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【第2回】カナディアン・ロッキーの絶品づくし ~カナダ~

2017.04.03 | 鈴木康之

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 バンフスプリングスでは、後にも先にも「あれ以上はない」という、まさに絶品を2つ経験した。

 スタートハウス周辺に独特ののどかさが漂っていたのが印象的だった。ここに立つ人間は皆、絵葉書のようなカナディアン・ロッキーの絶景に抱かれて心が洗われてしまい、球をかっ飛ばそうだの、スコアをいくつで上がろうなどの煩悩はすっかり浄化してしまい、「私もあなたもみんな平和で清らかなよい子」状態になってしまうからではないだろうか。

 9ホールのコースが3つある。私とワイフは森に分け入るランドル・コースとボウ川沿いのサルファー・コースを回った。こんな美しいコースの経験はない。芝の艶が違う。だいたいこの町には埃というものが立たないのではないかと思う。コース内の芝生は無論のこと、コースへ向かう道の両側の芝生すら、贅沢に最高級のカシミヤを織り込んだ生地のように妖しい艶やかさを見せていた。芝の色艶に何度も感嘆の声を出しながら、その上を歩いた。後にも先にもあれ以上に艶やかなフェアウェイは歩いたことがない。

 コースから山のふもとに聳えるバンフスプリングス・ホテルを望むことができる。おとぎ話の絵のようだ。この地の公爵が故郷スコットランドのバンフシャーから町の名前をバンフと改名したと伝えられている。それだけに、ホテルの建物にはスコットランドの古城の様式が見られる。

 さて、世界から観光客が集まるリゾートゆえ、バンフ大通りには十数カ国の料理店が揃っている。バンクーバーから、ウィスラー、カルガリーと食い歩き、カナダ人の味覚センスの高さにはすっかり敬服させられた私たち。ホテルマン、洋品店主人、プロショップの男女スタッフの4人にこの町のおすすめを尋ねた。おすすめの店やメニューはそれぞれだが、話の中に「アルバータ牛」が共通している。いわずと知れたカナダが誇るブランド牛肉である。

 

 

 ステーキでは当たり前すぎる。私たちは漢字の看板の韓国料理店に入ってみた。それが大正解。とりわけ「ロース」と骨付きのプルゴーキ「ブルカルビ」が絶品。なんとふくよかな甘味が溶け込んだ牛肉だろう。「旨いは甘いなり」という味覚の定理をあらためて実感し、「うん、うん」と頷きながら食べた。もう十数年前のことなのに、いまだに口の中に残っている。後にも先にもあれ以上の肉を食べていない。

 そのあとのキムチどっさりの冷麵は、限界に近い激辛だったが、平らげて噴き出した汗を拭い、一息ついているうちにやがて狂乱は通過、平穏が戻り、またアルバータ牛の余韻を戻してくれるという、よくできた仕組みになっていた。

 コースの辺りのボウ川はマリリン・モンロー主演の映画『帰らざる河』のロケ地だったとか。幅数十メートルの河川だが、水量は豊かで、水流が速い。水は深い緑色である。周辺の山の岩石が溶けたための緑色なのだ。

 芝生の色艶といい、牛肉の旨みといい、川の水の色といい、大自然が創造するものの絶大さに、夫婦で頭を垂れた旅であった。

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