角落ちは飛車落ちより大変?代表的な定跡である下手矢倉定跡を詳しく解説!|将棋情報局

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角落ちは飛車落ちより大変?代表的な定跡である下手矢倉定跡を詳しく解説!

角落ちは上手に飛車という最強の駒があるので、積極的に攻めてくることもしばしばです。
激しい攻め合いの展開も多く、寄せ合いの速度計算をしっかりしなければいけません。
そこで今回は、角落ちの定跡を、動く盤面を使いながら解説します。
初心者の方でも分かりやすく学べる内容になっています。

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皆さんこんにちは。

本記事では、「駒落ち」の指し方をご紹介します。
詳しくは、2023年4月24日に発売の『【新装版】駒落ち定跡』(所司和晴)にも載っていますので、チェックしてみてくださいね。

※本稿は、所司和晴著『【新装版】駒落ち定跡』の内容をもとに編集部が再構成したものです。
 
目次
1 角落ちとは?
2 角落ちの定跡を見てみよう
3 定跡を詳しく解説!
 3-1 △8五歩を決める形-初手~10手目まで-
 3-2 早く上部を厚くする-11手目~18手目まで-
 3-3 上手、金を繰り出す-19手目~29手目まで-
 3-4 下手、ようやく飛車先を突く-30手目~34手目まで-
 3-5 中央を厚くする▲4七銀-35手目~45手目まで-
 3-6 下手入城、決戦迫る-46手目~55手目まで-
 3-7 ▲3七桂を省いて仕掛ける-56手目~62手目まで-
 3-8 △6五歩は相手にしない-63手目~68手目まで-
 3-9 下手、激しく攻め立てる-69手目~74手目まで-
 3-10 歩頭の銀捨て▲4五銀-75手目~80手目まで-
 3-11 ▲3三歩からしつこく攻める-81手目~90手目まで-
 3-12 手順の寄せで下手勝勢-91手目~100手目まで-
4 駒落ち定跡を体系的に学ぶならこの本がおすすめ

角落ちとは?


2人の棋力に差があるときに、ハンディとして使う駒を減らす(落とす)ことがあります。
使う駒を減らす方(将棋が強い方)を上手(うわて)、全部の駒を使って指す方(将棋が弱い方)を下手(したて)と言います。
角落ちは上手が角を落とした手合いです。

飛車落ちと違い上手に飛車という最強の駒があるので、積極的に攻めてくることもしばしばです。
そこで下手は受けの力もかなり必要になってきます。
また、激しい攻め合いの展開も多く、寄せ合いの速度計算をしっかりしなければいけません。
やはり飛車落ちより大変な手合い割と言えるでしょう。

角落ちの定跡を見てみよう


まずは今回解説する定跡を最初から最後まで見ていきましょう。
理解を深めるため、定跡通りに動く盤面を用意しました。
どのようにして下手が上手玉を追い詰めるのか、華麗な手順をご覧ください。


定跡を詳しく解説


ここからは先ほどの定跡を細かく分け、各局面の手の意味を解説していきます。
先ほど同様、動く盤面を使いながら読み進めてください。
また、定跡とは別の手を指されたときはどうすればいいのか(変化手順)も解説しています。
変化手順も動く盤面に反映させていますので、必要に応じて使ってみてくださいね。

△8五歩を決める形-初手~10手目まで-



上手の初手△8四歩に▲7六歩は飛車先の歩を切らせないためにも当然の一手。
互いに飛車先を突くと下手だけ角がある分、かえって負担になります。

上手は△8五歩を決めました。
この手を保留して別の手を指してきた場合、下手は▲7八銀から▲7七銀と上がるのが良いでしょう。
以下▲7八玉型の早囲いや将来2、3筋の歩を角で手順に交換して手得を図る含みがあるからです。

本定跡の△6二銀に▲5八金右はすぐ上がらなくても良いのですが、早く中央を厚くする意味で堅実です。
▲5八金右に代えて▲7八銀(変化1)と上がり、居飛車か振り飛車かもう少し様子を見ながら指す手もあります。

早く上部を厚くする-11手目~18手目まで-



△4二玉に代えて△6四銀(変化2)は、▲6七金で付け入るスキがありません。
この手で▲7八銀では、中央から動かれる可能性が出てきます。

本定跡では▲7八銀~▲7七銀で早く上部を厚くしておきます。
上手が飛車先の歩を早く突いた場合は、ほとんど右金を前線に繰り出してきます。
そこで、下手は早めに上部を固めておくのです。
飛車先の歩を突く手は後回しでよいでしょう。

上手、金を繰り出す-19手目~29手目まで-



上手は△7三金から右金を繰り出しますが、△6四歩に代えて△6四金(変化3)と上がる変化もあります。
この手は7筋の歩交換以外に5筋の歩交換を狙っています。
5筋の歩を交換し、▲5六歩△5四金の形になると上手好形です。
下手はなるべくその順を避けた方がいいでしょう。
△6四金以下▲4六歩と突き、△5五歩なら▲同歩△同金▲4七銀と対抗して、▲5八飛を含みに戦えば下手十分です。

本定跡の△8四金以下7筋の交換には、がっちり▲7六歩△7四金と金を追い返しておきます。

下手、ようやく飛車先を突く-30手目~34手目まで-


ようやく下手は飛車先を突きます。
角落ちの矢倉定跡は、まず上部を厚くして矢倉を構築し、その後に飛車先の歩を突き、さらに玉を入城するという手順が安全で、無難な組み方です。

本定跡では△4四歩に▲4六歩と受けましたが、この歩はいま突かなくても構いません。
上手が△4五歩と位を取る手は△7四金とのバランスが悪く、良くありません。
▲4六歩を突かず、▲7九玉(変化4)~▲3六歩以下▲3七銀から3筋の歩を切る変化も下手非常に有力です。

