みなさんこんにちは。
好きな詰将棋は煙詰の編集部島田です。
今日も現在好評予約販売中の「将棋魔法陣 -二上達也詰将棋作品集-」について、掘り下げていこうと思います。
なんと今回、看寿賞作家であり、ハンドブックシリーズでも有名な浦野真彦八段からコメントをいただきました!
お忙しい中ありがとうございます。
浦野先生には200問が収録されている本書の中から珠玉編の第65番について語っていただいております。なんでも詰将棋ファンの間で一時大きな話題となった問題だそうです。
さっそくその問題と先生のコメントを掲載いたします。
(以下、浦野先生のコメント)
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65番について
何年前になるだろうか。将棋世界の詰将棋が詰まなかった。端正な配置ですぐに詰みそうに見えるが、どうにも手掛かりがつかめない。
あまりに詰まないので、ひょっとしたら誤植で不詰じゃないかという疑念がわき、その日は考えるのをやめた。
後日、仲間に「あれ不詰ちゃうかな」と言うと、返事は「詰みましたよ」。
驚いてもう一度考えるが、それでも詰まない。こうなったらすべての王手を考えようか。そんなことを思った時、突然正解手順が閃いた。
ああ、そうか!
その一手のなんという衝撃。全身に鳥肌が立つような感覚。
腕に自信のあるかたには自力で解くことをオススメしたい。その先に待つ感動のために。
浦野真彦
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先生も自力で解くことをオススメしたいとおっしゃっているので、あえて正解は載せずにおきます。どうしても知りたい方は本書をご購入ください(笑)。
この問題は初め将棋世界の巻頭詰将棋として出題されたものですが、当時プロ棋士の間で「詰まない」「不詰ではないか?」と大きな話題になったそうです。
浦野先生によれば、この衝撃の一手というのは詰将棋界ではたいへん有名で、指し将棋に例えると中原先生の▲5七銀や羽生先生の△6六銀のようなものだとのこと。
そんなに有名なんですか!?
し、知らなかった・・・。
私は答えを読んでしまいましたが、自力でたどり着いたらものすごい衝撃だろうな、というのは分かります。え?それで詰むの!?って感じのあり得ないような手順です。
本書にはこの問題の解答も解説も載っていますので、ぜひ読んでみてください。
浦野先生、ありがとうございました!
さてさて、私のほうは前回予告したとおり、今日は「取らせ短打」を掘り下げてみようと思います。お付き合いいただければ幸いです。同じく珠玉編の73番です。
早速ですが問題図はこちら。
見てのとおり竜と角と歩しかないです。
これから答えを書いちゃいますので、自力で解く予定の方はここから先は読まないでください。
ではシンキングターイム。ピッコピッコピッコピー!
シンキングタイム終わりです。
初手は▲3九角です。前に利く駒を合駒すると▲同角以下詰むので2手目は△2八角。
以下、▲2八同角△同と▲1八歩△同とと進みます。
1九の歩が消えました。なんとなく1筋に歩を打ちそうな感じです。
さて、問題はこの次の手。
もう一回▲3九角と打つのが普通の発想ではないでしょうか?これでもう一回角合されて▲同角△同と▲同竜・・・。とかなんとか、考えている時点でもう間違ってます!!
▲3九角には△2八と!!という驚きの受けがあるんです。
以下、▲同竜△1六玉▲1五と△同玉▲2四竜△1六玉と進んだときに
3九に角がいるせいで▲1七歩が打てません!
と、いうわけで・・・。
▲3九角と打つところでの正解はこれまたびっくりの▲2八角!
「大駒は離して打て」って教わりましたよ?私は。
▲2八角とくっつけて打つことによって今度はこの角を取らざるを得なくなってます。
以下は△同とに先ほどの手順で▲1七歩が打てるので詰むという話です。
まとめるとこういうことです。
▲3九角と離して打つとのちのち打ち歩詰めの筋が生じて詰まない。
そこで▲2八角と短かく打つと、問題の局面になったときに角が存在しないので詰む。
つまり、これは「事前の邪魔駒消去」。
まじすげー。まじ未来志向。
二上先生は「不成」の世界を作り上げた人。
となれば当然「打ち歩詰め」をめぐってもさまざまなアイディアをお考えになられたことと思います。
打ち歩詰めの問題では、普段の将棋とは逆に「自分の駒の戦力を弱める」という発想が必要になり、玉方にも「攻め方の駒の戦力を高める」ことによって打ち歩詰めに誘導するという駆け引きが生じるので、こういう珍しい手順も生まれるんですね。
ちなみに、私は職団戦に初めて出場したとき、その第1局で打ち歩詰めを打ってしまって負けるという非常にレアな体験をしました(ダメ人間)。
話を魔法陣に戻しますが、この問題が「取らせ短打」と呼ばれる手筋の第1号局だそうです。こういうアイディアを思いつくということがすごいですし、この構想を竜と角と歩だけで実現させることもまたすごいです。まさにジーニアス。
この作品については若島正さんが「一番好きな作品」ということで、書籍の中で詳しく解説していますので、興味を持っていただいた方はそちらをお読みください。
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