【第04回】A rival in love(恋敵) | マイナビブックス

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ゴルフ千物語②

【第04回】A rival in love(恋敵)

2017.04.10 | 篠原嗣典

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奴とぼくとは親友ではない。とはいえ、単なる友人ではない。
奇妙な因縁に縛られた悪友とでも言えばいいのか?
とにかく忘れることが出来ない男だった。

奴とぼくは同じ学校に通っていた。それがお互いとって大きな問題だった。
思春期の恋のエネルギーは、全ての力を使って振り回したドライバーショットのようなもので、マグレで当たることはあっても多くの場合はどこに飛んでいくのかすらわからない場合が多い。
どこに飛んで行くかわからなくとも、次から次へ打つことが出来るエネルギーの源は、明確な狙いがあるからに他ならない。
手当たり次第に狙いを定める拡散タイプの人間もいるが、多くは言葉で表現は出来なくとも、恋する対象に明かな趣向がある。
奴とぼくの問題は、好きになる相手と不思議なことに時期が完全に同じことだったのだ。

色々なことがあった。恐ろしいほどの符合にはオマケがあり、ぼくと奴は両方共、相手に猛烈にアタックするタイプだったのである。
だから、恋の対象になった娘は戸惑う。余程のケースでもなければ同時に二人の異性から猛烈なアタックを受ける経験などないので対処法がないからである。
ほとんどの場合、僕と奴は二人共に玉砕した。

進路が変わり、徐々に僕と奴は疎遠になった。
振り返ってみれば、愛している、なんて台詞が言えない恋する気持ちは、純真で素敵なものだった。あんなに心を囚われたことは、あの時期だけだったような気がする。
お互いの音信すらわからないまま数十年の歳月が過ぎた……

ところが、ぼくと奴は、ゴルフコースで再会してしまったのである。それもメンバーコースの月例会で、同じ組になったのだ。

ぼくも奴も一目でお互いがわかった。近況報告をして驚いたのは、結婚した年も同じで、相手の年齢も同じだったことだった。
そんな話で盛り上がっていると、キャディが困った声で尋ねてきた。
「あの~、お客様。クラブが全く同じなんですけど」
ぼくと奴は、入会したゴルフ倶楽部だけではなく使用しているクラブまで同じだったのだ。

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