2.キングの服が破れるじゃないですか
酒缶 『カグラ』を作る上で、過去のベルトスクロールアクションゲームからどのような影響を受けていますか?
高木 『ダブルドラゴン』(※1)とか『クライムファイターズ』(※2)とかあの辺でガーッとハマって、その後カプコンさんのベルトスクロールアクションブーム、『天地を喰らう』(※3)とか中高生ぐらいによく遊びました。
酒缶 いわゆる横スクロールのアクションゲームと比べると、奥行きが付いて3Dじゃないけどなんとなく立体感を感じるゲームが出てきた時代ですよね。
高木 ベルトスクロールアクションがすごい好きだったけど、どうしても気に入らないところがあって……例えば『ファイナルファイト』(※4)のコーディーで普通のコンボを当ててアッパーで吹き飛ばして相手が浮いたところでずっと蹴りたいな、と思っていたんですよ(笑)。
高木 『MARVEL VS. CAPCOM』(※5)のエリアルレイヴ(※6)のような近い考えのモノが出てきましたけど、ベルトスクロールでやっぱりあそこ蹴りたいな、と思って、アッパーの後にジャンプキックとかしていたんです。
高木 当たりもしないのに……。
酒缶 そういう操作、ついついやってしまいますよね。
高木 シンプルにそこで攻撃が当たって更にコンボ1セットを当てたかったんです。
酒缶 普通の対戦格闘ゲームだとハメですけど。
高木 でも、1人用や協力の2人用なので「いいじゃんハメても」みたいな感じで「それがついにできた!」みたいな。
酒缶 なるほど。
高木 アーケードの『美少女戦士セーラームーン』(※7)はステージ全体のストーリー性みたいなものが好きだったんです。
高木 背景の絵一つとっても、タキシード仮面が出てきていい感じで原作を表現しているのが好きだったし、何よりもパンチラもするし。
酒缶 なるほど。『ファイナルファイト』から続く硬派なタイプのベルトスクロールアクションよりも『セーラームーン』の方が『カグラ』にイメージが近いですね。カットインもあるし。
高木 元々僕は美少女モノ、というか、アニメモノは中学生ぐらいまで嫌いだったんですよ。「気持ち悪い」とか言って。でも確か高一か高二くらいのときに、偶然、ゲームセンターの隣にあったアニメイトで5人に増えている「セーラームーン」のグッズを見てしまって「可愛いな」と思って買ってから完全に転落しました。
酒缶 (笑)目覚めちゃいました?
高木 思春期特有の「僕はそんなんじゃない」と思っていたんですけど……アーケードゲームの『セーラームーン』はゲームの完成度が高かったんです。
酒缶 お仕事で『ネギま!?』(※8)や『To LOVEる』(※9)に関わっていた時には、アニメは大好きになっているんですよね?
高木 全然好きですよ。パンツ大好き(笑)。
酒缶 『To LOVEる』のミニゲームで女の子にミルクをかける(※10)のもアニメ好きの流れなんですか?
高木 やっぱり、「とにかく白いものをかけたいね」という……これ大丈夫ですかね?(笑)とにかく変なことをしたいと常に思っていて、なるべく理由が付けられるようにしていて、あくまでもいちごにミルクをかけていてそれが外れただけです。
酒缶 正直ボク、その高木さんが関わっているかどうか知らないでサイトの情報を見て「バカだな」と思っていました。褒め言葉として(笑)。なるほど。たくさん遊んでいた硬派なゲームとアニメ原作タイトルとの繋がりが気になっていたんですけど、今、完全につながりました。
高木 後、影響を受けたタイトルとして『龍虎の拳』(※11)などSNKさんのタイトルがあって……。
高木 当時のSNKさんのタイトルには荒々しさを感じたんですね。カプコンさんとかは面白いんですけど、丁寧に綺麗に作っている感じだったんです。でも、SNKさんは荒っぽい、勢いで殴り描いたみたいなパワーがあって、中学生くらいの僕には魅力的に見えて、そこからSNKのタイトルを好きになりました。
酒缶 じゃ、これはベルトスクロールじゃなくて、荒々しさというか、コンボがすごく効いちゃうぞ、というような構成が『カグラ』に影響を?
