フウモは悲しくて悲しくて、泣きました。
こよみちゃんの所に帰りたくて、ポロポロ、ポロポロ泣きました。
すると、フウモの隣に捨てられていたクマのぬいぐるみが、話しかけてきました。
「何で、そんなに泣いてるの?」
フウモは、泣きながら言いました。
「僕、大好きなこよみちゃんに、捨てられちゃったんだ」
ポロポロと泣くフウモに、クマのぬいぐるみは言いました。
「そんなの、どうでも良いじゃないか。僕らみたいなぬいぐるみは、人間のお友達とたくさん遊んだご褒美に、人間に生まれ変わる事が出来るんだ。きっと夜になれば、神様が僕達を迎えに来てくれるよ」
その後も、ゴミ捨て場には、たくさんのおもちゃやぬいぐるみが捨てられていきました。
でも、みんなとても嬉しそう。
「僕は、男の子に生まれ変わって、サッカー選手になるんだ」
「わたしは女の子に生まれ変わって、ケーキ屋さんになるわ」
と、ゴミ捨て場は大賑わい。
やがて夜になり、辺りがしいんと静まり返ると、突然ゴミ捨て場がぱぁっと明るくなり、空から神様が降りてきました。
神様は、ゴミ捨て場のぬいぐるみ達を、ひとりずつ天国へと連れていきました。
天国で、人間に生まれ変わる準備をするのです。
ひとり、またひとりと天国へと登ってゆき、ついにフウモの番になりました。
「さぁ、フウモ。一緒に天国に行き、人間に生まれ変わる準備をしよう」
そう言うと神様は、フウモと手をつなぎました。
でも、フウモは天国に行こうとしません。
「僕、天国には行きたくない。人間に生まれ変われなくてもいいから、こよみちゃんと一緒にいたい」
一向に天国に登ろうとしないフウモに、神様は言いました。
「もう一度、こよみちゃんに会わせてあげる事は出来る。しかし、そうすると、フウモは人間に生まれ変わる事は出来なくなる。この世から消えてしまうんだ。それでもいいかい?」
フウモは、頷きました。
「それでもいい。もう一度、大好きなこよみちゃんと遊びたい」
神様は仕方なく、特別にフウモをこよみちゃんの夢の中に連れて行く事にしました。
夢の中では、フウモは自由に動く事ができ、言葉も話せます。
フウモは大喜びし、夢の中で、こよみちゃんとたくさん遊びました。
寂しかった時間を忘れるくらい、たくさん、たくさん遊びました。
二人が仲良しだった、あの頃のように。
でも、夜が明け、こよみちゃんが夢から醒める時間になると、遠くから神様の声が聞こえてきました。
「フウモ、おしまいの時間だ。戻っておいで」
フウモは立ち上がると、こよみちゃんに言いました。
「こよみちゃん、今まで本当にありがとう。僕、こよみちゃんのこと、大好きだったよ。さようなら」