アラカルト 今あるテクノロジー

Appleをも巻き込む次世代ストレージの鍵、「3D NAND」の動向

文●今井 隆

アップルデバイスに搭載される、さまざまなテクノロジーを超ディープに解説!

読む前に覚えておきたい用語

不揮発性メモリ

コンピュータ用のメモリのうち、電源を切っても記録されたデータが失われない特性を持つものを指し、主にストレージや仮想記憶として使用される。大別して読み出し専用のマスクROMと電気的に書き込みが可能なEPROMがあり、3D NANDを含めてNANDフラッシュメモリもEPROMの一種。

フラッシュメモリ

不揮発性メモリの一種で、NAND型とNOR型に分類される。NAND型は構造がシンプルでNOR型に比べて高い記録密度が得られる反面、構造上データの上書きが不可能でブロック全体を消去してから書き込む必要がある。書き換え寿命が重視される用途ではNOR型が、大容量用途ではNAND型が用いられることが多い。

フラッシュストレージ

NANDフラッシュメモリを記録媒体に用いたストレージデバイスの総称。メモリカードやUSBメモリ、SSDをはじめ、eMMCなどの基板実装型ストレージもある。iPhoneやiPadなどのスマートフォンやタブレット、MacBookに代表されるモバイルパソコンでは、フラッシュストレージが搭載されている。

 

 

大容量化を実現する3D NAND

現在のiPhoneやiPadなどのiOSデバイスやMacなどのパソコンのストレージには、従来の磁気記録デバイスであるハードディスクに代わって、NANDフラッシュメモリを記録媒体に使った半導体ストレージが採用されている。NANDフラッシュメモリはMacが誕生したのと同じ1984年に東芝によって開発され、2003年頃を境に爆発的にその普及が進んだ。当初はiPodなどのオーディオプレーヤへの採用から始まり、その後の大容量化と低価格化に伴って、スマートフォンやタブレットはもちろんのこと、最近ではパソコンのメインストレージの座をもハードディスクから奪いつつある。

NANDフラッシュメモリの大容量化は、主に製造プロセスの微細化によってもたらされてきたが、21世紀に入ってムーアの法則に基づいた半導体の進化に限界が見え始めた。これに加えてNANDフラッシュメモリは独特の構造が原因で微細化が難しくなっている。NANDフラッシュメモリはその構造上、記録素子(セル)の中に設けたフローティングゲートと呼ばれる部分に電荷を蓄えることでデータを記録する。しかし、微細化が進むとこのフローティングゲート自体の容積が減少し、蓄えられる電化の量が少なくなることでデータの保持能力が低下する。

また、隣接するセルのフローティングゲート同士が接近することで、お互いに干渉が起きやすくなりエラーが増加する。保持能力の低下やエラーの増加に対しては、より強力なエラーリカバリー(ECCやLDPCなど)が必要になり、補正ビットの増加により実質的な記録容量が犠牲になるというジレンマがある。

このような状況を打破しさらなる大容量化を目指す手法として数年前から脚光を浴びているのが、高さ方向にセルを積層する3D構造のNANDフラッシュメモリ「3D NAND」だ。従来のNANDフラッシュメモリはプレーナ型と呼ばれセルをX-Yの平面に配置する構造だが、3D-NANDはこれをX-Y-Zの三次元に立体的に配置し、プレーナ型では難しかったさらなる大容量化が実現可能だ。

3D NANDの特長は、製造プロセス自体を30~50ナノメートル(nm)プロセスと低く抑えることでセル自体の特性を高く維持したまま、これを高さ方向に数十層重ねて配置することで記録容量を確保できることだ。これによって製造プロセスの向上に伴うさまざまな性能上の制約から開放される。チップ全体のアクセス速度も2倍以上に向上し、さらにセル寿命も2~10倍に改善される。

一方で3D NANDは従来のプレーナ型NANDとは製造方法が大きく異なるため、新たな設備投資が必要不可欠だ。さらに高さ方向に多層化したゲート層を垂直に貫通する細い穴を高精度にエッチングする高度な技術が必要であるため、現在はまだ歩留まりが低く製造コストが高い欠点を持つ。それでもなお各社が3D NANDに注力するのは、今後大容量化競争に生き残っていくためには必要不可欠な技術であると認知されているためだ。

 

初代iPod nano

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2005年9月に発表されたアップルの初代iPod nanoは、当時としては大容量の2GBまたは4GBをHDDに代わってNANDフラッシュメモリで構成し、シリコンオーディオプレーヤの世界に価格破壊をもたらした。




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