行われるアップデートにしっかりと対処する必要があるなど、スムーズに運用するために、それなりのスキルとシステム運用・保守体制が要求されるCMSでもあります。また、プラグインを使えば機能を拡張することができるのですが、その場合、お金も手間暇もかかるようになり、Web担当者だけで対応するのは難しくなってしまうケースもあります。ちなみに海外のようにWordPressをエンタープライズサポート付きで利用していればいいのですが、日本では「無料」という点に惹かれて利用されることが多いために、問題が起きがちなのです。
このように、自分たちの運用体制や技術レベルにマッチしないCMSを使用していると、Web品質の低下を招き、顧客を手放すといった事態を招きかねません。それを避けるためには、身の丈にあったCMSを使用する必要があるのです。
「あう・あわない」の見分け方
では、今使っているCMSが自社にあっているのかは、どう判断すればいいのでしょうか。ここでは、そのための3つの視点を紹介します。
(1)業務にマッチしているか 今のCMSは、マーケティングの目的を達成するために適したものか。また、運用体制(人数やレベル)にあっているか。
(2)規模感に問題はないか 利用しているユーザー数(訪問者数)に適したものか。また、コンテンツの数に比して貧弱ではないか。
(3)ホスティング環境や運用・保守体制は適当か 使用しているCMSやサーバOS、ミドルウェアは常に最新バージョンにアップデートされているか。サーバの性能は十分か。運用に問題が生じているようなことはないか。
こうした視点から、一つでもマッチしていない点があるなら、CMS見直しの必要があると考えるべきでしょう。また現状では問題がなくとも、近い将来、業務の大幅な展開を検討していたり、ユーザー数の増加が予想される場合には、それを見越した検討が必要となります。
このように、まずは今使っているCMSを冷静に評価するところから始めるのがいいでしょう。