【第5回】 | マイナビブックス

100冊以上のマイナビ電子書籍が会員登録で試し読みできる

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

    二

 

 松は常盤木と申しますから、真冬になっても緑のままです。

 あれはまだ枝に雪がちっとばか残っとりましたから、二月の初め頃ですか。おまさ坊が女学校にあがるって年でした。

 夜明け前の、まだ東のほうさえ白みもしないときでした。すぐそばで人の気配がするんで、気がついたんです。見てみると、圭太が幹に手を当てて立っとりました。こう、きつく眉を寄してね。風呂敷包みを背にしとりましたから、すぐにただごとじゃないとわかりましたよ。

 私はびっくりして、思わずおまさ坊を呼びました。すると不思議なこともあるもんですね、部屋の障子がスラッとあいて、本当におまさ坊が顔を出したんですよ。おまさ坊は旅支度の圭太を見るや、顔色を変えて、裸足のまんま外へ出てきました。

続きをご覧いただくには、会員登録の上、ログインが必要です。
すでにマイナビブックスにて会員登録がお済みの方は下記の「ログイン」ボタンからログインページへお進みください。

  • 会員登録
  • ログイン