高度成長期の波〔昭和五十年代〕(1)
――豊かさよ永遠に――この時代は、一言でいうと、国全体が熱にうかされて、まっしぐらに走っていった時期のように思えてならない。わたしの場合も、洋菓子の製造に失敗したものの、ダメージはそれほどでなく店の売り上げも順調に推移していった。
家族が増え、実家に家を新築し、家族の生活を移すことになって店の管理が問題となった。その頃は、隣家と話し合いの上、上階も店と同様に間仕切りをして、三部屋をわたしたちの私室と従業員の宿舎にしていたのだ。そこで、五年ほど勤めている中年の主婦の家族を上階に住まわせ、同時に、店の管理をまかせることにした。