【第05回】A born fool is never cured(バカにつける薬はない) | マイナビブックス

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ゴルフ千物語②

【第05回】A born fool is never cured(バカにつける薬はない)

2017.04.11 | 篠原嗣典

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「痛っ!!」
ぼくはゴルフカートに跳ね飛ばされた。カートは無人で走るタイプで、スタート前に何度も係員にカートの前に出ないでください、と注意されたのに……

どの程度スピードが出ていたのかは知らないけど、カート1台分ほどぼくは空中を飛んだ。手にしていたドライバーは、ヘッドカーバーがカートの荷台に置いてあり、ヘッドが剥き出しだった。そのヘッドを庇う為に両手を使った。デカヘッドは片手では庇いきれないと思いながら、何故が頭の片隅で昔付き合っていた巨乳の女の子が微笑んだ。

ゴツン。
クラブを両手で抱きかかえた形で、ぼくは頭から舗装されたカート道に落ちた。
目の前が暗くなった。

気が付くと、周囲には誰もいなかった。カート道に、ぼくだけが倒れているようだった。とても静かだ。
ふと顔を上げると、スーツ姿の男が早足でカート道を向かってくるのが見えた。手には大きな金属製のアタッシュケースを持っているがさほど重そうではない。
「起きてください」
男は側に来ると立ち止まって、ぼくに言った。

ぼくが反応するのを待たずに、男はアタッシュケースからノートパソコンようなものを出して、操作を始めた。よく見れば、ビル・ゲイツ似のメガネ男だった。
「何よりもゴルフが好き…… 非生産的な人生ですね」
男は装置の画面を見ながら、ぼくに話した。
「とは言え、正直者ポイントが溜まっているので、2つほど願いを叶えられる訳ですね」
ちんぷんかんぷんな男の話を聞きながら、ぼくはワザとノロノロと体を起こした。
「言っていることがよくわからりませんが?」
「正直者ポイントを精算しますか?」
ぼくの質問を完全に無視して、男は事務的に質問をしてきた。
二人の間に、静寂が流れる。
男は、おっくうそうな表情を作り、説明を始めた。
「正直者ポイントは分割しての精算は出来ません。つまり、あなたの場合は、2ポイントを一気に使用しなければならない訳です。ただし、ポイントの使用については合計で構いません」
「は? だいたいあなたは誰ですか?」
「その質問の答えもポイント使用範囲に含まれますが、よろしいですか?」
ぼくは、反射的に首を横に振った。

これは夢だ、と理解した。そうなれば、楽しまなければ損だとぼくは考えた。

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