【第2回】念仏 | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第43巻

【第2回】念仏

2016.10.20 | 篠原嗣典

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念仏

 

 どんなにゴルフに精通していても、強いゴルファーでも、大叩きをすることはある。ゴルフがボールを連続して打ちながらホールアウトを目指す競技である限り、トラブルがあればその数がとんでもなく多くなることは避けられないからだ。

 

 ゴルファーとしての強さが問われるのは、大叩きをしない選択をする洞察力と決断力もさることながら、大叩きしたあとにそれを引きずらない方法を知っているかどうかだと言える。

 

 賞金王の石川遼プロだって1ホールで9打ということがあった、と見本となる強いゴルファーも人間なんだからと考えて、心を落ち着けるというハウツーが、スポーツ心理学の本などには書かれている。過剰な期待をして、心に負荷がかかっている状態を一旦解いてやるというわけだ。

 

 一見して、効果がありそうな現実直視型のハウツーを私は『みつお法』と呼んでいる。人間だもの、と等身大の強さを訴え続けた詩人(?)から命名したものだ。

 

 人によって効果は様々であり、みつお法でスッキリする人もいる。しかし、現実直視はゴルファーが最も苦手とするハウツーでもある。自分より少し上手い自分という虚勢を張ることが、ゴルフの自信の骨格になっているゴルファーは案外と多いからだ。そういう人には、みつお法の効果は薄い。

 

 引きずっていないと言いつつ、いつもの実力が出ないまま、ダラダラとオーバーパーを続けてしまうパターンは、みつお法が悪い方に機能している例だと言える。大叩きより自然じゃん。パーなんて取れなくとも、人間だもの……

 

 私は念仏を唱えると説明した。そのまま念仏法である。

 

 例えば、8打を打ってしまったら次のホールのティーショットまでの間に、私は8回「南無阿弥陀仏」を唱える。早口のような速度で、指を軽く折ってカウントして、目を閉じ気味、一気に一息で唱える。最後の8回目だけゆっくり「ナームアーミダーブーツー」と息が続く限り伸ばす。

 

 声は吐息混じりというぐらいの大きさでも良い。人に聞かせる目的ではないからだ。しかし、暗唱では駄目だ。必ず小さくとも声にすること。出来れば、目を閉じるか、半眼にすることもオススメする。

 

 念仏にしているのは、私がお寺で念仏を聞くと心が落ち着くからでその音が好きだからだ。唱える言葉は、念仏である必要はない。好きなものでも良い。アーメンでも良いし、アイスクリームでも良い。自分の心が落ち着く音を見つけよう。

 

 大叩きしてしまった1打1打に成仏して欲しい、という意味で念仏は好都合であるのだが、意味は後付けである。数を揃えること、一気に一息で言えるようにすること(駄目だったらやり直し)、光を遮断すること…… こちらが本体である。

 

 1つ1つを説明すると長くなるが、これは儀式である。この儀式、宗教ではなく、ちゃんと科学的な裏付けがバッチリあるものなのだ。

 

 やってみるとわかるが、儀式が終わって目をゆっくり開けると、世界は間違いなくリセットされている。次のホールから全力で戦える準備も出来ているのだ。

 

 掛かっても数十秒。早ければ10秒もかからず終えられる儀式だ。大叩きの現実を消し去ることはできないが、整理することで忘れる儀式を知っていて実行できるゴルファーは強い。

 

 ここでモニターから目を離して、1回やってみよう。心を静かにして、できれば、何度かやってみることをオススメする。目を開けたとき、心がリセットされている感じがあれば、ゴルフに十分に使える。何度か練習すれば、明日からでもコースで使えるはずだ。

(2010年1月21日)

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