【第2回】須田剛一 ―（2）

2．「通りにくいモノを」というオーダー

酒缶　作品の中身についてお訊きします。「解放少女」の舞台の新日本国は現代の日本の100年後という設定ですけど、これは本当に今の日本から「こんな感じになるだろう」とイメージした100年後なんですか？

須田　もう完全に“if”ではあるんですけど。

酒缶　ボクの中で100年後というのはドラえもんが誕生する2112年なので、100年後はほんわかしたイメージだったんですけど、「解放少女」の描く100年後は恐いイメージなんですよね。

須田　かなり殺伐としています。「解放少女」は、今の若い人たちに向けて作るゲームなので、若い人たちが立ちあがるような設定が入口にあるようなものにしたかったのです。全世界の水位が上がっていて、今とは違う政局になっていて、アジア全体で戦争が起きているという“if”を元に、日本の政治の総理大臣制が大統領制に切り替わって、政治そのものも一回転覆して古い政治が1度ピリオドを打って新しい政治を生み出している、という設定をスタッフと一緒に起こしました。

酒缶　若い人に立ちあがってほしいことから、主人公が少女になったんですか？

須田　そうですね。

酒缶　大統領で少女という位置付けは、若い人たちが共感する対象という意味合いで……。　

須田　それも、ありますし、元々は第一代大統領の翼一郎が凶弾に倒れて、地盤を引き継ぐ、という、ある意味、政治の因習みたいなものを踏襲はしているんですけど、そこで新しい価値観が生まれてくることを表現したかったんです。

酒缶　3Dシューティングという、現在なかなか企画が通りにくいジャンルを選んだのは、チャレンジの意味合いもあったんですか？

須田　正に。「通りにくいモノを」というオーダーだったので（笑）、「これはシューティングしかない」と思って。横スクロールとか縦スクロールとかも考えたんですけど、元々ゲーム自体の骨格を空爆の爆撃ゲームにしたかったので、空爆をいかにゲーム化するかというところで、トップビューに近いモノを企画の最初から決めていました。

（C）2012 LEVEL-5 Inc. （C）2012 GRASSHOPPER MANUFACTURE INC.

須田　企画書を作る段階で日野さんと色々話をしていて、「『パンツァードラグーン』（※1）みたいな奥行きのあるシューティングだと普通すぎるので、今の時代、トップビュー気味のモノにしたいですよね」という話があり、そこから自機の解放機そのものが空爆が得意な戦闘機という位置付けになりました。

※1 『パンツァードラグーン』
1995年にセガ・エンタープライゼス（現・セガ）がセガサターン向けに発売した3Dシューティングゲーム。セガサターンの初期を代表するコンシューマオリジナルタイトル。ドラゴンに乗って空を飛ぶ浮遊感と、360度を見渡しながらロックオンして敵を倒していくシューティングの楽しさを同時に楽しむことができ、作り込まれた世界観も大変魅力的な作品。

酒缶　下画面のタッチスクリーンで操作しているのに、下画面を意識せずに上画面の立体視だけを意識してゲームを進められるプレイ感覚が気持ち良かったんですけど、このプレイ感覚は最初の段階からある程度想定されていたのでしょうか？

須田　下画面だけでゲームを作ると、タッチスクリーンを押したときに画面が隠れるので、それは避けたかったし、タッチペンだけで遊べるゲームにもしたかったんですけど、それも無理があるし、ボタンだけで何とかするゲームでもよかったんですけど……悩みましたね。

酒缶　開発の初期段階で試行錯誤があったんですか？

須田　いや、最初の設計は出来上がっていたんですよ。「この方針で行こう」と。ただ、「スライドパッドとタッチペン操作のポジショニングだと持ちづらくないか？」というところがあり、プロデューサーはボタンに対応してほしいと言っていました。

酒缶　御社は3DSの開発は今回が初めてですよね？

須田　初めてですね。

酒缶　作り始めの段階で3DSの機能をある程度見越していた部分はありますか？

須田　ありますね。ある程度、スペック周りはしっかりと教えていただいていました。

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