将棋世界の国沢です。このあいだの電王戦見ましたか。習甦の強さはすごかったですね。コンピュータは居飛車対振り飛車は居飛車の勝率がすごく高いとプログラマの方が言っていたんですが、それにしても強かったです。第2局に登場する「やねうら王」は、5ソフトの中でも特に異色のソフトで「くせ者」と思われているようです。発売中の『電王戦公式ガイドブック』(日本将棋連盟刊。1,480円+税)ではその「やねうら王」の特徴と弱点を日本将棋連盟のモバイル編集長・遠山五段が分析していますので、その一部を紹介しましょう。
同型角換わり腰掛け銀で富岡流と呼ばれる形に誘導して迎えた第5図は、すでに先手勝ちと結論付けられている局面です。 ここからAperyは何かないか思考を始めましたが、やはり結論を覆すことはできず、やねうら王が押し切りました。 この将棋は富岡流だからハマったのではなくて、やねうら王はfloodgateというソフト同士の対局サイトの棋譜を解析しているんですね。そして定跡から抜けた局面で、例えばAperyが他のときにも第5図で負けていたとすれば、先手でこの局面に持ち込めば絶対に勝てるわけです。 そういうものすごい数のデータから、あるソフトにはこういう進行になれば優勢になるというパターンをいくつも持っていて、開発者の磯崎元洋さんはそれを「やね裏定跡」と呼んでいます。磯崎さん自身も将棋が強いのでいろいろと策を凝らしてきますね。相手ソフトによって序盤の定跡を変え、200点でも有利にできれば多少相手が強くても勝機が高まりますから。勝ちにこだわる、今までにないタイプの開発者です。 絶対に何か仕掛けてくると思うので、人間側としてはやりにくいと思います。また、棋士に必勝手順を見つけられることがないようにプログラムを組んであるそうです。
(中略)
やねうら王の弱点が出た将棋としては、3位決定戦のYSS戦の第6図が挙げられます。 ここでは△1七歩成や、筋よく指すなら△5五歩が考えられるところです。 図から△3八成香が悪手で、▲同金△3五銀▲1三馬△2二金としましたが、▲2二同馬△同飛の形がひどく、▲3六歩に△4六銀(△2四銀は▲2三金)と突進せざるを得ないのでは先手に形勢が傾いてしまいました。 なぜこういう手が出たかというと、第6図ではやねうら王は持ち時間が残り16分しかありませんでした。時間が少なくて読みが浅くなり、馬を取る順に飛び込んでしまったのだと思います。これには理由があり、序盤に時間を使うよう設定してあって、相手が強いソフトのときは序盤でリードを奪い、終盤でプラス1000点あれば時間が少なくても勝ち切れる、ということだったのですが、その策が裏目に出て最後がバタバタになってしまいました。 対戦相手の佐藤紳哉六段は真っ向勝負の棋風ですから、やねうら王の策が吉と出るか凶と出るかがいちばんの見どころですね。
皆さん、もうタイムシフトはしましたか。個人的には佐藤紳哉六段の盤上以外にも注目していますが、果たしてどうなるか。インタビューでは「まわし」「髷」なんてことを言っていましたが・・。まさかネ。第2局も楽しみです。