【第2回】八百留の話(3)
無論、女房殿に気づかれないよう、それは気をつかったものさ。家庭を壊しちゃ、なんにもならないし、それじゃ男の風上にもおけないからね。だから、時によっちゃ配達と同時におっぺして、二十分位でことをすませ、とんで帰ったようなこともあったね。
よくもったもんだ? まったくだ。つくづく思うね、今になってみると。まあ、若かったんだなあ。男冥利につきる? フッフフフ……太陽が黄色く見えるというが、本当か? まだ若い人が、年寄りにそんなこと聞いちゃいけないや。それに、あたしら忙しくって空なんぞ見上げたことないからねえ。