【第3回】その2-2 | マイナビブックス

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狸のムコ入り 上演台本

【第3回】その2-2

2016.02.24 | 鈴木雄太

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その2-2

 

お姉ちゃん  あ、おかえり~……って帰って来たぁ!

妹      なんでアタシにとって一番嫌なタイミングで帰ってくんのよバカオヤジ!

 

様々な緊張・動揺が流れる舞台上

 

お姉ちゃん  い、いいい、いい?みんなリラックス、リラックスよ!あとアンタ(←妹、なんか姉妹っぽい呼び方あればそっちの方がいい)、お父さんの機嫌、全体的にちょっとでも良くしていく感じでよろしく!

妹      あーもう、やること直前にアレコレ言われ過ぎ!

 

お父さん、現れる(部屋に直接ではなく?廊下?)

 

お父さん   あー、機嫌がスッゴイ悪くなるくらい疲れた。

妹      (部屋から出て)お、おっかえりー!どうだった?

お父さん   いやもう疲れたよ。機嫌がスッゴク悪くなるくらい疲れた。

妹      えーと、ア、アタシ、機嫌の悪いお父さんも好きだけど、機嫌の良いお父さんの方が……もっと好きだぞな。

お父さん   え?……ええ?(驚きと恥ずかしさとちょっと嬉しさと)

妹      なんだっけ?ケバブ?まだやるって言ってるの、あのお婆ちゃん。

お父さん   いや、結局ケバブはあきらめたらしい。

妹      そうなんだ、それがまあ正解だよね、うん。

お父さん   だけどケバブを諦めた理由、それが魚屋に挑戦したいからだっていうからまたビックリだ。

妹      へー、って魚屋!?

お父さん   「酒屋が魚屋はじめたら……ちょっと面白いですよねぇ」ってそりゃちょっと面白いか面白くないかで言えば……まあ、ちょっとは面白いけどさ。ダメだ。その考え方じゃまず間違いなく失敗する。

 

お父さん、部屋に入ってくる

 

婚約者・ニセモノ1・ニセモノ2 お義父さん、お帰りなさい!

お父さん   なな、なんなんだい君達は!とりあえず、ただいま。

お姉ちゃん  フ、フフフ~、ごめんね、お父さん。ビックリ……させちゃった?おおお、お父さん、落ち着いて。落ち着いて聞いてね。

お父さん   誰よりもまずお前が落ち着きなさい。

お姉ちゃん  い、いきなり本題に入っちゃってあれなんだけど、なんと私いまね、まさかの3人から同時にプロポーズされちゃってるの!

お父さん   3人から同時に!?

婚約者・ニセモノ1・ニセモノ2 お嬢さんと、結婚させて下さい!

お父さん   ……同時って、もしかして今みたいな意味で同時に言われたのか。

お姉ちゃん  あ、ああ別にそういう事ではないんだけどもえーっと……

妹      スゴイじゃんお姉ちゃん!さすがお父さんの血を受け継いでいるだけはあるね、ねえお父さん!

婚約者    (つぶやく)おだてた。

お父さん   ……ええ?何をお前さっきから……

妹      いやいやこのモテ具合はさ、お父さんのDNAのなせる業に他ならないでしょ!ねえ、お姉ちゃん!

婚約者    (つぶやく)さらにおだてた。

お父さん   良くわからない事ばっかり言ってお前はホントに……(万札を取り出し)これでなんか好きなもの買いなさい。

婚約者    おだてにのった!

ニセモノ2  ターイム!(絶叫)

全員     !

妹      こ、ここで!?……お、おおお、お父さぁーん!

 

妹、お父さんの目をキレのある動きでヤケクソ気味に塞ぎにかかる!

一気にワチャワチャし始める舞台上!

 

妹      お、おおお、お父さんのモテモテの理由は……一つにこの「瞼の触り心地の良さ」ってのがあると思うんだな私は!ハハハハハ!(なでまわす)フォー!最高!なで心地最高~!フォー!

