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新刊案内「棋士の才能 ―河口俊彦・将棋観戦記集―」 ~才能とは何か?~

2017.01.31 | 島田修二

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こんにちは。
自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変っているのを発見した編集部の島田です。


今日も元気に新刊案内いきます。紹介するのは2月22日発売予定の河口俊彦八段の新刊「棋士の才能 ―河口俊彦・将棋観戦記集―」です。





本書は河口俊彦八段が長年にわたって担当された王座戦の観戦記から51局を抄録したものです。

王座戦といえば羽生先生。久保先生、森内先生、渡辺先生、中村先生、豊島先生との番勝負の観戦記を収録しています。

観戦記は基本的に何人かの方が担当するものですが、河口先生は王座戦の名場面に数多く遭遇しています。
たとえば第51期王座戦五番勝負。19歳の若武者渡辺五段がタイトルに初挑戦しました。羽生王座相手に2勝1敗とリードして、ファンを驚かせました。観戦記にはこう書かれています。


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 渡辺が羽生に対し、2勝1敗と勝ち越したとき、世間は驚いただろう。棋士達も何事が起こったのかと首をヒネった。
 なにしろ、渡辺が挑戦者になったこと自体が番狂わせだった。だからタイトル戦で羽生に一番でも勝てれば上出来と思われていた。実績を比べれば、それが順当な見方というものだ。
 ところが羽生はカド番に追い詰められてしまった。そこで棋士達は、横歩取りなんか指すからいけない、毎日将棋ばかり指している若手には研究量の差で勝てないよ、矢倉か振り飛車なら楽勝なのに、と言った。
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このあと、羽生先生が1勝を返し、2勝2敗で迎えた最終第5局、この大一番の観戦記を担当したのが何を隠そう河口先生なのです。

本局は羽生先生の勝利に終わるのですが、最終盤に羽生先生の指が激しく震えたのは有名な話。

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 いよいよ大詰めである。
 羽生は念を入れるように間をおき、△5七角成とした。ごく当たり前のやさしい一手すきである。なのに、この手を指すとき、手が痙攣を起こし、5七の角が斜めになっていた。すぐ直そうとするが、指が思うように動かない。モニターテレビを見ていた人達は、異変でも起こったのかと驚いただろう。しかし盤側で見たところでは、羽生の表情は冷静で、もう勝った、の顔だった。
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ドラマチックに書こうと思えばいくらでもそう書けるところ、あえて淡々と描くのが河口先生風。

また、羽生―渡辺の王座戦といえば、こちらも有名です。






将棋マニアなら見た瞬間に分かるあの将棋。そうです、第60期王座戦 五番勝負第4局。終盤に羽生先生が△6六銀!!という銀のただ捨ての鬼手を放ち、千日手になった対局です。この対局の観戦記も河口先生が担当されました。

この将棋なんですが、上の局面はなんと23年前の▲村山聖―△河口俊彦戦と同一局面!
なんという巡り合わせでしょうか。運命的なものを感じずにはいられません。

もちろん、番勝負だけでなく、予選から挑決までの熱戦も数多く取り上げています。

目次はこんな感じです。





さて、話は変わります。
本書を読んでいただければ分かると思いますが、河口先生は棋士や指し手を語るときに「才能」という言葉を非常に多く使われます。

(数えるほどですが)私が河口先生とお話したときも、先生は「○○の才能はすごい」とよくおっしゃっており、本書のタイトルも「棋士の才能」とさせていただきました。


普通は「才能よりも努力が大事」といいます。

また、自分より能力が高い人を見て「才能が違うから」とあきらめてしまっては、成長しないから、そういう考え方は良くない、ともいわれます。

しかし、河口先生はむしろ自分が天才たちの才能に打ちのめされることを望んでいたように思うのです。
河口先生が将棋を観戦するときはいつも「さあ、君の才能を見せてくれ」とわくわくしていたんじゃないでしょうか。

だからコピー将棋や、時間稼ぎのような手は嫌いで、逆に誰も思いつかないような妙手には惜しみない賛辞と感嘆の言葉を贈ります。

自らもプロ棋士でありながら、棋士の才能を礼賛する。そういう特異な点に立って書き続けた観戦記には、他にはない価値があると思います。


将棋ファン、河口先生のファンはもちろん、将棋の世界をのぞいてみたい、という方にもぜひ読んでいただきたい一冊です。

宜しくお願いいたします。


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