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ゴルフプラネット 第43巻

【第3回】凍ったグリーン

2016.10.27 | 篠原嗣典

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凍ったグリーン

 

 冬のゴルフで一番難しいのは…… 色々とあるだろうけど、やっぱり凍ったグリーンへの対処だろう。

 

 昔、知り合いに頼まれて、あるレッスンプロのラウンドレッスンに付き合ったことがある。その日は、めちゃくちゃ寒くてグリーンはカチンコチンだった。

 

 知り合いはプロに、凍ったグリーンをどうせめたら良いかを聞いた。プロは、しれっと答えた。

 

「手前のグリーンエッジを狙って打つんです。グリーンエッジは、少し柔らかいのでボールのエネルギーが吸収されてグリーンに乗ります」

 

 2番目のホールはパー3だった。プロが打ったボールは、グリーンの手前に落ち、跳ねてグリーン後方のOBに。知り合いが打ったボールは手前のバンカー。私が打ったボールはグリーン右のラフ(意図したわけではなく、ミスしてそこにいった)。上がってみればプロは7、知り合いは5、私は3。

 

 1つのホールの結果を掲げて、全てに繋げるつもりはないが、その日のラウンドレッスンはそのホールをきっかけに散々なものになった。期待が大きすぎた場合に、ゴルフではよく起きる混乱である。

 

 それらの経験を引き合いに出すまでもなく、冬ゴルフの難易度が上がる最大の要因は凍ったグリーンなのである。温暖な地域でゴルフをしている人には無用の心配だろうし、雪が降る地域ではクローズしたゴルフコースの話で現実味が薄いかもしれない。気温が下がっても雪がなければプレーが出来るというゴルファーにとっての幸せを得られる交換条件として乗り越えなければならない壁が、凍ったグリーンなのかもしれない。

 

 色々な対処がある。スタート時間を遅くして、グリーンが柔らかくなってからスタートするというのも技だろうし、はなからそういうものだと覚悟をして、大叩きしても全く気にしないという強引なやり方もあるだろう。回避は出来ても、凍ったグリーンが消せるわけではない。逃げようとすれば、予期しない変更などで追い着かれてしまうのが、不幸の魔力であることを忘れてはならない。

 

 私が実践しているのは、グリーンを大きく考える、というやり方だ。最高に当たってもグリーンエッジまで、絶対にグリーンに直接届かない番手でグリーンの手前、そこにハザードなどがあれば、グリーンサイドを狙って打つのである。

 

 パーオンを諦めて、ショートゲームで凌ぐボギーオンにするのか、と問われれば「その通り」としか答えられないが…… 私は狙ったところにいったら自分の中でパーオンだと呟くことにしている。そして、原則として、そういうケースでパター1本しか持たずに次のストロークに向かうのだ。

 

 これを決まり事にするのであれば、パターが使えるところに目がいくようになる。代表例は花道である。

 

 パターを持つことで、パーオンというスイッチは自然と入る。テキサスウェッジ(グリーン外からパターで寄せるアプローチのこと)は難しいラインのロングパットと同じだと思えば、3パットでもOK。少しでも寄ればラッキー。というような発想になる。普通のチッピングでの寄せは、第一バウンドが凍っているグリーン上でどう跳ねるかは予測しづらいことを考えれば、難易度は同等か、少し慣れればパターの方が易しいはずだ。

 

 もちろん、グリーンまで20ヤードもショートして、かつ、ピンが奥でエッジからピンまでが20ヤードもあるようなケースをパターで寄せるのは無理だという人もいるだろうから、そういう場合は決まり事から外す条件を決めておけば良い。

 

 肝に銘じなければならないのは、凍ったグリーンは最高難度だということである。難しいものに立ちむかう際に重要なことは確実に出来る手段を選択するということである。パーをキープするのは困難でも、ボギーで済む可能性が高い選択肢として、パーオンと決めてパターを使う作戦は優秀である。

 

 通常のアプローチはグリーンの状況によって寄る確率が不安定であるだけでなく、失敗した際にボギーもままならないという状況に追い込まれることが多々ある。少し考えれば、机上の理論でも優劣の判断が出来るし、慣れという意味で、練習グリーンの周辺でもカラーや周辺の芝生を含めたパットの距離感を確認することは安易にできる。

 

 凍っているグリーンは跳ね方が予測できないから難しい。バウンドを計算しなくて済むパットは、強烈な武器になるし、冬の間に身に付けた距離感や鍛えられる想像力は、春以降にも自分の力になる。

 

 春になって最も効果が現れるのは、長いパー4やパー5の攻略に太い柱が通ったようになることだ。グリーンの近くまで運んで寄せて入れる方法は何通りもあるが、選択肢がないまま確証がない不安を抱えて失敗を引き込んでしまう例がたくさんある。

 

 転がす易しさなどの利点を体験を持って知っていることは、自然と選択肢を増やし、優先順位を決めやすくもなるからだ。

 

 目標や合格点を下げてやることで、結果としてアベレージが上がることがゴルフには多々ある。現実を見て、それに合わせた確実な対策を立てる。夢見るゴルフも悪くはないが、現実に成果が出るゴルフはその何倍も面白いに決まっているのである。

(2010年1月28日)

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