まだ春の訪れの気配すら感じられない3月末の五稜郭内で榎本、龍馬、そして、歳三の3者会談は、続けられていた。
この蝦夷地に今や世界最強となった艦隊を率いて凱旋した理由を尋ねる榎本の問いに対して、龍馬はあっけらかんと「リベンジ」と答えた。
その問いに、榎本は絶句した。
それでも、歳三が「〝 リベンジ〟とは、何事ぞ?」と、尋ねると、龍馬より早く、榎本が回答した。
「〝リベンジ〟とは、イギリス語の〝復讐〟や〝あだ討ち〟のことだ」
榎本なりに、この龍馬の言葉は嬉しかったらしい。
理由は、どうあれ、龍馬が復讐やあだ討ちを目的に、この地に私設艦隊を率いて、訪れてくれているという事実は、見方を変えれば新政府に対して、戦いを挑む同志となってくれるのだろうと期待した。