【第2回】高木謙一郎 ―(2) | マイナビブックス

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ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション5

【第2回】高木謙一郎 ―(2)

2016.08.12 | 酒缶

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2.キングの服が破れるじゃないですか

 

酒缶 『カグラ』を作る上で、過去のベルトスクロールアクションゲームからどのような影響を受けていますか?

高木 『ダブルドラゴン』(※1)とか『クライムファイターズ』(※2)とかあの辺でガーッとハマって、その後カプコンさんのベルトスクロールアクションブーム、『天地を喰らう』(※3)とか中高生ぐらいによく遊びました。

(※1)『ダブルドラゴン』
1987年にテクノスジャパンがアーケード向けに発表したアクションゲーム。ベルトスクロールアクションゲームの元祖とも言える作品。

(※2)『クライムファイターズ』
1989年にコナミ(現:コナミデジタルエンタテインメント)がアーケード向けに発表したベルトスクロールアクションゲーム。

(※3)『天地を喰らう』
1989年にカプコンがアーケード向けに発表したベルトスクロールアクションゲーム。本宮ひろ志原作の漫画が原作で、1994年にNECアベニューがPCエンジンSUPER CD-ROM²向けに移植作品を発売している。

酒缶 いわゆる横スクロールのアクションゲームと比べると、奥行きが付いて3Dじゃないけどなんとなく立体感を感じるゲームが出てきた時代ですよね。

 

(C)2011 MarvelousAQL Inc.

 

高木 ベルトスクロールアクションがすごい好きだったけど、どうしても気に入らないところがあって……例えば『ファイナルファイト』(※4)のコーディーで普通のコンボを当ててアッパーで吹き飛ばして相手が浮いたところでずっと蹴りたいな、と思っていたんですよ(笑)。

(※4)『ファイナルファイト』
1989年にカプコンがアーケード向けに発表したベルトスクロールアクションゲーム。スーパーファミコン他色々なハード向けに移植されている。

高木 『MARVEL VS. CAPCOM』(※5)のエリアルレイヴ(※6)のような近い考えのモノが出てきましたけど、ベルトスクロールでやっぱりあそこ蹴りたいな、と思って、アッパーの後にジャンプキックとかしていたんです。

(※5)『MARVEL VS. CAPCOM』
正式名称は『MARVEL VS. CAPCOM CLASH OF SUPER HEROES』。カプコンが1998年にアーケード向けに発売した対戦格闘ゲーム。後にドリームキャストやプレイステーションにアレンジ移植されている。

(※6)エリアルレイヴ
高く浮かせた敵に空中で連続技を食らわすコンボのこと。

 

 

高木 当たりもしないのに……。

酒缶 そういう操作、ついついやってしまいますよね。

高木 シンプルにそこで攻撃が当たって更にコンボ1セットを当てたかったんです。

 

(C)2011 MarvelousAQL Inc.

 

酒缶 普通の対戦格闘ゲームだとハメですけど。

高木 でも、1人用や協力の2人用なので「いいじゃんハメても」みたいな感じで「それがついにできた!」みたいな。

酒缶 なるほど。

高木 アーケードの『美少女戦士セーラームーン』(※7)はステージ全体のストーリー性みたいなものが好きだったんです。

(※7) アーケードの『美少女戦士セーラームーン』
1995年にバンプレストがアーケード向けに発売したベルトスクロールアクションゲーム。

高木 背景の絵一つとっても、タキシード仮面が出てきていい感じで原作を表現しているのが好きだったし、何よりもパンチラもするし。

酒缶 なるほど。『ファイナルファイト』から続く硬派なタイプのベルトスクロールアクションよりも『セーラームーン』の方が『カグラ』にイメージが近いですね。カットインもあるし。

高木 元々僕は美少女モノ、というか、アニメモノは中学生ぐらいまで嫌いだったんですよ。「気持ち悪い」とか言って。でも確か高一か高二くらいのときに、偶然、ゲームセンターの隣にあったアニメイトで5人に増えている「セーラームーン」のグッズを見てしまって「可愛いな」と思って買ってから完全に転落しました。

酒缶 (笑)目覚めちゃいました?

