十六時五十分頃、総合庁舎前でタクシーに乗って友作の帰りをのんびり待っていた季範の携帯に一着の電話がかかって来た。陶組の組員からだ。なんだなんだと言って受話器を握ると、かなり興奮した若造の声が聞こえた。
「よく分からん。落ち着いて喋ってくれないか」
「すんまへん。あい分かりました。さっき圏央道の桶川から久喜を俺らで見廻ってたら、遊びに来てたか知らんっすけど、あ、あの木更津軍団を見かけやした!」
「おい、それ本当か!?」
「本当ですとも兄さん! あの紅カブトがいたんでしから!」
「な、何だと! 真紅のストリートグライドか!」
「あい! うっとりしやした!」
「どっちに向かった?」
「えー、ジャンクションで東北道に乗り換えて上京ってるんじゃないすか? 追いかけたかったがぁ早……」
「不味い、戦の準備だ!」
「え……?」
組員が口を開こうとする時には既に季範は電話を切って、晴貴に急いで電話した。彼には途轍も無く嫌な予感がしたのだ。
「季範です。親方、至急戦闘の準備を!」