【第2回】ＤＶＤ登場！

親会社から新しいメディアの規格が来ます。ＤＶＤというデジタル映像メディアです。

私たちに依頼があったのは、まだプレーヤーが出来ていないので、プレゼンテーション用にＤＶＤの仕様を紹介するデモを制作して欲しいということでした。

ＤＶＤの規格書を読み、どのようなデモを制作するか話し合い、内容を決めていきます。

映像には、アーティストのプロモーション・ビデオを使用することになり、メニュー画面、テキスト表示など基本的な動作をプログラムしていきます。

制作途中でプログラマーと一緒にAppleのWWDCというセミナーのため海外出張もありましたが、毎日セミナー終了後はホテルに閉じこもってＤＶＤデモのプログラミングをしていて、自分が今どこにいるのかも分からない状況でした。

この頃、ある海外アーティストがマルチメディアも積極的に事業展開しているレコード会社と契約したいということで、私の居たレコード会社にコンタクトしてきます。

私は音楽制作のディレクターより呼び出され、そのアーティストに会ってきて欲しいと言われ、一人で宿泊しているホテルへ向かいます。

部屋に入るとアーティストとマネージャーが待っていて、部屋にはMacintoshと専用プリンターなどが並んでいました。

いろいろ話しをしますが、あまり英語が出来なかった私との話しは消化不良の状況で終わってしまいます。

数ヶ月後、再びマネージャーから連絡があり、今度日本でライヴ（確かインタラクティブ・ライヴと言っていたと思います）があるので、来て欲しいということでライヴ当日会場へ向かいます。

少し遅れてライヴ会場に着くとお客さんがほとんど居なくて、機材はあるのですが、すでに終わった様な状況でした。

来ていたお客さんに話を聞くと、機材が電源を食い過ぎて、ブレーカーが落ちてしまい、ライヴが出来なかったということでした。

マネージャーに会うことができ、再び打合せをしたいので後日ホテルへ来て欲しいと言われます。今度は、英語が出来る知人を連れてミーティングに挑みます。

彼が考えているマルチメディア・タイトルの話しは、突拍子もない企画でした。新しい音楽の可能性を感じましたが、メインであるアルバム・リリースでの契約が進まなかったため、残念ながらマルチメディア作品でご一緒することはできませんでした。

その後、親会社よりＤＶＤ－ＲＯＭのデモを制作して欲しいという依頼を受けます。単にＣＤ－ＲＯＭの容量が大きくなったというのでは芸がありません。デモ内容の企画をいろいろ考えますが、映像クォリティが高いＤＶＤの特徴を活かして、ＤＶＤの規格だけでは出来ないデモにしようと考えます。

当時のQuickTimeはまだ画像が小さく、画質も良くなかったので、その映像をＤＶＤで表現するデモ内容の検討を進めます。

そこで思いついたのは、『Peter Gabriel’s Xplora I』のQuickTimeがＤＶＤクゥオリティだったらどんなことが出来るかというアイディアでした。

早速『Peter Gabriel’s Xplora I』の日本語版を制作した会社を通じてアーティストの事務所の社長にコンタクトを取って頂きます。

ＤＶＤ－ＲＯＭでの映像使用の了解をいただき、私たちは企画を進めます。プログラミングは、ＣＤ－ＲＯＭ関連で知り合ったプログラミング会社に依頼します。

普通のＤＶＤでは映像再生中に出来ることが限られています。そこで、ＤＶＤ－ＲＯＭでは、映像再生中にマウスを上下左右に持って行くと映像を止めること無くメニューが現れ、メニューボタンから他の映像に飛ばしたり、文字を英語からフランス語に変えたり、自在に操作できるデモにしました。

完成した作品を確認してもらうためにピーター・ゲイブリエルの事務所があるイギリスに渡ります。親会社のＤＶＤオーサリング担当の方も同行し、彼はＤＶＤプレーヤーでプレゼンテーションし、私がＤＶＤ－ＲＯＭドライブでピーター・ゲイブリエルの事務所の社長にお見せする段取りになりました。

当時ＤＶＤ－ＲＯＭドライブは、ココム関連製品だったため、日本から直接海外に持ち出せなかったため、パソコンは日本から発送し、ＤＶＤ－ＲＯＭドライブはドイツから送ってもらい、イギリスのレコード会社のオフィスで私がアッセンブルすることになっていました。