【第2回】八百留の話(2)
そんなわたしの思いを無視するように、そのうち老人は、こんな風に身の上を語り出したのでした。
――あたしの生まれは埼玉の農家でね。五男三女のドン尻。親がもう子供はいらないというので、名は留吉。家業が嫌いで東京にとび出して来たが、百姓の小倅になにが出来るかといってもアテがあるわけではない。分かっていることといえば、野菜とか、土から出来るものだけ。そんなわけで、初めは八百屋へ奉公したもんです。
100冊以上のマイナビ電子書籍が会員登録で試し読みできる
【第2回】八百留の話(2)