市原会は大騒ぎになっていた。
市原会事務所の十五畳程の和室で里見の報告を受け、幹部や上級の組員が皆、動揺している。
「まさか、陶組の仕業じゃねえのか?」
スキンヘッドの男が言った。すると、そうだそうだと他の組員も騒ぎ始めた。
「既に陶組はサイタマの国政に頭を出しとるという噂もあるしな」
「くそぅ。合法戦法か、汚ねえぜ」
騒ぎの中、全身シルクの黒いスーツを着た男が和室の襖をサッと開けた。が、皆気づかない。
「貴様らっ! 下らねえ噂ばかりしてると、チキンになっちまうぞ!」
幹部や組員はハッと我に返り、シルクのスーツの男へ身体ごと向けた。
沈黙。
「ははっ。下らぬ事で騒ぎ、申し訳ござんした!」
幹部の一人が、土下座で謝った。
「東様、おかえりなさいっ!」
若い組員達が土下座で挨拶する。