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音楽の力③ 映像からハイレゾ音楽へ編

【第3回】CD-ROM市場の終焉

2017.03.13 | 前田融

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海外のゲーム会社よりコンタクトがあり、日本のミュージシャンでCD-ROM作品を制作する提案があります。ゲーム機対応のソフトで音楽のリズムに合わせてピッキングして遊ぶタイトルです。販売は弊社ではありませんでしたが、アーティストへのプレゼンテーションなどで協力することになります。ゲーム会社のコンサルタントとして日本人の方がご一緒でしたが、この方とはこれをご縁に現在もお付き合いさせて頂いています。その後ゲームは無事発売されました。

社内に私たち以外に似たようなCD-ROM企画・制作の部署が立ち上がります。家庭用ゲーム機対応のタイトルを制作する部署だという話しでしたが、いざその部が立ち上がるとパソコン用のCD-ROMタイトルも制作するというではありませんか。

制作する作品の方向性も全く違うし、マーケットが小さいのに何で同じ会社に2つもCD-ROMタイトルを制作する部署が出来るのか理解できませんでした。

その部署は、営業部隊もいるため直接パソコン・ショップへの販売する提案をしてきます。自社の商品を直接プロモーションできるので確かに良いとは思いましたが、何か気になります。

ちょうどその頃、大物海外アーティストのCD-ROM企画の話しが舞い込んできました。私は部下と2名でイギリスへ打合せに出かけます。

制作会社を訪問してデモを見せて頂き、日本から提供する制作費などの交渉に入ります。全体スケジュールなども確認しながら、日本での販売戦略も進めました。

会社として正式にパソコン・ショップへの直接販売が決定し、これまでお付き合いしたパソコン流通会社に契約解除のお話しをしに私と上司が伺います。契約解除に伴い、在庫を返品したい旨伝えられます。元々は返品なしでパソコン流通とは契約をしましたが、こちらの都合で解約するわけですから、先方の条件を受けることになりました。

結局店頭にあった在庫まで全て戻ってきて、返品のお陰で私の部署の売上はマイナスになります。返品されたショップへ再度営業して商品を納めるように別の部署のCD-ROM営業スタッフに話しをしますが、自分たち部署が制作した新作の納品を優先させるため、先我々の商品をなかなか営業してくれません。

私たちの部署は返品が長期に渡り続き売上がマイナスだったため、ついに部署を解散することに話しが進展します。私は、会社に対しデジタル・コンテンツの制作で培った人材が絶対今後レコード会社にも必要になるので部署を解体しないようにお願いしますが、願いはかなわずメンバーはデジタルとは無縁の部署に配置転換され、私は社長室で会社の売上を見る仕事を与えられます。

せっかく打合せをしてきた大物海外アーティストのCD-ROMタイトルは、別の部署に託すことになり、私は一切のCD-ROMビジネスから手を引くことになりました。

どうも私は填められたようです。詳しくここで書く訳にはいきませんが、社内で妬まれていたようです。

私たちが撤退したころからCD-ROM市場はだんだんシュリンクし始めました。

もしかしたら潮時だったのかもしれません。

今後どうすべきか考えました。これまで培ってきたデジタルの技術は今の部署では全く活かされません。これまで知り合った人脈もこのままでは役に立たなくなります。

しかし、妻も幼い娘もいましたので、会社を辞めるというのは勇気の居る決断でした。今後やりたいことも見えていません。

いろんな方々に相談しました。すると親会社の知人からDVDコンテンツを制作する会社に出資をして本格的に作品創りをするので、そこで一緒にやりませんかとお誘いを頂きます。

その制作会社の取締役に面接のため会いに行きます。元々ポスト・プロダクションの会社で制作受託をするスタジオなのですが、今後オリジナル作品の制作もしたいということで契約交渉をします。

部署が無くなり、目標が音楽から映像に移り始めました。しかし、私が培って来たものを活かした仕事にしようと思い、デジタル・コンテンツのプロデューサーとして今後活動しようと決意します。映像もデジタルを活かした作品創りを目指すことにします。

私が立ち上げたCD-ROM市場は私の退職後跡形も無く消滅してしまいました。

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