【第03回】Good putt no luck(運も実力の内) | マイナビブックス

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ゴルフ千物語②

【第03回】Good putt no luck(運も実力の内)

2017.04.07 | 篠原嗣典

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ゴルフを深く知れば知るほどにパットは神秘になる。ストロークされた球がカップに入る確率は、そのストロークの精度をどんなに上げようと100%にはなり得ない。理論を越えた結果に溢れた奇跡の世界がパットである。

パットを科学すればするほどその領域は科学から離れていくので、学者たちはパットから目をそむける。科学的な根拠より、たった一枚のお守りでパットが飛躍的に向上したという実例は説得力があるのである。

T氏はそんなことは十分に知っていた。ゴルフを始めてずいぶん経つし、一般的には上手な部類にも入っている証拠にベストスコアはパープレーであった。
 ショットの精度とパットの決まる比率は反比例関係にあることを証明するように、T氏のゴルフは、ショットはかなり良いが、決め所のパットが外れることで伸び悩んでいた。しかし、それについてはしようのないことだとT氏は諦めていたし、開き直ってもいた。

ところが、冬至から少し過ぎたその日……
まるで薄っぺらな物語の映画のようにパットが入りまくった。
長いもので25ヤード、短いもので2ヤード。とにかく、15ホールまでに14パットしかしていなかった(1回は外から直接入ってしまった)。ゴルフを始めてからこのような経験は1回もなかった。もちろん、そんな人も見たことがなかった。
最初の3ホール位までは最高の気分だったが、徐々に気持ちが悪くなり、最後には魔法に酔った感じになっていた。

16番ホール、パー3。軽く振ったボールは、グリーンの真ん中に乗った。ピンは端に切られていた。約20ヤードのパットは思いっ切りダフった。
『あぁ、これで連続パットも終わりだぁ』
と思ったが、パットはコロコロと転がって止まらない。非常に読みづらいラインではあるが、ダラダラと下っているラインだったのだ。ボールは、まるでカップに吸い込まれるように向かっていく。
ラインが読めていなかったと反省している間に、ボールはカップに消えた。16ホールで15パットのホラーは、ますます恐怖感を増していた。

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