2,Father
日曜日、友作は一階から聞こえる言い争いの声で目が覚めた。友作はカーテンを両手でバッと開けて道路を見た。「蠣崎タクシー」が止まっていた。友作の父のタクシーである。
(父さんが帰って来ている!)
友作はそう思うと、階段を滑る様に下って「おはよう!」と両親に調子の良いあいさつをした。丁度、友作の父母は口論中だった。友作の父、季範は友作の母から顔を逸らして友作を向いてニヤリと笑った。彼は友作と同じく美形の顔立ちをしているが、日に焼けておりショートの髪型をしている。また、見るからに強そうな身体付きであった。
「久しぶりだな、友作!」
ノリのいい挨拶をした。
「なんで、母さんがいる時に帰ってきたの?」
友作は即、気になっていた質問をした。季範は浮気が理由で友作が六歳の頃、友作の母から家を追い出されてしまい、それ以来は別居していた。