野呂エイシロウの「ケチの美学」第36回|MacFan

アラカルト ケチの美学

野呂エイシロウの「ケチの美学」第36回

文●野呂エイシロウ

人気放送作家が語るケチとアップルの交差点。

“おいしい”と笑う

 「すみません、今から27万円を持って歌舞伎町まで来てもらえませんか?」

今から20年ほど前。若手の業界人からの突然の電話である。

「お前の娘を預かっている」と言われたら「あ、誘拐かな?」とすぐにわかるけど、今から27万円って不思議な金額だ。しかも、午前3時。

「なんで?」と聞いてみたら「すみません、ぼったくりバーに入っちゃって…○○くんと」と知っている名前が出てきた。携帯電話の向こうからは「誰がぼったくりなんだ!」と怒鳴り声が聞こえる。

ベッドから起き上がり、一応、何かあったときに戦えるかな?と思って、ごっついボールペンを持って出かけた。

そして、指定された店に入ると、素っ裸の若者二人が床に正座をしていた。「変わった店ですね」と言ったら、強面の人の顔が、さらに怖くなった。

「はい、お金。すみません、領収書いただけますか?」と呑気に依頼。どうやら、ビールとちょっとおつまみを頼んだだけらしい。

帰りに3人でラーメンをすすりながら「なんだVシネマみたいだったな~、おいしいじゃん。羨ましいな」と口走ったら、若者から怒られた。

でも、ボクはそのとき心から思った。「おいしいじゃん」っと。

そう、考え方によってはトラブルは“おいしい”のである。

「ザ!鉄腕!DASH!!」の放送作家をやっているときもトラブルが山のようにあった。ここでは書けないことだらけだ。大盛りご飯3倍ぐらい食べられそうな話がある。でも、死んだわけじゃないから笑い話で済む。

大学生時代、初めて女の子と一緒に海へドライブに行った。そのとき、彼女の横顔を初めて見た。「かわいいなあー」と思っていたら、前のダンプカーにぶつかった。新車のボクの車はもちろん壊れた。でも、「ごめん、横顔に見とれていた」と彼女に正直に言ったら、その恋は実った。残念ながら、海にはたどり着けなかったが…。

トラブルが起こるたびにボクは“おいしい”と思うようにしているし、それがさらに自分を成長させている。

ライフネット生命の創業者で、APU(立命館アジア太平洋大学)の学長でもある出口治明さんがこんなことを述べていた。「歴史を見ていると、楽観が悲観に必ず勝つ」と。

石油も21世紀の初頭には枯渇すると言われていたが、未だに石油はある。戦国時代の戦も楽観的なほうが勝利を収めている。

いつの時代も陰謀論や悲観論はたくさん飛び交うが、結果的には楽観的に考えて行動した人が勝利を手にしているというのだ。「なるほどー」と思う。

とにかく、楽観的に捉える。ケチだから何でも「おいしいネタ」に変えてゆくのがボクの生き方だ。

 

 

広報でYouTuberでもあるM嬢の1日ママのイベントに。

 

 

EishiroNoro

放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。