【第07回】My pleasure.(はい、喜んで) | マイナビブックス

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ゴルフ千物語①

【第07回】My pleasure.(はい、喜んで)

2017.02.27 | 篠原嗣典

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My pleasure.(はい、喜んで)




ゴルフ場の食堂という所は、面白い所だ。朝7時のオープンと共に入ってくる人々は、一様に輝いて見える。ピカピカの1年生が小学校に行くのが楽しくてしようがない時の無邪気な瞳の輝きが、ほぼ全ての人の瞳の中に見ることが出来る。

コーヒーを頼み、心を落ち着ける人。ビールを飲み、自分を誤魔化そうとする人。普段だったら朝食など食べないのに、目玉焼きとトーストを旨そうに食べて、腹が減っては戦は出来ぬ、と気合いを入れる人。たった一人でテーブルに座って、まだ何も書かれていないスコアカードを見ながらニコニコしている人。4人掛けのテーブルに何脚も椅子を足して集団で和もうとする人。

これから始まるそれぞれのストーリーは誰も予想が出来ない。ゴルフに魅せられる人の多くは、普段の人生では既に予想できないような波乱がない人である。よく言えば安定した、悪く言えば先が見えたドラマにうんざりしているところに、自らが演じることが出来る唯一の不確定なドラマがあれば、誰でも参加したいと思うのは当然のことである。

そんなドラマの幕が開く直前、出演者たちは食堂に集まるのである。そして、誰もがハッピーエンドで終わることを信じているから美しいのである。

幕が開き、それぞれのドラマは始まる。長いドラマだ。

ドラマは第1幕と第2幕に分かれる時がある。幕間には休憩がある。彼らはその間、食堂に現れて、食事をする。これも微妙に面白い。何を基準にメニューを選ぶのか、ここにも小さな人間模様を見ることが出来る。この段階でも、私は少しだけ役に立てる時もある。

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