【第2回】グリップにおける冒険 | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第39巻

【第2回】グリップにおける冒険

2016.10.19 | 篠原嗣典

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グリップにおける冒険

 

 神経質というほど敏感というタイプではないが、れなりのこだわりは持っているつもりである。

 

 例えば、グリップなんかは、ある程度の固さがあるのが好きで、柔らかいと力が入りそうなので、もっぱらコード入りを使用している。ついでに書けば、グリップの太さにもこだわっている。

 

 使っているシャフトが同じで、グリップも同じで、下巻も同じであれば、諸々の公差(同じように作っても、微妙に大きかったり小さかったりする範囲のこと)があったとしても大体同じにはなる。ショップ時代の修業のお陰で、その辺の職人には負けないレベルには自分でグリップを挿せるので、徹底して調整する。

 

 そんなようなこだわりがあるので、フルショットするクラブのグリップは全て一緒にするのが正しいと信じている。だから、グリップがバラバラでも平気な人を見ると『信じられない』と絶句していた。

 

 しかし、この1年ぐらいの間、私はバラバラのグリップでプレーしていた。共通点はバックラインがあるということだけだ。

 

 アイアンは同じものだが、ウェッジは少しそれより太いコードが入っていないものにした。これは、購入したばかりのウェッジのグリップが使ってみたら良い感じだったので、それを参考にしてそうなったものだ。太めのやや柔らかいグリップは、グリップを短く握ったときに収まりが良いことが一番の利点のようだ。ウェッジはケースバイケースで短く握ることがある。

 

 まあ、ウェッジのグリップのみ違うというのは多々あることで、私も数年間、バックライン無しのものを使っていたこともある。

 

 ウッドは、自分の中で迷いがあったので、気分転換のつもりで、色々と試した。結局、ドライバーは、昔ながらのスイングライトのコード入りが最も良かったので、それが装着されている。スプーンは、アイアンと同じ感じにしたかったので、アイアンと全く同じものをつけている。地面にあるボールを打つのだから、という発想だが、イイ感じである。ちなみに、このグリップはやや先細いのが特徴のようだ。

 

 ハイブリッド(ユーティリティー)は、ウェッジと同じものが付いていたのでそのまま使用している。理由は極めて簡単で、ボールの高低を打ち分けるときやライが悪いときなどに、グリップを短く握ることがあるからだ。このグリップは、一応、市場では最も売れているシリーズだが、太い感じが受けている理由なのだろうか、と勝手に考えている。

 

 ということで、私としてはゴルフを始めて以来といって良いほど、色々なグリップを同時に使ったのであるが、これが意外なことを確認するきっかけになった。

 

 色々なグリップを使うことへの違和感は正直言うとかなりある。最も最近になってバッグに入ったスプーンのグリップをアイアンと同じものにしたのは、違和感を良しとはしていない証拠だ。

 

 そういう違和感があっても、やり続けたのは自分のゴルフへの不信を払拭するための試みの一つだった。こだわり続けていることの中に問題の本質があれば、私自身が気付くことはない。強いてこだわっている部分に切り込んで、その意味を再確認しようと思ったのだ。

 

 思い切ってやったことだったが、無駄なのかもしれない、と諦めかけたら、先日、とんでもないことに気が付いた。無意識に、左手のグリップがかぶりすぎていたようなのだ。

 

 飛ばしたいという意識がそうさせたのだと直感した。

 

 左手のグリップがストロングになりすぎると、フックをする。それを嫌がって、球を上げて安定させようとすれば、左の脇が甘くなり、結果としてフィニッシュが不自然に高くなる。

 

 フィニッシュの収まりが悪いことが、ずーっと不満だった。もう何年にもなる。シャドースイングならできることが、ボールを打つと途端に出来なくなる。

 

 ほんの数ミリ。グリップをウィークにするのは勇気がいるが、やってみた。世界が変わるぐらいの衝撃を受けた。

 

 グリップの握りはしょっちゅう意識してチェックしていたが、微妙に見えないぐらい少しずつズレていったのかもしれない。色々なグリップを使ったことで、違和感があり不安になり、何度も詳細にチェックしたことで、小さくともずれていることがわかるなんてドラマだと、1人で盛り上がった。

 

 フィニッシュの収まりは、急に良くなって、逆に気持ちが悪い。アームワーキングも急に自由にクラブが動きたいように動くようになったような気がする。練習が楽しくなった。そして、初打ちも楽しみになった。

 

 山があれば谷もある。川や海もあるし、砂漠もある。ゴルフという旅は永遠である。

(2009年1月15日)

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