野呂エイシロウの「ケチの美学」第37回|MacFan

アラカルト ケチの美学

野呂エイシロウの「ケチの美学」第37回

文●野呂エイシロウ

人気放送作家が語るケチとアップルの交差点。

書けない豚はただの豚だ

毎日、何文字を書くのだろうか? 2万文字は余裕で書いている。来る日も来る日も大量の文字を書いている。それが楽しくて仕方がない。このコラムもそうだし、ブログもそうだし、テレビの台本もそうだ。とにかく楽しいのだ。そんな毎日である。書けることが、非常にうれしい。

実は、一時期書けなくなったことがある。今から20年ほど前のことだろうか? 「ザ!鉄腕!DASH!!」という番組の構成をやっていたときに、ちょっと演出家とモメて番組を降板した。

その後、3カ月間ほど仕事がなかった。ほとんど書くこともなくなり、そのとき「なんか書きたいな」と切に思ったのだ。そして、しばらくすると「書きたい中毒」になり、ブログを書いたり、とにかくいろんな人にメールを書いたりした。

そんなことをしているうちに、今度は書くことが楽しくて仕方がなくなってきた。だから、本を書いたり、コラムを書いたりしていると、再び放送作家としての仕事が忙しくなった。

最初は「仕事がしたい」と思っていたのだが、それがいつしか「書きたい」という欲求に変わってきたのだ。

自分の書いた文字や原稿がテレビ番組になったり、ラジオになったり、こんな感じにコラムになったりすることが本当にうれしかった。そんな経験をしたから、それ以降、書くことが楽しくて仕方がないし、それは今でも変わらない。

ボクが大好きな映画がある。宮崎駿監督の「紅の豚」である。1992年公開の映画だ。当時ボクは25歳。美人と観に行ったのは覚えているが、誰だったのかは残念ながらちょっと思い出せない。

この映画で、主人公のポルコ・ロッソが、美人なマダム・ジーナに電話越しに言うセリフがある。

「飛べない豚はただの豚」。

この一言が大好きだ。奇しくもボクの体型も豚のようにデカイ。今年になって5キロも増えてしまった。だから、そんな大好きな映画にちなんで「書けない豚はただの豚」というセリフをよく使う。

そう、ボクから「書く」ことを取り除いたら単なる豚である。(笑)

だから少しでも面白い原稿を書きたいと常に思っている。だが、時々スランプもある。そんなときは「書けない豚はただの豚」と何度も繰り返す。Macのキーボードの前でその言葉を繰り返す。

先ほど、安倍総理から緊急事態宣言が出た。とはいえ、ボクの目の前には、MacBookプロ16インチがある。このMacで原稿を書いているときが非常に幸せだ。このシザー式キーボードを打っている感覚が非常に気持ちがいい。これからも書き続けようと思う。“ただの豚”になるまでは…。

 

 

まだ飲食店に集まって、ワイワイガヤガヤやっていた頃の写真。つい数カ月前までバカができたのに…。

 

 

EishiroNoro

放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。