2016.08.06
国内発売からすぐに重版となり、2万部のヒットとなったプログラミング絵本『ルビィのぼうけん』。著者は女性を中心としたプログラミングのワークショップ「レイルズガールズ」創設メンバーのリンダ・リウカスさん。その活動について、同書の日本語版翻訳者でプログラマーの鳥井雪さんに話を聞いた。
女子もプログラミング
小学校でのプログラミング教育の必修化に向けた動きが急速に進んでいる。6月3日に開催された文部科学省の有識者会議では、プログラミング教育の意義やあり方について討議され、「コーディング(プログラミング作成技術)」そのものよりも自分の意図する活動を実現するための論理的思考力、すなわち「プログラミング的思考」が重要と提言された。
こうした議論の背景にはIT人材の不足がある。経済産業省が6月10日に発表したニュースリリースによると、IT市場の成長率が高めに推移した場合、2020年には36・9万人、産業人口が減り始めた2030年には78・9万人が不足すると試算した。これは日本に限った話ではなく、程度の差こそあれ米国などでも同様の予測がなされている。アップルがWWDC 2016においてiPadで誰でもプログラミングが学べる「スウィフト・プレイグラウンド(Swift Playgrounds)」を発表したのも、こうした大きな流れを受けてのことだ。
だが、プログラミングの世界はいまだに男性中心で「かなりの偏りがある」と指摘するのは、レイルズガールズジャパン(Rails Girls Japan)のメンバーで、話題のプログラミング絵本『ルビィのぼうけん』の翻訳者である鳥井雪さんだ。普段はシステム開発会社のプログラマーとして働く鳥井さんは自らの経験も踏まえて、プログラミングへの入り口を狭めるような社会の意識を問題視する。
「世代にもよりますが、コンピュータやプログラミングは“男の子文化”という認識は根強いものがあると思います。もちろん海外でもそうした傾向はあるのでしょうが、日本ではこの偏りが顕著だと思います。これからプログラミングに触れようとする女の子は、この世界が自分に開かれているかどうかを敏感に感じとりますし、とっつきにくさを感じれば自分に関係ないと育ってしまうことも多いのではないでしょうか」
実際に経産省資料によれば、ソフトウェア業を占める女性の割合は20・3%とかなり低い水準となっている(2013年調査)。