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三浦九段と阿部健五段と△5三銀右急戦

2015.10.05 | 米澤孝至

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「持駒は揃える派」の米澤です。

今日は先日紹介した「三浦&阿部健の居飛車研究」から△5三銀右急戦のページを見てみましょう。



簡単に後手の狙いをいうと、△5五歩以下の手順で、角を一気に7三へ転回しつつ、一歩交換をしてしまおうというものです。
そして先手もそれに反発することになります。

ここからの手順はもちろんいろいろあるのですが、三浦先生いわく、
△8五歩▲7七銀△5五歩▲同歩△同角に▲7九角△7三角▲4六角△6四銀(下図)という展開になりますとのこと。



確かに何度も見たことがあります。
ここから手順をすっ飛ばして下の第2図を見てください。



竜王戦や名人戦でも出た、この戦型における代表的な局面です。
後手は香損しているけど、実は均衡が取れているという不思議な局面。
本書の結論も「形勢難解」なんですが、この局面におけるやり取りが面白いんです。

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三浦九段

後手香損する変化(第2図)は、先手は香よりも歩を持っていたいんですね。第2図で▲6六歩と打てれば△5四銀に▲8二馬で先手がいいですからね。いやー、恐ろしいなー、持ち駒が歩なら本当に先手必勝じゃないか。

阿部五段

第2図で▲6六香だと△同銀▲同銀に△6四香や△4九角で先手大変ですね。

三浦九段

先手は右の桂香が遊んでいるのがなぁ。

(※一部省略しています)
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三浦先生の口調がたまにくだけるのが本書の最大のポイントです。
このまったりした雰囲気を楽しんでいただければ。

内容に戻りますが、第2図で持駒の香車が歩なら先手必勝というのはなかなかびっくりです。
なんかちょっと釈然としないんですが、先手が歩切れのため難解な形勢だそうです。

後手に比べ先手は右の桂香が遊んでいると三浦先生は何気なく言っていますが、このやり取りを読んで「これが大局観なのかぁ」と思ったことが妙に印象に残っています。

さて、同じタイミングで西尾明六段の「矢倉△5三銀右戦法 仕掛けて勝つ後手矢倉の革命」も発売されます。
西尾先生の見解はまた次回。