お父さん   お前、いつの間に父さんの瞼のなで心地なんて体感してたんだ!

 

一方のタイムをかけた婚約者軍団!

 

お姉ちゃん  どしたの!?

ニセモノ2  いや、ホントにビックリするくらいおだてにのりやすいからさ!なんか思わず……ね!

全員     ……。

婚約者    それだけですか!

ニセモノ1  いや、でもB作もたしかにビックリはしたビックリはした。

お姉ちゃん  ビックリ報告会の為にわざわざタイム取らなくていいから!バカ!?タイム取るのだって楽じゃないのよ!見てよ、ウチの妹の命懸けの姿を!

 

お父さんを命懸けで抑える妹!……と、いつの間にか現れているお母さん

 

妹      やっべくそ、耳まで手がまわらね!(足でやろうとかする?)

 

お母さん、お父さんの耳を塞ぐ

 

お父さん   あ、あれ?なんも聞こえない……ちょっと待て!瞼の触り心地の件はわかったけど、だからってなんで耳まで抑えつけるんだ!

妹      あれ、奇跡!?……奇跡がおきてる!

 

お母さん、ついでに鼻も塞ぐ

一方、婚約者軍団!

 

ニセモノ1  タイムの数は限りを設けた方がいいかもわからないな。

婚約者    何回もアレ(妹の塞ぎ方)が通用するとは思えませんしね。

ニセモノ2  次から気をつけます。

お姉ちゃん  ダメもう。一人一回!

ニセモノ2  ええ!僕もう今のでお終い!?

お姉ちゃん  無駄使い禁止!……(こわく)アタシここに人生かかってるんで、ホントちゃんとやって下さい。

ニセモノ2  ……すみません。

婚約者    イ、イライラするのわかるけどさ、せっかく手伝ってくれてるんだからそこ……

お姉ちゃん  (イライラして)だれイライラしてんの!?アタシ!?

婚約者    いや、どなたもしていないです。

お姉ちゃん  ……ったくもー。バカしかいねーな、男って。はいじゃあ再開するよ。じゃ、改めてヨロシク願いします!

 

お姉ちゃん、妹に合図!

急ぎ改めてスタンバイし直す婚約者軍団

妹、外す

お母さんのお茶目に外し、程よきトコで帰る

 

お父さん   あ、もういいのか。

妹      え、うん。もうお腹いっぱい。

お父さん   今度からはいきなりやらずに許可取ってからやりなさい。よっぽどの事じゃない限りは遠慮なく触らせてあげるから。

妹      う、うん。肝に銘じる。でももう大丈夫、多分一生分触ったから。

お父さん   で、なんなんだっけ、この3人は。今の衝撃でほとんど何も覚えていない。

お姉ちゃん  (まだイライラして)あー、だから私ね、今この3人から同時にプロポーズされててスッゴイ困ってるの。めんどくさいからもう、お父さん選んでくれない?

お父さん   めんどくさいから!?

ニセモノ2  明らかにイライラを引きずっている!

お姉ちゃん  あぁ、アタシもれなくその人と結婚するわ。

お父さん   そんな決め方でいいのかお前ホントに!?

婚約者    ターイム!(絶叫)

妹      またかよ!お、おおお、お父さぁーん!

 

妹、再びお父さんの目を塞ぐ!(やり方は大体さっきと同じ)

お母さんも良きタイミングで出てきて良きタイミングでまた耳と鼻を塞ぐ

 

妹      最高!やっぱりお父さんの瞼の味、最高!全~然、全~然さわりたりなかった!ハハハハハ!

お父さん   だからお前、許可取ってからにしろって……だからなぜ耳も覆う!

妹      再び奇跡きたー!

ニセモノ2  無駄撃ちはやめようって話したバッカリじゃないか!