高木 思春期特有の「僕はそんなんじゃない」と思っていたんですけど……アーケードゲームの『セーラームーン』はゲームの完成度が高かったんです。

酒缶 お仕事で『ネギま!?』(※8)や『To LOVEる』(※9)に関わっていた時には、アニメは大好きになっているんですよね?

(※8)『ネギま!?』
週刊少年マガジンで連載され、アニメ化された『魔法先生ネギま!』はゲームにもなっていて、高木氏はニンテンドーDS向けに発売された『ネギま!? 超麻帆良大戦チュウ チェックイ~ン全員集合! やっぱり温泉来ちゃいましたぁ』とWii向けに発売された『ネギま!? ネオ・パクティオーファイト!!』を担当。

(※9)『ToLOVEる』
週刊少年ジャンプで連載され、アニメ化された『To LOVEる』はゲームにもなっていて、高木氏はニンテンドー向けに発売された『To LOVEる ワクワク!林間学校編』とプレイステーションポータブル向けに発売された『To LOVEる ドキドキ!臨海学校編』を担当。

高木 全然好きですよ。パンツ大好き(笑)。

 

 

酒缶 『To LOVEる』のミニゲームで女の子にミルクをかける(※10)のもアニメ好きの流れなんですか?

(※10)ミニゲームで女の子にミルクをかける
ニンテンドーDS『To LOVEる ドキドキ!林間学校編』には、女の子が差しだすイチゴにミルクをかけてあげる「イチゴみるくクレイジー」というミニゲームが存在する。このゲームではイチゴにミルクをかけてあげるつもりが外してしまうと女の子がミルクまみれになってしまうため、色々な意味で申し訳ない気持ちになってしまう。

高木 やっぱり、「とにかく白いものをかけたいね」という……これ大丈夫ですかね?(笑)とにかく変なことをしたいと常に思っていて、なるべく理由が付けられるようにしていて、あくまでもいちごにミルクをかけていてそれが外れただけです。

酒缶 正直ボク、その高木さんが関わっているかどうか知らないでサイトの情報を見て「バカだな」と思っていました。褒め言葉として(笑)。なるほど。たくさん遊んでいた硬派なゲームとアニメ原作タイトルとの繋がりが気になっていたんですけど、今、完全につながりました。

高木 後、影響を受けたタイトルとして『龍虎の拳』(※11)などSNKさんのタイトルがあって……。

(※11) 『龍虎の拳』
1992年にSNKがネオジオ向けに発売した対戦格闘ゲーム。

高木 当時のSNKさんのタイトルには荒々しさを感じたんですね。カプコンさんとかは面白いんですけど、丁寧に綺麗に作っている感じだったんです。でも、SNKさんは荒っぽい、勢いで殴り描いたみたいなパワーがあって、中学生くらいの僕には魅力的に見えて、そこからSNKのタイトルを好きになりました。

酒缶 じゃ、これはベルトスクロールじゃなくて、荒々しさというか、コンボがすごく効いちゃうぞ、というような構成が『カグラ』に影響を?

高木 じゃないですけど、『龍虎』はやっぱり、2本目のフィニッシュを必殺技で締めるとキング(※12)の服が破れるじゃないですか。

(※12)キング
『龍虎の拳』に登場するムエタイ使いの用心棒。外見は完全に男性だが、1本取った後の勝負のフィニッシュに必殺技を決めると服が破れて胸元が見えて、真相が明らかになる。

 

(C)2011 MarvelousAQL Inc.

 

高木 「そうそうこれこれ、そのピンクのブラが見たいんです」みたいな。だから1日1回、『龍虎2』(※13)でユリ(※14)のブラを見ないと気が済まなくて、うっかり普通に倒しちゃった日には、「はぁ…」って。

(※13)『龍虎2』
正式名称は『龍虎の拳2』。SNKが1994年にネオジオ向けに発売した対戦格闘ゲーム。

(※14)ユリ
本名はユリ・サカザキ。『龍虎の拳』では拉致されて行方不明になり、救出された後で護身用に極限流空手を習うも、『龍虎の拳2』ではプレイヤーに脱がされてしまう不憫なヒロイン。

酒缶 過去のベルトスクロールのゲームって、ストーリー性があってゴールすると終わり、ボスを倒すと終わり、というのが基本ですけど、『カグラ』はステージによってクリア条件が違ってバリエーションが豊富ですよね。どうしてこういう作りになったんですか?