高木 じゃないですけど、『龍虎』はやっぱり、2本目のフィニッシュを必殺技で締めるとキング(※12)の服が破れるじゃないですか。
高木 「そうそうこれこれ、そのピンクのブラが見たいんです」みたいな。だから1日1回、『龍虎2』(※13)でユリ(※14)のブラを見ないと気が済まなくて、うっかり普通に倒しちゃった日には、「はぁ…」って。
酒缶 過去のベルトスクロールのゲームって、ストーリー性があってゴールすると終わり、ボスを倒すと終わり、というのが基本ですけど、『カグラ』はステージによってクリア条件が違ってバリエーションが豊富ですよね。どうしてこういう作りになったんですか?
高木 やっぱり昔のアーケードゲームの考え方と今のコンシューマの違い、パッケージゲームとしてはこういうスタイルがいいんだろうな、というところから作っています。今、「4,800円でステージが6つや7つしかないゲームを出したらウケますか?」と言われたら、「ボリュームないな」「遊び応えないな」と……。
酒缶 『勇者30』(※15)も1つのシステムをいかに幅広く遊ばせるか、という作りになっているので、高木さんの作るゲームの特徴なのかな?と思い、「パッケージとしていかにボリュームを出すか」ということと「開発側にいかに負担をかけないか」ということの2つの要素があるのではないかと思ったんです。
高木 そこの両立はありますね。すごく大きな予算を毎回取れるわけでもないのでなるべく工夫しています。
酒缶 ユーザーにしてみれば楽しめればいいわけで、お金をいっぱいかけたから面白いとは限りませんもんね。『カグラ』で一つ気になったところがあって、ベルトスクロールって縦方向に移動しにくいじゃないですか。たまに奥行きのあるマップがあって、ボクはちょっと遊びにくかったんですよ。
高木 あるかもしれないですね。
酒缶 『カグラ』の中で、手前や奥に移動する面で、奥に行くと手前が見えないとか横の方が見えないこともあり、色々とジレンマがあったんですけど、それは色々なバリエーションを出すにあたっての限界だったんですか?
高木 もうちょっと考えれば何かあったのかもしれないですけど、普通に作ってしまうとどのステージも同じサイズになってしまうんです。じゃあ、広いところを作ったとして、同じカメラを使ってしまうと奥に行ったときにメッチャ小さくなってしまって面白くなくなっちゃうんです。奥に行ったらズームをすると確かに手前が見えなくなってしまいますけど、やっぱりキャラを見たいということを優先した部分はありますよね。
酒缶 ま、ボクもあんまりゲームはうまくないんですけど、繰り返して遊んでいる内に、奥行きも慣れでどうにかなるのかな、と思ったり。
高木 そうですね。慣れもあります。厳密に位置取りするゲームではないから、だいぶ緩くしているので。
酒缶 空中コンボは、敵を倒しているのかモノを壊しているのかわからないくらい、全部を吹っ飛ばしている気持ちよさがありました。厳密に1人ずつしか倒せなかったら大変なことになりますよね。
高木 大変なことになりますし、地味になります。
酒缶 その辺りはかなり豪快ですよね。
高木 基本的に気軽に遊んで欲しいというのはあります。特にキャラクターだったり、美少女モノだったりするので、まぁ、そこは深く考えずにプルプルドカドカやってよ、という感じのゲームです(笑)。
酒缶 最後、厳しかったですね。ボクはキャラを合わせると100%にいっているけど、何キャラかクリアできてない面があって、やっぱり最後の敵5人を倒すのは厳しいですね。大道寺先輩を倒すのも相当厳しいですけど。
高木 そこはクリア後なのでいいかな、と。『勇者30』なんかも難易度を抑えているんですけど、最後に『勇者3』という3秒のゲームがあるんです。「最後の最後にどうよ!」って。クリア後はハードなヤツを入れたいと思ってます。笑っちゃうような、もう負け、みたいなモノを入れたいですね。