婚約者    ごめんなさい。でもあの説明はダメだって。イライラしてたのはわかるけど、いくらなんでもヤル気がなさすぎる!

お姉ちゃん  すみません。

婚約者    あんな言い方だったら「じゃあそもそも全員ふりなさい」って、僕が父親でも娘にそういうよ。僕が娘でも父親にそう言われたいよ。

お姉ちゃん  ……ごめんなさい。

婚約者    ……頼むよ、本当に頼むよ。僕がゴミクズなんだからさ、せめて君がシッカリしてくれよ!そうじゃないとこれから先、結婚して家庭なんて築けるわけないだろ!

お姉ちゃん  ……うん、そだね。

ニセモノ2  どういう絆なんですかね、このカップル。

ニセモノ1  しかし参った事になったね。これで残るタイムはB作のあと一回のみだ。

お姉ちゃん  そうですね。こうなったら「最後の一回もう使わなくていいぜ」、ってくらいの気合いで行きましょ。

ニセモノ1  任せてくれ。使いどころ、間違わないようにだけは気をつけるよ。

 

お姉ちゃんと婚約者軍団、力強く頷き、そしてお姉ちゃんが妹にサイン!

妹、外す!

お母さんも外す(お母さんの一連の悪ふざけ度は1回目より上がってる)

 

妹      オヤジ!最高だったぜ瞼!オヤジ!サンキューな!

お父さん   あ、いや、どういたしまして。なんか荒々しくなってるな。

お姉ちゃん  お父さん、さっきは私どうかしてた!ちゃんと話すから改めて聞いて!私……

ニセモノ1  ターイム!(絶叫)

妹      お父さぁん!瞼ァ!

 

妹、半ば気が狂ったかのようにお父さんの目を塞ぐ

お母さん、油断してハケ切る前だったところをUターンして耳、鼻を塞ぐ!

 

妹      瞼ぁ!あぁ!瞼ぁ!

お父さん   ……。(もうなされるがまま)

お姉ちゃん  どうしたんですか今度は!

ニセモノ1  いやまあ、これがコメディのセオリーかなと。

婚約者    よくわからないセオリーで行動するのヤメて下さい!

ニセモノ1  わからないのか!?コメディがわからないのか!?

お姉ちゃん  これでせっかく作ったタイム制度、たれ流しのように使いきってしまったわけね。

ニセモノ1  たれ流し。

お姉ちゃん  タイム作戦、終了です。

ニセモノ1  ほぼまるで機能しなかったな。

婚約者    最後機能させなかったの誰ですか!

ニセモノ2  こうなったら増やしちゃいます?1人1回っていうのも自分達で決めたルールなんだし。

婚約者    いや、誰が決めようがルールはルールです。守りましょう。

お姉ちゃん  彼こういう人なんです。歩いてる時に信号破ったのだって数回なんだよね。

婚約者    そうですね。小3小4中2高1……あと去年で計5回です。

ニセモノ2  なぜ去年やっちゃったのかが気になるな!

ニセモノ1  じゃあとにかくタイムはもうなしで。本当にそれでいいのかな。

お姉ちゃん  仕方がないです。

ニセモノ1  いいならいいけど、それであとでB作のせいみたいにするのだけは絶対にやめろよ。

ニセモノ2  命令形!?

お姉ちゃん  じゃあ、がんばっていきましょう。

婚約者    ……あ、そうだ、ねえ!(お母さんを指し)さっきからお父さんの耳とあと鼻もチョイチョイ塞いでるのってあれって……

お姉ちゃん  ……?耳?鼻?(見えてない)

婚約者    ……なんでもない。よし、やろう。

 

お姉ちゃん、力強く妹にサイン

妹、外す

お母さんも外す

 

妹      (ヘロヘロ)お父さんありがとうそして本当にゴメンなさいでした!

お姉ちゃん  それでね、お父さん……

お父さん   ……もういよ。

お姉ちゃん  え?

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