中央を厚くする▲4七銀-35手目~45手目まで-



6筋を切って△6四金型に構えたのは、5筋交換なども狙い、攻防両用に金を使えるようにしたものです。
△6五歩に代えて△7三桂(変化5)として攻撃態勢が組みあがった好機に△6五歩▲同歩△同桂と戦う変化もあります。

△6四金に▲4七銀は、前にも触れたように中央を厚くする意味。
もし、これでも△5五歩(変化6)なら▲同歩△同金▲5八飛と反発して下手良しです。
以下△6四銀には▲6五歩の好手があり、上手困ります。
また、△5四金も▲5六銀と盛り上がり下手好形です。

下手入城、決戦迫る-46手目~55手目まで-



▲2四歩の飛車先交換はいい時期。
次に△3三銀と上がられると、飛車先交換しにくくなります。
▲3七桂はあるものの、切れるときに歩を切る方が自然です。

△7三桂に▲8八玉と入城し、決戦間近になりました。
△9四歩に▲1六歩△1四歩で1筋を突き合ったあと、下手は9筋を受けずにここから先攻します。

▲3七桂を省いて仕掛ける-56手目~62手目まで-



▲4五歩に代えて▲3七桂(変化7)も考えられますが、△3三桂と対抗されると、以下▲4五歩△同桂▲同桂△同歩▲3五歩△6五歩▲3四歩△8六歩▲同銀△7四桂と攻め合われて難しい形勢になります。
途中の△6五歩に代えて△3五同歩(変化8)▲同角△3四歩▲2六角と進めても、いつでも上手から△3五桂と押さえる手があり下手損です。
つまり桂交換は上手に利点が多いのです。
そういう理由で、▲3七桂を省略して仕掛けます。

△6五歩は相手にしない-63手目~68手目まで-



△6五歩に代えて△3三銀(変化9)は、▲3七桂△4四銀右に▲3六銀でも、▲4五桂でも支えきれません。
上手は△6五歩と攻め合いに活路を求めるよりなさそうです。

下手は手抜きで▲3七桂から▲3六銀と進めます。
▲3七桂に代えて▲6五同歩(変化10)は、△同桂▲6六銀△8六歩▲同歩△8五歩▲同歩△8六歩で下手大変です。
この後の上手の狙いは、△8五飛~△8七歩成▲同金△8六歩です。

本定跡の△6六歩に▲同金も最善手。
代えて▲同銀(変化11)は、やはり△8六歩から△8五歩があります。

下手、激しく攻め立てる-69手目~74手目まで-



△6五桂に対して、下手は銀を逃げません。
この攻めを利用し、▲6五同金~▲5七桂~▲4五桂左と激しく攻め立てて一手勝ちを目指します。

▲6五同金に代えて▲3五歩(変化12)も有力です。
次に▲3四歩が厳しく、上手は△3五同歩の一手。
以下▲同銀△3六歩▲4四歩△3七歩成▲同角の手順で下手十分です。

本定跡は△5六金と呼び込んでいるので、下手は攻めを緩めることができません。

歩頭の銀捨て▲4五銀-75手目~80手目まで-



▲4五桂左の局面は上手が受けづらいです。
△4四歩に代えて△4五同桂(変化13)は▲同桂あるいは▲同銀△5五金▲4四歩のいずれも下手好調。
また、△4四銀(変化14)も▲3三桂成△同銀上▲4五歩△5三銀▲2五桂打で4五歩の拠点が大きく、やはり下手優勢です。
▲2五桂打の意図は、△2四銀なら▲4四歩△同銀▲4五銀△同銀▲4四歩△4二金▲4五桂と攻める狙いです。

本定跡の△4四歩▲5三桂成△同金に▲3五歩でも十分ですが、歩頭に出る▲4五銀が先手を取って緩まず攻める好手。

▲3三歩からしつこく攻める-81手目~90手目まで-



上手の△4三金はやむを得ません。
下手は▲3三歩からしつこく攻めます。

上手は△3三同銀に代えて△4二玉(変化15)と逃げたいのですが、▲3二銀でほどけません。
狙いは▲4三銀成△同玉▲5三金の詰みです。
以下は
①△4五歩は▲4三銀成△同玉▲7一角成
②△5二金(変化16)には▲5三歩
などがあり、他に駒を打つ場所もなく、上手困っています。
▲3三歩△同銀▲同桂成△同金に代えて△同玉(変化17)は▲2五桂△4二玉▲4五歩で上手が負け筋に入ります。

手順の寄せで下手勝勢-91手目~100手目まで-



▲5三銀はやや甘いようですが、だいぶ金駒を取っているので、これで十分。 次に▲4四銀成や▲4四角が厳しい手です。
△4三玉に対して、下手は▲4二銀打と食いつきます。
上手は2枚換えでしのごうとしますが、▲8二飛の王手が厳しい形。
△5二桂に代えて△5二銀(変化18)も、▲6三金から▲5三歩で同様です。 また△5三玉(変化19)も▲6八飛で良いでしょう。

▲5三歩打とした局面は下手勝勢。 以下上手はどう応じても駒損になり、手順に寄せられます。

駒落ち定跡を体系的に学ぶならこの本がおすすめ


ここまでお読みいただきありがとうございました!
以上が角落ち定跡の一部です。

詳しくは、2023年4月24日発売の『【新装版】駒落ち定跡』(所司和晴)に載っています。
本書ではほかにも、「香落ち」などの戦い方も解説しています。
ぜひ本書を読んで、駒落ちをマスターしてください! お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
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