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ゴルフ千物語③

【第08回】A dentist (歯医者)

2017.05.17 | 篠原嗣典

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人間は幸不幸にかかわらず、大きな変化に弱い。そういうことをきっかけにおかしくなってしまうことも、何の不思議もない。

父が死んだ。
それはいつか訪れること。ましてや、2年間も入退院を繰り返し、ある程度の覚悟は出来ていたので、ショックはそれほどでもなかった。

父の遺品を整理した。
母が死んでから約10年一人暮らしをしていた父は、こういう時が来ることを予測していたように整理整頓して生活していた。
だから、整理と言っても数時間で済むことだった。

整理が終わる頃、銀行の預金や株券などで恐ろしいほどの金額が残されていることを知った。
父は一切贅沢をせず、質素に暮らしていた。
生涯かけて、これだけの財産を残したのだ。
尊敬した。その瞬間から俺はおかしくなっていた。

俺は、まず、仕事を辞めた。
一生働かなくとも十分な金がある時に、多くの人間が考える選択だろう。
そして、趣味のゴルフの環境を一新した。道具を元々欲しかったものに変えて、ついでに会員権も買った。いわゆる名門のメンバーになってしまった。
一生、ゴルフをしながら遊んで暮らせば良い。お気楽である。俺は3度の飯よりゴルフが好きなのだ。

ハンディキャプを取る為に、毎日、ゴルフ場に行った。
爺ばかりがメンバーだと思ったが、中には、同世代のメンバーもいたので退屈しなかった。一人でフリーで行き、他のメンバーと回してもらう。
好きなだけで上手くはなかったゴルフは、自分でも驚くほど急激に上達した。ゴルフには幾多の不公平があるが、金と時間がある奴は簡単に上手くなれるということが最大の不公平なのだと知った。

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