次期iPhoneでの採用が見込まれるワイヤレス充電の仕組み|MacFan

アラカルト 今あるテクノロジー

次期iPhoneでの採用が見込まれるワイヤレス充電の仕組み

文●今井 隆

アップルデバイスに搭載される、さまざまなテクノロジーを超ディープに解説!

©vitvider

 

読む前に覚えておきたい用語

ワイヤレス給電

ワイヤレス給電は無接点電力伝送または非接触電力伝送とも呼ばれ、接点やコネクタなどの電気的接続を介さずに電力を伝送する技術全般を指す。伝送に用いられる媒体には、磁力、電波、光(レーザ)、超音波などがあるが、現在は磁力を用いた近接電磁誘導方式がもっとも普及している。

近接電磁誘導方式

磁力を用いて電力の近距離伝送を実現するワイヤレス給電技術の1つで、向かい合った2つのコイル間で磁束を媒体として電力を伝達する。数ミリメートル前後の比較的短距離での伝送に適しており、その範囲内でのエネルギー伝送効率は他の方式に比べて極めて高いという特徴を持つ。

採用事例

古くからワイヤレス給電を採用している製品として電動歯ブラシやシェーバーなどの衛生家電がある。これらは水回りで使用されることやユーザが濡れた手で触れることから、電気接点を廃止することで安全性や利便性を高めている。ほかにもコードレスフォンや携帯電話などで採用例がある。

 

 

ワイヤレス給電の長所と短所

ワイヤレス給電は文字どおり「置くだけ」で電源の供給や内蔵バッテリの充電を実現する技術の総称で、身近なところでは2015年4月に発表されたアップルウォッチ(Apple Watch)の充電システムに採用されている。ワイヤレス給電には従来の接触式給電と比較して、大きく3つのメリットがある。1つは電気的な接点を持たないため、たとえば身体や皮膚に直接触れる機器でも感電や漏電のリスクがなく、特に水や液体を扱う場所で安心して使えるメリットがある。

もう1つは電気的な接触がないため、コネクタやコンタクトなど接続部品の劣化や破損の心配がない。そしてなによりのメリットはケーブルを用いない取り扱いの容易さだろう。一方で電力の伝送ロスがケーブル接続より大きい、伝送効率が送受信コイル間の距離や位置ずれの影響を受ける、磁性体を介した伝達ができない(金属ケースは使えない)などのデメリットがある。

ワイヤレス充電規格「Qi」の特徴

従来ワイヤレス給電技術の主な用途であるワイヤレス充電システムでは充電器(送電回路)と機器(受電回路)は常にペアで設計されており、たとえば他機種の充電器と機器の間では互換性がないのが普通だった。これに対し、任意の充電器と機器の組み合わせでも安全に運用できるようにワイヤレス充電の標準規格を策定する目的で2008年に設立されたのがワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)で、WPCによって策定されたワイヤレス充電の国際標準規格が「Qi(チー)」である。2010年7月に最大5Wまで対応する「低電力向けQi規格(Volume I Low Power)」が規定され、同規格に適合する製品にはQi(チー)ロゴを付けることが認められている。




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