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ゴルフ千物語③

【第05回】Easy Going (安易な生き方)

2017.05.10 | 篠原嗣典

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J氏はゴルフを憎悪していた。

生まれた瞬間から今まで、J氏は恵まれていた。
金持ちの家に生まれ、十分すぎる教育を受け、それに見合う十分な学歴を得て、高い運動能力を持ち、スポーツは何でも得意だった。
社会人になってからも、誰もが羨むような成功を収めていた。
ただし、それはJ氏がゴルフを始めるまでの話だった。

ゴルフを始めたJ氏は、それまでの順風満帆な人生が全て否定されたような敗北感を味わうことになった。
「止まっている球を打つなんて簡単」と言いながら初ラウンドは、200に近い打数を要した……

J氏はそのままは引き下がらなかった。
まず、道具を徹底的に研究し、かなりの金額を注ぎ込み、完璧な道具で武装した。
J氏の予測では2ヶ月でシングルになれるはずだったが……
60日で3回ラウンドし、スコアは108までしか下がらなかった。

次にJ氏が注目したのはコーチだった。
プロにコーチする有名なレッスンプロを雇い、徹底的に練習した。
流石に一流のレッスンは、すぐに効果が出るもので、練習場に来ている誰よりも美しく強いボールをJ氏は打てるようになった。
更に、飛距離も伸びた。
J氏の予測では、やはり2か月あればシングルになれるはずだったが……
2ヶ月の間で5回ラウンドし、ベストスコアは98で、この結果は、J氏を大いに落胆させた。

ゴルフを始めて、数ヶ月で100を切り、それも合計で10Rもしていないのだから、多くの人がJ氏を天才だと絶賛した。
J氏は、それらを、ムカつく、わざとらしい誉め言葉だと感じて、露骨に嫌な顔をした。周囲の人は、人格者だと思っていたJ氏の豹変に戸惑った。

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