魔法を信じるだろうか?
僕は信じている……
ある晴れた初夏のゴルフ場。320Y、パー4。
グリーンまではほぼ平らで、グリーンの両サイドに大きなバンカーが口を広げている以外は特に難しいことはないホール。
僕はその前のホールで大叩きをしてしまった。ラフでボールを無くしてしまったからだ。
時間が掛かってしまったので、前の組と少し離れてしまった。
「さあ、少し急ぎましょうか」
一番上手な人が言った。分かっているよ! と怒鳴りたい気分のまま足を速めてこのホールに来たのだ。
上手な人たちは、いわゆるレイアップで、ロングアイアンやフェアウェイウッドで刻んだ。
4番目は僕だった。
ドライバーを軽く打とうと思った。
結果として、刻んだのと同じ効果がある、と考えた。
少し早いタイミングで振ってしまったと反省しながらも、軽く振り切った。
ボールは綺麗な弾道で、真っ直ぐに飛んでいった。
「乗っちゃうんじゃない?」
グリーンには前の組はいなかったが、心配した声で2番目に上手い人が言った。
ボールは、まるでボーリングのレーンを1番ピンに向かって滑っていくように静かに転がりグリーンに乗っていた。
まさに、ストライクである。
パー4で1オンしたのは初めてだった。