高木 やっぱり昔のアーケードゲームの考え方と今のコンシューマの違い、パッケージゲームとしてはこういうスタイルがいいんだろうな、というところから作っています。今、「4,800円でステージが6つや7つしかないゲームを出したらウケますか?」と言われたら、「ボリュームないな」「遊び応えないな」と……。

 

(C)2011 MarvelousAQL Inc.

 

酒缶 『勇者30』(※15)も1つのシステムをいかに幅広く遊ばせるか、という作りになっているので、高木さんの作るゲームの特徴なのかな?と思い、「パッケージとしていかにボリュームを出すか」ということと「開発側にいかに負担をかけないか」ということの2つの要素があるのではないかと思ったんです。

(※15)『勇者30』
2009年にマーベラスエンターテイメント(現:マーベラスAQL)がプレイステーションポータブル向けに発売した超速RPG。30秒で目的を達成するゲームが4種類収録され、2011年には続編の『勇者30 SECOND』が発売された。
公式サイト http://www.maql.co.jp/special/game/30/

高木 そこの両立はありますね。すごく大きな予算を毎回取れるわけでもないのでなるべく工夫しています。

酒缶 ユーザーにしてみれば楽しめればいいわけで、お金をいっぱいかけたから面白いとは限りませんもんね。『カグラ』で一つ気になったところがあって、ベルトスクロールって縦方向に移動しにくいじゃないですか。たまに奥行きのあるマップがあって、ボクはちょっと遊びにくかったんですよ。

高木 あるかもしれないですね。

酒缶 『カグラ』の中で、手前や奥に移動する面で、奥に行くと手前が見えないとか横の方が見えないこともあり、色々とジレンマがあったんですけど、それは色々なバリエーションを出すにあたっての限界だったんですか?

高木 もうちょっと考えれば何かあったのかもしれないですけど、普通に作ってしまうとどのステージも同じサイズになってしまうんです。じゃあ、広いところを作ったとして、同じカメラを使ってしまうと奥に行ったときにメッチャ小さくなってしまって面白くなくなっちゃうんです。奥に行ったらズームをすると確かに手前が見えなくなってしまいますけど、やっぱりキャラを見たいということを優先した部分はありますよね。

酒缶 ま、ボクもあんまりゲームはうまくないんですけど、繰り返して遊んでいる内に、奥行きも慣れでどうにかなるのかな、と思ったり。

高木 そうですね。慣れもあります。厳密に位置取りするゲームではないから、だいぶ緩くしているので。

 

 

酒缶 空中コンボは、敵を倒しているのかモノを壊しているのかわからないくらい、全部を吹っ飛ばしている気持ちよさがありました。厳密に1人ずつしか倒せなかったら大変なことになりますよね。

高木 大変なことになりますし、地味になります。

酒缶 その辺りはかなり豪快ですよね。

高木 基本的に気軽に遊んで欲しいというのはあります。特にキャラクターだったり、美少女モノだったりするので、まぁ、そこは深く考えずにプルプルドカドカやってよ、という感じのゲームです(笑)。

 

(C)2011 MarvelousAQL Inc.

 

酒缶 最後、厳しかったですね。ボクはキャラを合わせると100%にいっているけど、何キャラかクリアできてない面があって、やっぱり最後の敵5人を倒すのは厳しいですね。大道寺先輩を倒すのも相当厳しいですけど。

高木 そこはクリア後なのでいいかな、と。『勇者30』なんかも難易度を抑えているんですけど、最後に『勇者3』という3秒のゲームがあるんです。「最後の最後にどうよ!」って。クリア後はハードなヤツを入れたいと思ってます。笑っちゃうような、もう負け、みたいなモノを入れたいですね。

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